月刊競輪WEB

検索
編集部コラム KEIRIN ON MY MIND
特集 2026.08.26

編集部コラム KEIRIN ON MY MIND

  8月の初め、本棚の横に置いた段ボールの中から『阿佐田哲也の競輪教科書』(徳間書店、1989年発行)を見つけた。37年前の本は、さすがにぼろい。この本の最終章は「侃々諤々 in 青森」。1988年8月に青森で行われた、現在のGⅠに当たる6日制の全日本選抜競輪(中野浩一が優勝)のことが、日ごとに語られている。「侃々諤々」の読みは、かんかんがくがく。自分が正しいと思う意見を堂々と主張すること。また、盛んに議論を戦わせる様子のこと。実は、この四字熟語が読めなかった。
そういえば、8月11日から6日制の「第69回オールスター競輪(GⅠ)」が松山で開催される。その場に座って熟読しましたよ。ただ、この本が書かれたのは、地域ごとに選手が並ぶライン戦がぼちぼち出始めたころで、レースのスタイルが今の競輪とは違うし、車番ではなく枠番の車券だった。車券の買い方では少し「おやっ?」と思うところがあるけど、心構えはさすが阿佐田哲也。初日の項には「いつもレース場に来たら、まず落ち着くために見をする」「ギャンブルはなんでも序盤戦が肝心で、ここで押し込まれると、後半の戦い方が狂ってしまう」とある。いつも押し込まれているけれど…。
 
今回のオールスター競輪の方針は決まった。全選手が初走を終える初日、2日目は見。3日目、4日目は所用があるので、ダイジェストで見る。ということで、5日目と最終日に、「この選手だ!」というレースで戦うことにした。

▽初日
 カントが34度ときつく、直線が長いこともあって、逃げ切れないバンクのイメージ。中野慎詞や山崎歩夢がそれぞれ1番車に組まれた堅めの番組でも、後ろに抜かれたり、突っ張れずに慌てて仕掛けて不発に終わったり。その山崎が8着に終わったレースの3連単は46万7790円。目についたのは、山田庸平(二次予選で1位入線も失格)と青野将大の伸び。

▽2日目
 負け戦では市田龍生都と山崎歩夢が、勝ち上がり戦では中石湊と石原颯が逃げ切った。中石と石原のレースは、番手の選手が車間を空けすぎた感じもあった。初日のレースの流れからすぐに修正してくるのが一流選手。ドリームは4人が落車する大波乱。勝ったのは松浦悠士。負け戦で見つけたのは松岡辰泰。前回のいわき平で完全優勝しているし、大外を伸びた脚は明日から買える。本には「基本は穴の方で勝負」と書かれてある。人気薄の松岡、頼むよ。

▽3日目
 追い込みの決まり手が多いけど、先行やまくりでも十分戦えている。一般的な、直線の長い400メートルバンクらしい傾向だ。森田優弥の上がり10秒6のまくりはすごかった。このあと相手はきつくなるだろう。ともに2着だったが、自力のときの岩本俊介は仕上がっているし、イン粘りを見せた渡邉雅也の動きは、1走目とは見違えるほどよかった。

▽4日目
 準々決勝Bは1、2着しか準決勝に進めないのに対して、準々決勝Aは1着から6着まで準決勝に勝ち上がれる。二次予選の2着と3着が運命の分かれ道だったのだ。この日は地元勢が大活躍。負け戦で渡部哲男が勝ち、8Rから10Rまで3レース連続で橋本強、佐々木豪、松本貴治が勝利者インタビューを受けていた。昨日見つけた松岡辰泰と岩本俊介が勝っているし…。
 
▽5日目
 さあ、今日から参戦ということで、わくわく。競輪っていいな。いい大人がドキドキできるんだもん。
 昨夜、熟考して出した結論は、5R③青野将大、7R⑤渡邉雅也から。8Rは⑥松岡辰泰の2着、3着で流す。松岡は単騎で動きすぎて7着だったが、青野と渡邉は最後の最後に失速して2着。まだ自分の車券が戦いのステージに上がっていない感じがした。
準決勝に手が伸びるところだが、教科書にはこう書かれている。「準決勝はどの選手も決勝戦に乗ろうとして、必死でくるからね。九人が九人とも懸命に走るレースは勝負にいけないよ。レースとしては見応えがあるけどね」。準決勝は見。犬伏湧也と石原颯の先行に感嘆した。とくに石原はほんとうに強くなったと感心。逃げるペースが抜群にいい。勝てなかったけど、吉田拓矢と古性優作は、自在型として東西の横綱と言っていいんじゃないか。そして最終11Rは、眞杉匠が太田海也のまくりを止めた強烈なブロックに戦慄した。

▽最終日
 昨日は根田空史の番手で6着だったが、自力のときの②岩本俊介は絶対だっ! 2Rは⑨和田健太郎と決まると思って買ったけど、3着の③大川龍二がない。4Rは昨日に続いて⑥松岡辰泰の2着、3着から流す。大外を伸びて、③市田龍生都に続く2着には来たものの、ここも3着に⑤小原佑太がない。「3着とトイレは流せ」は、もちろん阿佐田哲也の言葉ではない。5Rは①渡邉雅也がまくり切ったが、後ろの③簗田一輝が交わして1着。2着に⑦上野優太が来て、3着は渡邉。昨日からの流れで、今日の4Rがピーク。坂を下り始めた気配を感じた。6連敗かあ。本には、当たり外れの内容や感じから、自分の車券の流れを読むことの大切さが書かれている。この感じは確かにわかるな。

決勝は、前受けの四国4車を後ろ攻めの眞杉匠が押さえて先行。石原颯のまくりに乗った犬伏湧也がさらにまくって、番手まくりの吉田拓矢を捕らえ、GⅠ初V。最終日の入場者は1万4544人。初日も7931人だったし、松山の取り組みが素晴らしかったんだ。ネット、ネットの世の中だけど、入場者数を増やすことが一番だと思うな。
 
最後に、競輪教科書の中から。「どんなうまい人でもツカなきゃ勝てないんだから」。ツキとはなにか。その答えを求めて、俺の旅は続く。誰だ、うまい人じゃないだろと笑ったやつは。

 

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE

related articles