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編集部コラム「KEIRIN On My Mind」
特集 2023.03.01

編集部コラム「KEIRIN On My Mind」

昼過ぎの競輪場のラーメン店。厨房で湯切りをしていた店主のマサさんと目が合った。手早くラーメンを仕上げ、お客さんにラーメンを出し終わった、その脚でこちらに近づいてくる。そこへお客さんから待った。「チャーシューが入ってないよ」。すいませんと言いながら、厨房に戻っていった。そんなに慌ててまで伝えたいことって、あれしかないよな。

案の定、顔をにんまりさせて、「ちょっと面白い選手を見つけたんだよ」と、岡山の棚橋勉の名前をあげた。

それは奈良記念の最終日の一般戦。山田義彦、古屋琢晶で売れていたレース。棚橋は最終ホームでは最後方。そこから追い上げ、3コーナーでさらに踏み上げて1着まで突き抜けた。

2着は山田で、3着は舛井幹雄。2車単は3千5百円越え、3連単は3万円を越えた。取ったの?と聞くと、首を振るマサさん。「でも、棚橋狙いで、これから回収させてもらうよ。本人には悪いけど、浅いレースのときにね。頭までいかなくても、2着、3着も車券的に面白いと思う」。

ちょっと調べてみた。棚橋は19年の7月にA級に降級して、今年1月に42歳でS級に返り咲いた追い込み選手。初戦の立川記念は8着、7着、5着、7着だったが、続く広島で2日目から2着、2着。松山は初日に3着。そして奈良記念は8着、5着、8着ときて、最終

日に昇級後の初勝利をあげた。S級での勝利は17年11月の伊東温泉以来。前回S級だった19年の前期は未勝利だったのに…。四十にして惑わず。強くなっている。

と、ここまでは先週のこと。この話には続きがある。奈良記念が終わって3日後。KEIRIN.JPを見ていたら、広島の最終日に補充で棚橋の名前を見つけたマサさん。さっそく2車単の1着と2着で総流し。レースは最終4コーナーで中に入ってきた勢いから、いいところまで突っ込んでくるかな思われたが、接触して落車。

次のあっせんも欠場していたから、心配だけど、A級時代の昨年2月に名古屋で落車して、2カ月後に復帰し、2場所目の和歌山で優勝した男だ。「復帰したら、様子を見ながら、棚橋を狙ってみたいな」。なるほど、こっちも気にしてみるよ。

でもマサさん、ラーメン作りもこのくらい熱心にね。

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