昨年11月21日の大宮以来の優勝は目の前だった。北日本4車が進出した優勝戦。渡辺は中石湊の番手を得て、3番手に佐々木雄一、4番手は五日市誠という鉄壁の布陣だった。相手は橋本瑠偉、芦沢大輔の栃茨勢、そして坂田康季。数の上でも圧倒的優位に立っていた。
中石が正攻法に付けると、赤板前から橋本が仕掛ける。中石は当然のごとく突っ張り、もがき合いは想像以上に続いた。
「中石君は強かった。ただ、橋本君が思った以上にしつこかった。坂田君が見えたので、踏ませてもらったが、自分のタイミングではなかった」。番手まくりを放ちながら寸前で佐々木にかわされ2着でシリーズを終えた。
今シリーズは決していい状態ではなかった。「直前は雨でバンクが使えなくて、思った練習ができなかった」。特選は絶好の3番手に入りながら車が出ず6着に終わっている。だが準優は打鐘過ぎから一気に仕掛け、ホームでは先頭。そのまま逃げ切った。「前回の大垣準優は3着で決勝に上がれなかった。だから力が入った」。百戦錬磨の渡邉らしい走り方で優勝戦へ進んだ。
「優勝できなかったのは悔しいかったですね。でもね、中石君が本当にいい競走をしてくれた。ずっと引きずり回されましたから。その分、最後にかわされた」。しかし、前回の大垣、そして今回の松戸を見れば明らかに状態は上向いてきている。「一昨年、昨年と体調不良や腰痛が重なって、満足いく練習ができていなかった。それが今年はそれほどでもない。体調が悪くなりそうな時、なった時の過ごし方が分かってきた。だから長期間の体調不良がなくなった」。さらに「一昨年は前厄、昨年は本厄でしたから」とおどけてみせた。
G1高松宮記念杯の出場はならなかったが、その裏開催でしっかり結果を残すのはさすがだ。「まだまだこれからです」とG1の舞台で活躍することを期待したい。