第66回朝日新聞社杯競輪祭が競輪発祥の地・小倉競輪場で開催される。ガールズケイリンのGI・第2回競輪祭女子王座戦との同時開催で6日制のナイターで実施される。10月の寬仁親王牌で連覇を達成した古性優作が今回も中心になりそうだが、獲得賞金でのグランプリ出場のボーダーラインにいる選手たちが賞金の上乗せを狙って激しい叩き合いを演じることが予想されるだけに、その間隙を突いてのあっと驚くニューヒーローの誕生も十分に期待できる。
古性優作が超絶技巧で初優勝を狙う
KEIRINグランプリ2024の出場権をかけた今年最後のGI戦がいよいよ幕を上げる。10月の寬仁親王牌終了時点で出場権を獲得しているのは郡司浩平、平原康多、北井佑季、古性優作の4人で、残り5人は競輪祭の優勝者と競輪祭終了時点での獲得賞金ランキングの上位者から選ばれる。寬仁親王牌終了時点での獲得賞金ランキングでは7位に脇本雄太、8位に新山響平、9位に岩本俊介、10位に深谷知広と続いているが、競輪祭の優勝賞金は準優勝で2千3百万円、3位で1千4百万円なので結果次第では大逆転も十分で、今年の優勝争いも例年どおりに熾烈なものとなるだろう。
古性優作は寬仁親王牌で連覇を達成するとともに8月のオールスターに続いてのGI連覇も達成している。寬仁親王牌の決勝では古性は寺崎浩平-脇本雄太の近畿ラインの3番手だったが、新山響平や郡司浩平の反撃で近畿ラインが窮地に陥ると単騎捲りとなった郡司の番手に素早く切り替え、さらには郡司が佐々木悠葵をブロックすると古性は空いたインに突っ込んで先頭に立ち、そのまま後続を振り切ってゴールインとさすがの超絶技巧を披露しており、今回もオールラウンダーぶりを発揮して競輪祭初優勝を狙う。
脇本雄太は寬仁親王牌の決勝では改めて番手戦の難しさを思い知らされる結果となったが、2日目ローズカップではやはり前を任せた寺崎浩平が行けずと見ると自力に転じて1着でゴールインし、上がりタイムも11 秒0と調子は上々のようだった。準決も北井佑季-郡司浩平の南関東コンビを8番手から捲りきっている。獲得賞金ランキングでは7位とボーダーラインにおり、古性優作と同様に競輪祭での優勝はまだないが、小倉の高速バンクで自慢のスピードを遺憾なく発揮して初優勝を目指してくる。
新山響平は寬仁親王牌決勝では8着に終わったが、車番が悪く慣れない後攻めになってしまったのが一番の敗因だろう。赤板前から近畿ラインを叩きにいくも寺崎浩平に突っ張られ、なにか打開策をと思案しているうちにレースはどんどん進んでしまい、結局はずるずると後退してしまった。それでも新山はトッププレイヤーだけに寬仁親王牌の失敗を糧にさらなる飛躍が必ずや期待できるはずで、獲得賞金ランキングではボーダーラインにいるが、自分の信じる道を貫いて今回も勝ち上がってくるだろう。
郡司浩平がしぶとい走りでパワーアップ
郡司浩平は10月の寬仁親王牌決勝は5着に終わったが、近畿ラインの好きにはさせないとばかりに最終ホーム手前から仕掛けて捲り切った走りは素晴らしかった。初日の特別選抜予選も前がもつれて松井宏佑との連結が外れたが、最後は4番手から直線鋭く伸びて2着としぶとい走りを見せている。近況は南関東の番手戦が多く目標と共倒れの淡白なレースも少なくなかったが、寬仁親王牌では脚力だけでなく精神面も一段パワーアップしている印象で、今回も南関東のエースとして最後まであきらめない走りを見せてくれるだろう。
昨年の競輪祭決勝で番手絶好の展開になりながらゴール前で眞杉匠に交わされて2着と悔し涙を飲んだのが松井宏佑だ。今年も2月の全日本選抜では郡司浩平を、6月の高松宮記念杯では北井佑季を引っ張って勝ち上がりに貢献しており、8月のオールスターでは自身も優出と好調だ。寬仁親王牌では準決で敗れたが捲りで2勝しており、二次予選Bでは上がりタイムが10秒9とスピードも申し分ない。もちろん今回も南関東の先導役としての活躍が期待されるが、密かに昨年のリベンジを狙っているのもまちがいないだろう。
眞杉匠は今年は9月の共同通信社杯の優勝はあるもののGIの優勝はまだないが、獲得賞金ランキングは5位でグランプリ出場はほぼ安全圏といっていいが、もちろん狙うは競輪祭を連覇してのグランプリ出場だ。寬仁親王牌では準決で7着と敗れたが、同期の松井宏佑との対決で闘争本能に火がついたのか、雨の中松井とまともに先行争いを演じた結果だ。初日理事長杯は菊池岳仁の逃げを目標に1着、2日目ローズカップは捲りで2着、4日目特別優秀も捲りで1着と引き続き好調で、関東のエースとして今回も昨年同様の強い走りを見せてくれるだろう。
準決敗退の眞杉匠の代わりに関東のファンを大いに沸かせたのが佐々木悠葵だ。準決は眞杉の番手だったが、眞杉が先行争いで力尽きると番手から抜け出して1着でゴールインしGI初優出を決めた。決勝も相手が強すぎるために展開待ちにならざるを得なかったが、一瞬のチャンスを逃さずに郡司浩平や古性優作に迫った捲りは鋭かった。もちろんGIは甘くはないので佐々木が今回も活躍できる保証はないが、佐々木の走りに刺激された若手たちがトップクラスの選手たちを苦しめて大会を盛り上げてくれるのを期待したい。
清水裕友が年末に向けて完全復活を目指す
清水裕友は後半戦に入ってから失速、8月のオールスターでは一次予選2で失格して途中欠場、9月の共同通信社杯では二次予選Aで9着と敗れ3日目特選で落車して途中欠場、10月の寬仁親王牌では準決で7着と敗れている。それでも初日理事長杯では眞杉匠を追って清水が2着、松浦悠士が3着、4日目特別優秀では北井佑季相手に打鐘からカマして主導権を奪い松浦悠士が1着、清水が3着と復調気配だ。前半の貯金があるので賞金でのグランプリ出場はほぼ大丈夫そうで、今回は年末に向けての完全復活を目指す。
太田海也はパリオリンピックでは結果を残せなかったが、10月の世界選手権の男子スプリントで日本勢では35年ぶりの銅メダルを獲得、チームスプリントでも銅メダルを獲得している。自転車競技とは使用する自転車が違うので競輪で実力を発揮するのは難しいところもあるが、今年はオールスターと共同通信社杯で準決進出とまずまずの成績を挙げている。昨年の競輪祭では決勝は4着だったが、準決は堂々の逃げ切りで松浦悠士とワンツーを決めており、今回も小倉の高速バンクで世界レベルのスピードを見せつける。
山崎賢人はパリオリンピックはリザーブとなり本大会には出場できなかったが、10月の世界選手権の男子ケイリンで日本勢としては37年ぶりの快挙となる金メダルを獲得した。ただ競輪に関してはやや物足りない成績が続いているのも事実だ。7月のサマーナイトフェスティバルは準決敗退、オールスターは一次予選敗退、共同通信社杯は捲りの2着で準決を突破しているが決勝は郡司浩平に叩かれて後退し9着に終わっており、競輪でも本来の実力を出し切っての金メダルをぜひとも期待したい。
年に1度、地元の競輪祭でひときわ輝きを放つのが北津留翼だ。デビュー4年目の2009年の競輪祭で2度目のGI優出を達成、2017年の大会では決勝2着と大健闘、2021年の大会では決勝8着、そして昨年の大会では新山響平、太田海也、北井佑季らの強豪ぞろいの準決を3着で突破して決勝5着だった。今年は高松宮記念杯の準決では失格と残念な結果に終わったが、共同通信社杯の準決では太田海也の逃げを8番手から猛然と捲って2着で突破と例年になく好調で、今回も地元ファンの期待に応える走りを見せてくれるだろう。
プレイバック 2020年 第62回大会 郡司浩平
松井宏佑の逃げに乗って郡司浩平がGI初優勝
単騎の新田祐大が前受け、2番手に鈴木庸之-平原康多-諸橋愛の関東ライン、5番手に古性優作-稲川翔の大阪コンビ、7番手に松井宏佑-郡司浩平-和田健太郎の南関東ラインの並びで周回を重ねる。残り3周の青板過ぎから7番手の松井が前との車間を空けはじめると、2番手の鈴木も後ろの動きを確認しながら先頭の新田との車間を空けて仕掛けのタイミングを計っていくが、鈴木が後ろを振り返っている隙を突いて5番手の古性が先に仕掛け、赤板の1コーナーで新田を押さえて先頭に立つ。そこを松井が一気に叩いて先行態勢に入り、松井-郡司が出切ったところで打鐘を迎える。南関東3番手の和田は踏み遅れ、それを古性が捌いて郡司の後ろを取る。すかさず鈴木が反撃を開始して3番手の古性の横まで迫るが、郡司が最終2コーナーから番手捲りを打ち、鈴木を捌いた古性が郡司を追う。しかし、鈴木不発で自力に転じた平原があっさりと古性を抜いて最後の直線では郡司と平原のマッチレースとなるが、最後まで粘りきった郡司がGI初優勝、2分の1車輪差で平原が2着、3着に稲川が入る