月刊競輪WEB

検索
編集部コラム KEIRIN ON MY MIND
特集 2024.06.12

編集部コラム KEIRIN ON MY MIND

昼過ぎに競輪場のラーメン店に到着。場外発売だけど日曜日だからか、なぜか席が一杯で、うーん、どうしようか。

スタンドでゆっくりしようと思って向かったら、途中の通路にカラフルなカーボンの自転車がズラッと並んでいる。スタンドに上がると、サイクルジャージ姿の若い子たちがたくさんいて、バンクに向かって大声を出していた。近くの子に「何してるの?」と聞いたら、「インターハイの予選です」と礼儀正しい返事。4コーナーあたりには参加選手たちが陣どって、走っている同じ学校の選手たちを応援しているし、ホームあたりにはたぶん家族が何十人も見てる。競輪選手に比べたら、彼らは線は細いけど、何しろ一生懸命さがいいね。仲間に声援を送っているのも好ましい。

しばらく観戦して、心を洗ってから、昼休憩のラーメン店に顔を出した。店主のマサさんが座って、見知らぬおじさんと話している。ちょっと間隔をあけて座ると、マサさんがこっちに手を挙げた。奈良と函館のGⅢを検討しながら、耳はダンボに。同席している人は高校の自転車部の関係者。マサさんと高校は別だったけど、自転車部のライバルだったみたい。同じ高校の嫌な先輩を勝たせないように、他校も巻き込んで、内に閉じ込めた話や、仲間の消息で盛り上がっている。

その人が店を出たあと、昔の自転車部と今は何が違うの?マサさんに聞いてみた。「自転車や道具が当時とはまったく違う」。「カーボンの自転車なんて、金持ちしか持ってなかった」。「同じディスクホイールでも、昔はゴーッと大きな音がしたけど、今は静か」。競輪選手の練習を見てもわかる通り、自転車の練習はつらい以外の言葉が見当たらない。汗まみれになって、悔しさや感動で涙を流したんだろう。マサさんにも35年前は青春と呼べる時代があったんだね。

しばし感慨に耽っているマサさん。ここで競輪の話はしづらいなあと思ったけど、今日はこれが言いたくてやってきた。スマホを取り出して、画面をマサさんの顔に近づける。豊橋ミッドナイト競輪の9R決勝。溝口葵が2番車で、長谷川飛向が1番車。前回、5月29日からの弥彦ミッドナイト競輪でも決勝でぶつかった二人。そのときは残り2周で前受けの長谷川を溝口が抑え、そのまま先行態勢に入った溝口が逃げ切ってしまった。長谷川は6番手から巻き返せず7着と大敗している。

溝口は三重の先行選手で117期31歳。社会人を経験して輪界入り。デビュー後、丸2年かけて2022年にA級昇格。昨年7月の別府で初優勝したが、初日の特選シード選手に定着したのは今年に入ってから。でも弥彦ではとにかく強かった。

そして豊橋の決勝。またも前受けした長谷川が抑えてきた溝口をいったん突っ張る。その後は大雨の中、先手が交互に入れ替わる力勝負が展開されて、最後は長谷川の番手にはまった溝口がまくって圧勝し、長谷川は逃げ粘れず3着。

KEIRIN.JPで弥彦と豊橋のこの2レースをご覧いただきたい。この口から言うのは気恥ずかしいけど、そこには確かにドラマがあった。

この記事をシェア

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE

related articles