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直送!競輪場便りfrom小倉競輪場 守澤太志(秋田・96期)
インタビュー 2023.12.13

直送!競輪場便りfrom小倉競輪場 守澤太志(秋田・96期)

#競輪場便り

再度「勝ち取る戦い」へ

 今年のグランプリシート争いは、先日の小倉「競輪祭」で幕を閉じた。新たなタイトルホルダーが2人生まれ、返り咲きを果たしたのが2人。一方、S班の座を維持したのが5人。そこには、「攻めて勝ち取る戦い」と「守る戦い」の2つが存在し、2023年のストーリーが紡がれた。3年間、赤いレーサーパンツを着けた守澤は「守る戦い」に敗れ、来年はS級1班に戻る。

 S班戦士にケガの多い年だった。脇本雄太、郡司浩平、平原康多、松浦悠士はそれぞれ骨折で1か月以上の戦線離脱を経験。守澤もまた同様だった。2月の高知「全日本選抜」で準V、3月別府「ウィナーズカップ」は決勝3着と上々の滑り出しだったが、暗転したのは5月6日の平塚「日本選手権」5日目、準決勝。最終3コーナー過ぎ、目の前の郡司浩平が落車し、それに乗り上げた。再乗して8着で入線したが、最終日は欠場。ヘルメットが割れていたこともあり、精密検査をすると、頸椎(けいつい)骨折が判明。1か月半の戦線離脱を余儀なくされた。完治しないまま臨んだ岸和田「高松宮記念杯」は、急仕上げもあって準決勝敗退。8月西武園「オールスター」も落車負傷で途中棄権と、リズムに乗りきれないまま、賞金ランク13位で勝負の「競輪祭」に乗り込んだ。

 決勝2着でも「グランプリ」出場の可能性はあったが、負ければ終わりのサバイバル。明るい髪色も黒く染め直して臨んだ一次予選2走を4、4着で勝ち上がると、2着権利の二次予選Bで守澤が真骨頂を見せる。目標の菅田壱道が前々へ攻め、打鐘で町田太我―桑原大志に叩かれると、最終ホームで菅田が桑原の内へ追い上げる。これは桑原がさばいて番手を死守したが、守澤はすかさず切り替えて桑原を追走。バックではまくって来た山崎賢人―荒井崇博に飛び付き、直線で山崎を差し切って1着。判断、さばき、脚力をフルに発揮して、場内を大いに湧かせた。「シビアに踏ませてもらった。山崎君は来ると思ったが、見る余裕はなくて、音に反応して踏んだ」。研ぎ澄まされた感覚は、高いレベルでの経験のたまもの。翌日の準決勝5着でS班陥落が決まったが、鮮烈な走りはファンの記憶に残ったはずだ。

 思えば昨年も「守る戦い」だった。ケガやあっせん停止で年間フル回転とはいかなかったものの「どんな形でもグランプリに出たい」という執念が実った。だが今年は「競輪祭」で「もうほとんど諦めています(笑い)。タイトルを取れば出られるけど、自分はGIを勝ったこともないし、目指してもいない」と語るほど。「守る戦い」がどれだけ苦しいか。弱音ではなく、自分を追い詰めてきたものからの解放―それが言葉に出たのだろう。それでも、技術や脚力が低下して1班に降格するのではない。ならば、また年末の大舞台へ戻って来なければならない。自身最後の「グランプリ」が、「失格」で終わってしまっていいのか。2024年、もう一度「勝ち取る戦い」に挑む守澤に期待したい。

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