月刊競輪WEB

検索
第38回全日本選抜競輪(GI)展望
レース展望 2023.01.25

第38回全日本選抜競輪(GI)展望

#グレードレース展望

 第38回全日本選抜競輪が16年ぶりのGI開催となる高知競輪場で開催される。主役を務めるのは年末のグランプリを制して史上初の3億円レーサーとなった脇本雄太と古性優作の近畿コンビだが、S級S班が4人揃った北日本勢も強力で、地元のグランプリで3着に終わった郡司浩平や結果は5着ながら強気の攻めを見せた松浦悠士らの巻き返しも見逃せない。

今年も近畿コンビが輪界を席巻する

 脇本雄太はグランプリではお約束の8番手となったが、「これでぼくにもチャンスがあるなと思った」とレース後に驚きのコメントを残している。常識的に考えるとあの対戦メンバーでの8番手は最悪の展開だが、脇本は8番手になった時点でどこから仕掛け、どこで前団を捕らえ、どこで捲り切るかのイメージを思い浮かべ、そのイメージどおりに走って優勝をもぎとってしまった。それはもちろん誰にでもできることではなく、脇本ならではの脚力の裏付けがあってこその技であり、今回も展開無用の豪脚を発揮して勝ち星を重ねていくだろう。
 古性優作は昨年の取手大会の覇者だ。21年のグランプリ同様に単騎捲りで優勝、続いて6月の地元・岸和田の高松宮記念杯も優勝している。ただ後半戦に入るとまるで呼吸を合わせるかのように脇本雄太と古性優作の近畿コンビは調子落ちになったが、グランプリでは見事にワンツーを決めて立て直しに成功した。今年初出走の和歌山記念決勝も脇本が逃げ切り、古性はいったんは新田祐大に番手を奪われながらもきっちり奪い返してワンツーを決めており、昨年同様に今年も脇本と古性の近畿コンビが輪界を席巻しそうだ。
 新田祐大はグランプリでは松浦悠士に攻められながらも新山響平の番手を死守し、そこから自力に転じるも脇本雄太に捲られて6着に終わった。その意趣返しというわけではないが、新年の立川記念決勝では南関東が4車のラインとなり、新田は郡司浩平のインで粘って番手を奪い完全優勝と好スタートを切っている。ただ続く和歌山記念の決勝では新田を先頭に再び北日本が4車のラインとなったが、早めに主導権を取りにきた脇本にまんまと逃げ切られてしまった。その悔しさと反省を胸に、今回は脇本相手に真っ向からのスピード勝負を挑んでくるだろう。
 守澤太志はグランプリではいつもどおりに北日本ラインの援護に徹した結果だったが、残念ながら失格に終わってしまった。「自分はタイトルを獲れるような器じゃないから」と本人は謙遜しているが、グランプリの2車単のオッズは守澤-新田が14.2倍の2番人気で、守澤の初タイトルに期待するファンは多かった。今年初出走の和歌山記念決勝では近畿コンビに続いての3着と健闘、準決では新田の捲りを追走してワンツーを決め、新田の上がりタイムが11秒0、守澤の個人タイムが10秒9と肉薄しており、今最もタイトルに近い男のひとりと言っていいだろう。

松浦悠士が新たな高みに挑む

 松浦悠士はグランプリでは3周回目から早めの北日本分断策に出て全国のファンを驚かせた。赤板で3番手に引いていた新田祐大に追い上げられ、さらに守澤太志に被せられて新田の後輪に差してしまったのが誤算だったが、それがなければ脇本雄太の捲りを牽制してまた違った展開もあっただろう。「今年は安定よりも挑戦を」と本人もコメントしており、結果はともかくグランプリの走りは今年の松浦の戦いぶりを暗示するものと言ってよく、今回も強気の走りで新たなる高みを目指していく。
 清水裕友は11月の競輪祭では準決で9着と敗れ、獲得賞金ランキングも10位に終わりS級S班から陥落した。次場所の松戸記念も初日特選は捲りで2着と好スタートだったがまさかの二次予選敗退。年明けの立川記念も準決で敗れている。ただ二次予選と最終日特選は捲りで快勝しており、調子云々よりも精神的な問題が大きいようだ。高知は18年の共同通信社杯でビッグレース初出場を達成するとともに準優勝と健闘して飛躍のきっかけとなったバンクだけに、ここで気持ちを入れ替えての復活の走りを期待したい。
 久しぶりのGI開催で否応なしに意気揚がるのが四国勢だ。近況は松浦悠士率いる中国勢の陰に隠れている印象もあるが、太田竜馬と犬伏湧也の強力先行がいるだけに最低でも決勝進出を目標に奮闘してくれるだろう。太田は近況がやや低調だが、昨年前半は好調で2月の全日本選抜で優出しており、今回も地元地区のGIに向けてしっかり立て直しを図ってきてくれるだろう。ヤンググランプリは仕掛けきれずに6着に終わった犬伏だが、11月の広島記念決勝では同県の徳島トリオで風を切って見せ場をつくっており、今回も思い切りよく四国勢を引っ張っていってくれるだろう。
 平原康多はグランプリでは単騎戦だったが、結局は自分から仕掛けることができず、同じ単騎の郡司浩平を終始追いかける形となって4着に終わった。今年初出走の立川記念も準決で5着に敗れ優出を逃している。それでも最終日の特別優秀では若手機動力型が入れ替わり立ち替わりの目まぐるしいレースとなったが、平原は捌きに捌いての好位置キープから勝ち星を挙げており決して調子は悪くなさそうだ。そしてなにより関東には拓矢と有希の吉田兄弟に眞杉匠、坂井洋と強力先行が揃っているだけに、平原率いる関東ラインはやはり強力だ。

 
郡司浩平が南関東の仲間たちとともに巻き返す


 郡司浩平は地元のグランプリでは単騎戦だったが、同じ単騎の松浦悠士が早めに北日本にラインに攻めていったのを見て展開待ちとやや消極的な走りとなってしまい、結果は3着に終わった。年明けの立川記念でも今度は南関東が4車と有利な戦いのはずだったが、インから新田祐大に攻められて事故入の9着だった。それでも二次予選と準決は2連勝と引き続き調子はよく、南関東のエースとして深谷知広、岩本俊介、松井宏佑らの頼もしい仲間たちとともに今大会での巻き返しを狙ってくるだろう。
 山田庸平は、昨年はグランプリ初出場を期待される活躍を見せたが、11月の競輪祭では準欠で敗れて途中欠場となり、最終的な賞金獲得ランキングは12位と夢は叶わなかった。それでも今年初戦は高知FIだったが完全優勝と好スタートを切っている。決勝は117期の新鋭・阿部将大の逃げに乗っての優勝だったが、初日特選と準決はともに逃げ切りと気合いの入った走りを見せている。19年の中川誠一郎以後は九州勢からのグランプリ出場が途絶えているだけに、今年こその意気込みでグランプリ出場への再挑戦を大いに期待したい。

 中部は今回も出場予定選手がわずかに6人と苦しい戦いを余儀なくされそうだ。ただエースの浅井康太は11月の競輪祭では準決で4着と敗れたが、一次予選1と二次予選Bで2勝を挙げており、もちろんまだまだGIで戦える力を有しているし、昨年の全日本選抜では優出を果たしている。今年初出走となった別府FIの決勝では4番手からの追い込みで上がりタイム10秒9で優勝と状態もよさそうだ。今回は昨年11月の四日市記念で連日中部勢を引っ張って大活躍を見せていた117期の橋本優己も出場予定で、少数精鋭とはいえ中部勢は決して侮れない存在となるだろう。

プレイバック 2018年 第33回大会 優勝 新田祐大

新田祐大が8番手から捲って初優勝


 単騎の原田研太朗が前受け、同じく単騎の新田祐大が続き、3番手に吉澤純平-平原康多の関東コンビで単騎の山田英明が続き、6番手に古性優作-村上義弘-村上博幸-椎木尾拓哉の近畿ラインで周回を重ねる。青板1センターから古性が上昇して吉澤に並びかけると、吉澤は引いて7番手まで下げ、古性が3番手に入る。古性は前との車間を開け、中バンクに上がって波をつくり吉澤の反撃を牽制する。すると最後尾の山田が内に切り込んでいって切り替えを狙うが、同時に古性が踏み上げて打鐘から主導権を握っていく。結局、近畿ラインが最終ホームを先頭で通過、叩かれた原田は5番手の内で吉澤と並走となり、8番手に新田、位置が取れずに下がった山田が9番手となる。吉澤は最終1コーナーから仕掛けていくが、合わせて村上義弘が番手捲りを打ち、続いた村上博幸が吉澤と平原の2人を続けてブロックして村上兄弟のワンツー態勢と思われたが、関東コンビの後ろから捲ってきた新田がイエローライン上を一気に伸びて先頭でゴールイン、2着に村上義弘、3着に村上博幸が入る。

バンクの特徴  直線が500バンクの中では最も短くカントも緩い


 周長は500m、見なし直線距離は52.0m、最大カントは24度29分51秒、通称は「りょうまスタジアム」。全体的に丸いイメージのバンクで全国の500バンクの中では最も直線の長さが短く、カントも緩いので先行選手も一概に不利とは言えない。
 それでも、輪界のトップクラスが集うビッグレースとなるとさすがに先行選手の逃げ粘りは難しい。18年9月に開催された共同通信社杯の決まり手を見てみると、全47レースのうち1着は逃げが3回、捲りが18回、差しが26回、2着は逃げが2回、捲りが9回、差しが20回、マークが16回となっている。
 やはり逃げよりも捲りのラインのほうが優勢で、先手ラインの選手が1着を取った回数も15回と全体の3分の1以下だ。
 直線は短めだがそこはやはり500バンクなので、レースの流れは全体的にスローペースだ。レースが動きだすのは打鐘過ぎからで、積極性の高いラインが最終ホームで前団を叩いて主導権を取りにいき、最終ホーム過ぎをほぼ一列棒状の展開で通過し、そこから中団に入ったラインが先手ラインを捲れるかどうかの勝負になる。カントが緩いので後方になったラインはよほどの脚力差がないと巻き返しは難しく、遅めの捲り追い込みでの直線勝負になるというのが一般的なパターンだ。
 そのため打鐘から最終ホームまでの位置取りが勝敗の分かれ目となりやすく、各ラインが位置取りでもつれあって展開がゴチャつくと、思い切って先手を取った選手がまんまと逃げ切ってしまうというケースもある。
 先手ラインの仕掛けどころが遅く、後方になった選手も脚をためての直線勝負に懸けてくるので別線の選手同士で1、2着するスジ違いの決着が多いのも特徴のひとつだ。18年の大会でもスジ決着は16回で、スジ違いの決着はほぼ2倍の31回となっている。ちなみに決勝戦も最終4角4番手から中割りを決めた清水裕友がビッグ初優勝かと思われた瞬間、その後ろからイエローライン上を伸びてきた平原康多が清水を交わして優勝とやはりスジ違いの決着になっている。



この記事をシェア

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE

related articles