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第33回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントGI展望
レース展望 2024.10.01

第33回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントGI展望

#グレードレース展望

 第33回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントが昨年に続いて弥彦競輪場で開催される。9月の共同通信社杯競輪では眞杉匠が見事に地元優勝を飾ったが、今回も関東地区での開催だけに眞杉率いる関東勢が中心になりそうだ。もちろん準優勝に終わった古性優作も優勝候補の一角で、優勝に手が届かなかった郡司浩平率いる南関東勢の巻き返しにも期待したい。ビッグレースの決勝で久しぶりに3人のラインを組むことができた九州勢の活躍も楽しみだ。

眞杉匠が地元地区のGIで再び勝利を掴む

 開催初日のメインとなる日本競輪選手会理事長杯では5着までに入った5名が2日目のローズカップと3日目の準決へ無条件で進出できる。主役を務めるのは眞杉匠で5月の全日本プロ選手権自転車大会(全プロ)の1キロタイムトライアルで優勝して出場権を獲得した菊池岳仁と連係できるのも有利だ。清水裕友と松浦悠士の中国コンビも近況はやや元気がないが全プロのスプリントで優勝した河端朋之と連係すればライン的には強力で、全プロのケイリンで優勝した山口拳矢と脇本雄太の一発もやはり侮れない。
 眞杉匠は9月の共同通信社杯で地元優勝を飾り、獲得賞金ランキングも6位に浮上して年末のグランプリ出場に大きく近づいた。もちろんそれで満足するわけはなく、今回も地元地区での開催だけに全力で優勝を取りにくる。共同通信社杯の決勝は昨年の競輪祭のときと同様の強烈な捲り追い込みでの優勝だったが、注目すべきは準決の走りだろう。地元の500バンクの準決で逃げを打った勇気とまんまと逃げ切ってしまう脚力には賞賛の言葉しかなく、今回も弥彦も直線の長いバンクだけに最高の走りを見せてくれるだろう。
 清水裕友は共同通信社杯の一次予選では捲りで1着だったが、二次予選Aで9着に敗れ、3日目特選で落車して全治35日と診断された。一方の松浦悠士も二次予選Bで8着と敗れ、獲得賞金ランキングは20位とS級S班陥落の危機に瀕している。それでも二次予選Bでは思い切って先行しており、3日目選抜では久田裕也の逃げを目標に1着と脚力的には問題はなさそうだ。今回は河端朋之という好目標がいるだけにうまく歯車が噛み合えばローズカップへの進出が期待できるし、決勝進出を目指して気合いを入れ直してくるだろう。
 山口拳矢は全プロのケイリンで連覇を達成して理事長杯の出場権を獲得した。だが競輪では物足りない成績が続いていて獲得賞金ランキングも26位にとどまっており、共同通信社杯も二次予選Aで6着と敗れている。それでも一次予選は最終バック9番手から仕掛けて1着と圧巻の捲りを披露している。4日目特選も最終バック7番手から大外を捲り追い込んで1着と調子は決して悪くない。戦法的には後方からの捲り返しが多いため勝敗は展開に左右されやすいが、今回もうまくハマれば一発が期待できる。
 脇本雄太は共同通信社杯の一次予選ではいつもどおりの7番手となったが、最終ホームから巻き返して1着、上がりタイムも13秒7と強い走りを見せた。しかし、二次予選Aでは思うところがあったのか寺崎浩平の前回りを選択するも、展開が大きくもつれる激戦となり脇本はインに詰まったまま7着に敗れている。3日目特選は逃げて2着だが、4日目特別優秀は9着と腰痛を抱えているために成績が安定しないのが現状だ。それでも直線の長い弥彦は脇本向きだし、イン詰まりさえ気をつければ圧巻の捲りを期待できるだろう。
 深谷知広は残念ながら共同通信社杯連覇はならず獲得賞金ランキングも12位と厳しい位置なので、今回こそは優勝を目指してくる。決勝は郡司浩平を目標のレースで北津留翼が捲ってきたときに切り替えるかどうかで迷ったのが結果的には敗因となったと言っていいだろう。それでも二次予選Aは北井佑季の逃げに乗って2着、準決は目標の松井宏佑が太田海也に叩かれたが3番手から鋭く追い込んで1着と調子はいい。今回も機動力豊富な南関東の仲間たちとタッグを組んで勝ち上がっていく。

眞杉匠 栃木 113期
松浦悠士 広島 98期
山口拳矢 岐阜 117期
脇本雄太 福井 94期
深谷知広 静岡 96期

 
古性優作がファンのためにも1着突破を狙う

 開催初日の特別選抜予選2個レースでは各レースで2着までに入った4名が無条件で2日目のローズカップと3日目の準決へ進出できる。今年の特別選抜予選は郡司浩平、北井佑季、松井宏佑、新山響平、寺崎浩平など今が旬の先行型が勢揃いで激戦必死だ。追い込み勢もベテランの平原康多と荒井崇博に守澤太志と揃っており、輪界最強のオールラウンダー・古性優作が別線をいかに捌いて勝利を狙っていくかに注目したい。
 古性優作は9月の共同通信社杯ではまさかの4日間オール2着に終わった。決勝ではいつもどおりの巧みな捌きで好位置を奪取し、先捲りの北津留翼を追っていったときに誰もが「これで勝負あった」と思ったはずだが、やはり調子がいまひとつだったのかゴール前で古性を追ってきた眞杉匠に交わされての2着だった。昨年の寬仁親王牌では完全優勝を達成した弥彦バンクと相性がいいだけに、今回こそは共同通信社杯で迷惑をかけてしまったファンのためにもしっかりと立て直しを図ってくるだろう。
 郡司浩平は共同通信社杯の決勝では深谷知広を連れて積極的に逃げるも結果が伴わなかった。勝ち上がりも一次予選が3着、二次予選Aが5着とぎりぎりの着順だったが、準決では目標の北井佑季が7番手の最悪の展開になりながらも、そこから中コースを鋭く伸び、古性優作をも抜き去って1着でゴールインしている。上がりタイムもバンクレコードにコンマ1秒まで迫る13秒2で調子のよさを伺わせた。今回も南関東のエースとして北井佑季や松井宏佑らの頼もしい仲間たちとともに勝ち上がっていくだろう。
 新山響平は共同通信社杯ではまさかの一次予選敗退となったが、2日目特一般は逃げ切り、3日目選抜は捲りの2着で渡部幸訓とワンツー、4日目特選は逃げて2着で佐藤慎太郎とワンツーと調子自体は問題なさそうだ。今年は全日本選抜、高松宮記念杯、オールスターで優出と安定した成績を維持しており、やや失速気味の北日本勢の中にあって孤軍奮闘の頑張りを見せている。獲得賞金ランキングでは9位とグランプリの当落線上にいるが、もちろん今回も結果はあとでついてくるとばかりに自分のスタイルを貫いてくる。
 荒井崇博は共同通信社杯の一次予選では眞杉匠と連係するも番手を死守できずに4着だったが、二次予選Bは山崎賢人の逃げに乗って2着、準決は8番手からの北津留翼のハイスピード捲りに食らいついての3着で、山崎賢人、北津留翼とともに優出してベテラン健在を示した。8月のオールスターでも準決で6着と敗れたが、一次予選1、2と二次予選は3連勝で勝ち上がっている。今回の特別選抜予選では九州勢は山田庸平と2人だけでライン的には厳しいが、ベテランの技で難関を突破してくるだろう。

古性優作 大阪 100期
郡司浩平 神奈川 99期
新山響平 青森 107期
荒井崇博 長崎 82期

窓場千加頼がグランプリ初出場を目指す

 窓場千加頼は9月の共同通信社杯の二次予選Bで4番手からの追い込みで1着となり南修二とワンツーを決めているが、準決は単騎戦を選択するも仕掛けきれずに6着に敗れており、準優勝だった8月のオールスターと比べると物足りない成績に終わった。それでも獲得賞金ランキングでは10位と圏内に位置しており、グランプリ初出場を目指して好走してくれるだろう。9月の京都向日町記念決勝では残念ながら地元優勝はならなかったが、別線となった脇本雄太との捲り合戦で2着と自慢のスピードは健在だ。
 獲得賞金ランキングで9位の新山響平、10位の窓場千加頼と熾烈な争いを演じているのが11位の吉田拓矢だ。3人揃って6千万円台でその差はわずかだ。吉田は共同通信社杯の準決では6番手から仕掛けきれずに5着と敗れたが、一次予選は目標の菊池岳仁が不発となるも6番手から自ら捲り追い込んで2着、二次予選Aは脇本雄太、北井佑季、清水裕友らの強豪ぞろいの組み合わせでやはり目標の眞杉匠が不発となったが、最後の直線で中コースを伸びて1着と好調で、今回も位置取りの上手さと鋭いタテ脚で勝利を掴んでくる。
 犬伏湧也は共同通信社杯では準決で8着と敗れたが、一次予選は5番手から捲っての2着で佐々木豪と四国ワンツー、二次予選Aは先行態勢に入った郡司浩平を早めに叩いて2着と一時期の低迷を脱して犬伏らしい豪快なパワーが戻ってきている。4日目特選も結果は4着だったが主導権を取った小原佑太の3番手にハマりながら早めに叩いて捲って出ており積極性も十分だ。昨年の寬仁親王牌では準決を3着で突破して優出と弥彦バンクとの相性もよく、今年初のGI優出を目指して奮闘してくるだろう。

窓場千加頼 京都 100期
吉田拓矢 茨城 107期
犬伏湧也 徳島 119期

プレイバック
第28回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント
村上博幸が5年ぶり3度目のGI制覇

 小松崎大地-和田健太郎の北日本と南関東のコンビが前受け、3番手に三谷竜生と村上博幸の近畿コンビ、単騎の木暮安由が続き、6番手に清水裕友-中川誠一郎-園田匠の中国と九州のトリオ、最後尾に単騎の浅井康太の並びで周回を重ねる。青板周回の1センターから清水がゆっくり上昇、バックで小松崎を押さえて先頭に立つが、小松崎は引かずに番手で粘る。清水の後ろは外に中川-園田、内に小松崎-和田で並走になり、その後ろに浅井と木暮が続き、三谷は8番手まで引く。後ろが並走なのを確認した清水は赤板通過後にいったんペースを落とすが、それを見た近畿コンビが一気にカマしていったところで打鐘となる。打鐘の3コーナーで三谷はあっさり清水を交わして主導権を奪う。3番手になった清水は懸命に近畿コンビを追うが、清水の後ろは小松崎-和田となり、競り負けた中川と園田の九州の2人は後退していく。そのままの態勢で最終ホームを通過し、6番手となった浅井が捲りを打ち木暮も続くが車が思うように出ない。三谷のかかりがよく、番手絶好となった村上がゴール前で交わして優勝、三谷が2着に粘り、清水は3着。

バンクの特徴
直線が長くタテ脚切れる追い込み選手が有利

 周長は400m、最大カントは32度24分17秒、見なし直線距離は63.1m。直線が長いので追い込みが断然有利だ。逃げはもちろんジャストタイミングで仕掛けたはずの捲りも交わされるケースが少なくない。
 さらに特徴的なのがゴール前での中割り強襲がよく決まることだ。昨年10月に開催された寬仁親王牌では2日目はあいにくの雨模様だったが、9Rの二次予選Aでは逃げた中野慎詞と渡部幸訓のあいだを和田健太郎が4番手から強襲して1着、11Rの二次予選Aでは外を追い込んだ山口拳矢が1着だったが地元の諸橋愛が逃げた新山響平と雨谷一樹のあいだを3番手から追い込んで2着、12Rのローズカッブでは逃げた眞杉匠と平原康多のあいだを3番手から追い込んだ古性優作が1着だ。直線の長い弥彦バンクでは先手ラインがゴール前で外に膨らんで横広がりの入線になりやすく、ぼっかり空いた中コースを伸びてきた選手が1着を取るケースが多い。
 ちなみに連日鋭いタテ脚を披露した古性優作と和田健太郎の2人はともに3連勝で決勝に勝ち上がり、決勝では和田は残念ながら落車に終わったが、古性は完全優勝を達成している。
 昨年の大会の1着、2着の決まり手を見てみると、全48レースのうち1着は逃げが3回、捲りが18回、差しが27回、2着は逃げが4回、捲りが8回、差しが15回、マークが21回となっている。やはり逃げは苦しく、先手ラインの選手が1着を取った回数も14回しかない。太田海也、取鳥雄吾、中野慎詞の3人が逃げ切っているが、勝ち上がり戦で逃げ切れたのは一次予選の太田だけである。
 捲りは力があれば7、8番手からでも逆転は可能だが、直線が長いのでバック過ぎからの遅めのまくり追い込みのほうがいい。バック過ぎからの仕掛けならばスピードを保ったままゴールまで突き抜けることができる。
 昨年のベストタイムは11秒0で4回出ているが、10秒台のタイムはなかった。バンクはやや重く、裏手にそびえ立ち弥彦山から吹き下ろす風の影響を受けやすい。

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