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第65回朝日新聞社杯競輪祭展望
レース展望 2023.11.08

第65回朝日新聞社杯競輪祭展望

#グレードレース展望

 第65回朝日新聞社杯競輪祭が競輪発祥の地・小倉競輪場で開催される。ガールズケイリンの新設GIである競輪祭女子王座戦との同時開催で6日制のナイターで実施される。10月の寬仁親王牌で年間GⅠのV3の快挙を成し遂げた古性優作が断然の中心となるが、寬仁親王牌で優出したS級S班は古性優作と佐藤慎太郎の2人のみと相変わらず上位陣の不振が続いており、ニューヒーローの誕生も十分だ。

古性優作が前人未到の年間GIのV4を目指す

 KEIRINグランプリ2023の出場権をかけた今年最後のGI戦がいよいよ幕を開ける。今年GI戦を優勝してすでに出場権を獲得しているのは古性優作、山口拳矢、眞杉匠の3名だけで、残り6名は競輪祭優勝者と獲得賞金上位者から選ばれる。昨年は新山響平がGI初優勝とグランプリ初出場を決め、獲得賞金ランキングで10位となった清水裕友がS級S班から陥落した。今年も11月4日時点でのランキングでは9位の新山響平、10位の新田祐大、12位の郡司浩平、13位の守澤太志、26位の平原康多が陥落の危機に瀕しており、かつてない激しい賞金争いが繰り広げられるだろう。


 古性優作は10月の寬仁親王牌を完全優勝で飾り、2月の全日本選抜、6月の高松宮記念杯に続いて年間GIのV3の快挙を成し遂げた。年間GI3勝は1997年の神山雄一郎以来の26年ぶりであり、獲得賞金も2億円を突破している。もちろんそれで満足しているわけがなく、さらなる高みを目指す古性は前人未到の年間GIのV4を狙って今回も最強の走りを見せてくれるだろう。競輪祭を制すればグランプリを含めた完全グランドスラムに王手となるだけに、全国のファンも古性の一挙一動を固唾を飲んで見守ることになるだろう。


 新山響平は昨年の競輪祭は新田祐大の逃げに乗っての番手捲りでGI初優勝を達成しているが、準決は逃げ粘りの2着と本来の自分の走りで突破している。一昨年の決勝も逃げて準優勝と小倉バンクとの相性は抜群だ。寬仁親王牌は準決で惜しくも4着と敗れたが、特別選抜予選、二次予選A、準決と3日間徹底先行を貫いて小松崎大地と佐藤慎太郎に地元の諸橋愛の勝ち上がりに貢献している。獲得賞金ランキングでは9位とグランプリ出場の当落線上にいるが、今回も結果はあとでついてくるとばかりに先行一本で挑んでくる。


 佐藤慎太郎は今年5月の日本選手権で決勝3着、6月の高松宮記念杯で決勝2着、寬仁親王牌決勝も2着と、ベテランらしいさすがの走りで好成績を挙げている。獲得賞金ランキングも3位で5年連続9回目のグランプリ出場はほぼ確定だ。しかし、昨年のグランプリは北日本勢が4名いたが、今年は佐藤ひとりになる恐れもある非常事態だけに今回は北日本ラインをしっかり援護してくるだろう。今年のグランプリは2019年に初優勝を飾った立川での開催だけに最終目標はもちろん北日本ラインを利しての2度目の優勝だ。

古性優作 大阪 100期
新山響平 青森 107期
佐藤慎太郎 福島 78期


犬伏湧也が先行主体の走りで勝ち上がる

 犬伏湧也は今年5月の日本選手権、8月のオールスター、10月の寬仁親王牌で優出と大活躍、獲得賞金ランキングも11位につけており、ヤンググランプリの出場予定選手に選ばれているがグランプリ初出場の可能性が出てきた。寬仁親王牌決勝は狙いすぎて仕掛けが遅れたのが敗因だが、勝ち上がり戦ではこれまで多用していた捲りを封印し、先行一本で決勝まで登りつめたのは評価が高い。直線の長い弥彦バンクで結果を残しているだけに、小倉バンクでも先行主体で勝ち上がれればグランプリ初出場はもう目の前だ。


 清水裕友は日本選手権で犬伏湧也の逃げに乗って準優勝、オールスターでは決勝4着になっており、寬仁親王牌ではまさかの一次予選敗退に終わったが、獲得賞金ランキングは6位とS級S班復帰が見えてきている。ただ日本選手権の頃の絶好調ぶりと比べると近況は物足りない印象があり最後の最後まで油断はできない。それでも盟友の松浦悠士が落車の影響で調子を落としているが、犬伏が日本選手権の頃よりも着実にパワーアップしているのでうまく連係できれば今度こそのGI優勝が期待できるだろう。


 郡司浩平は今年記念GⅢ優勝が4回あるが、落車などの影響で調子が上がらず、寬仁親王牌も準決で敗れてしまい獲得賞金ランキングは12位と追い詰められてしまった。それでも昨年も決して順風満帆な1年ではなかったが、競輪祭では1、2、1、1着で勝ち上がり決勝は2着と健闘している。2020年には競輪祭でGI初優勝と小倉バンクとは相性がよく、今年も昨年同様の活躍ができれば5年連続5回目のグランプリ出場に望みがつながるし、賞金ランキングで7位につけている深谷知広とともに巻き返しを狙ってくる。


 和田健太郎は寬仁親王牌の決勝では残念ながら落車に終わったが、勝ち上がり戦では驚異の追い込みで3連勝と絶好調だった。一次予選は渡邉雄太の逃げに乗っての余裕の1着だったが、二次予選Aは最終3角で6番手の内と苦しい展開ながら最後の直線で中割り強襲を決め、雨走路でも上がりは11秒1と好タイムだ。準決も目標の郡司浩平が不発で最終4角9番手となったが、そこから再び中割り強襲で1着だ。落車の影響がやや気になるが、2020年にグランプリを制したとき以上の鋭さがあり、今回も好走が期待できる。

犬伏湧也 徳島 119期
郡司浩平 神奈川 99期
和田健太郎 千葉 87期

選手層の厚い関東がラインの結束力で巻き返す

 関東は地元地区の8月の西武園オールスター決勝では4人揃ったラインから眞杉匠がGI初優勝を飾ったが、10月の寬仁親王牌では決勝に乗れたのは地元の諸橋愛ひとりと勢いに乗れずにいる。準決では眞杉が先行して諸橋の勝ち上がりに貢献しているが、眞杉自身は9着に終わっているのが残念だ。現在の関東は競輪競走のハイスピード化の流れについていけてない印象があるが、今回も出場選手数は24人と他地区を大きく上回っているだけに、ラインの力を結束しての巻き返しに期待したい。


 関東とは逆に出場選手が最も少ないのは中部で今回は4人のみだ。しかし、5月の日本選手権で単騎戦からGI初優勝を飾った山口拳矢にとってはそれが好都合といえなくもない。寬仁親王牌の準決はレース運びのまずさが出て7着に敗れたが、二次予選Aではやはり4番手で内に詰まる苦しい展開になりながらも最後は新山響平-雨谷一樹-諸橋愛のラインを交わして頭に突き抜けており調子は悪くない。すでにグランプリ出場権を得ているので今回は余裕を持って走れるし、今年の最大の目標は親子2代でのグランプリ制覇だ。


 嘉永泰斗はハードスケジュールがたたっての調整ミスだったのか寬仁親王牌は二次予選Bで8着と敗れたが、4日目一般では捲りでしっかり1勝を挙げている。直前の久留米の決勝では新山響平と郡司浩平を相手に捲って2着、中本匠栄が1着とワンツーを決めており、今回もGI初優勝を目指して立て直しを図ってくる。九州では北津留翼の機動力が魅力だ。昨年の競輪祭は準決で惜しくも4着と敗れたが、一次予選2と二次予選Aを鮮やかな逃げ切りで突破しており、今回も相性抜群の小倉バンクで好走してくれるだろう。


 今期2班ながらGI戦でめざましい活躍を見せているのが太田海也だ。GI初出場のオールスターでは準決で惜しくも4着と敗れたが、逃げ切りが3回、逃げ粘りの2着が1回と文句なしの走りだった。寬仁親王牌では二次予選Aで根田空史を突っ張り切るのに脚を使ってしまい三谷竜生に捲られて6着に沈んだが、一次予選は逃げ切って岩津裕介と岡山ワンツーを決めている。3日目特選も逃げて4着だったが岩津を勝利に導いており、今回もケレン味のない先行で中国勢を引っ張っていくだろう。

眞杉 匠 栃木 113期
山口拳矢 岐阜 117期
嘉永泰斗 熊本 113期
太田海也 岡山 121期


プレイバック 2019年 第61回大会 清水裕友の捲りに乗って松浦悠士がGI初優勝


 清水裕友-松浦悠士-柏野智典の中国勢が前受け、単騎の和田健太郎が続き、5番手に吉田拓矢-平原康多-諸橋愛の関東勢、坂口晃輔、木暮安由の単騎の2人が続く並びで周回を重ねる。青板3コーナーから清水が後続を見ながら誘導との車間を切っていくが、赤板から吉田が飛び出し、合わせて清水も踏み上げて両者の踏み合いになる。2コーナーで吉田が出切ると清水はインで粘り、吉田の後位がイン清水-松浦、アウト平原-諸橋で並走になったところで打鐘を迎える。そのままの状態で最終ホームを通過して吉田後位の激しい取り合いが続くが、最終1コーナーで清水が平原を捌き、2コーナーから捲っていく。バックで清水-松浦で出切るが、3番手には柏野をキメた諸橋が続く。3コーナーで4番手にいた和田が捲っていくが、諸橋がこれをブロック、清水-松浦-諸橋の並びで最後の直線に入り、ゴール前で松浦が清水を交わしてGI初優勝。清水が2着で、諸橋が3着。

バンクの特徴 小倉バンク
無風の高速バンクで捲りが絶対的に有利


 周長は400m、最大カントは34度01分48秒、見なし直線距離は56.9m。1998年にグリーンドーム前橋に次ぐ2番目のドーム競輪場としてリニューアルオープンした小倉バンクは、全国の競輪場のデータをもとに走りやすさを追求して設計された国内でも有数の高速バンクだ。昨年の競輪祭での一番時計は6日目11Rの特別優秀で脇本雄太が7番手から捲ってマークした10秒7だが、そのほかにも10秒台の上がりタイムが3回出ている。女子のレースでも全12レースのうち8レースが11秒台の上がりで、初日11Rの予選1では太田りゆが4番手から捲って11秒5をマークしており、スピード自慢の選手にとってはもってこいのバンクとなっている。
 昨年の大会の男子のレースの決まり手を見てみると、全60レースのうち1着は逃げが6回、捲りが27回、差しが27回、2着は逃げ8回、捲りが18回、差しが14回、マークが20回となっている。やはり捲りが圧倒的に有利で逃げは苦しく、先手ラインの選手が1着を取ったレースは14回だった。ただ一昨年の大会では逃げの連対数はほぼ同じだが、先手ラインの選手が1着を取ったレースは21 回と先行選手がかなり健闘していた。
 小倉バンクと相性のいい先行選手は新山響平だ。一昨年の大会では準決を逃げ切りで突破して決勝も逃げて準優勝、昨年の大会も準決を逃げ粘りの2着で突破して決勝は新田祐大の逃げに乗ってGI初優勝を飾っている。
 追い込み選手はレースの流れが速いので付きバテ気味になりやすく、直線ではとくに伸びるコースもなくインコースが空いたりすることも少ないので番手が必須だ。後方で脚をためていた選手が大外伸びで1着というケースもあるが、それもある程度自力のある選手でないと難しい。3日目6Rの一次予選では渡邉雄太が先行、それを新田祐大が捲り切ったが、6番手になっていた森田優弥が最終3角から車を外に持ち出してスパート、イエローライン上を鋭く伸びて頭に突き抜け上がりタイムも11秒0をマークしている。

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