6大会のGIの中で最高の格式を誇るレース、第80回日本選手権競輪が平塚競輪場で開催される。3月のウィナーズカップで深谷知広が3年ぶりにビッグレース制覇を成し遂げたが、郡司浩平が初優勝を達成した年末のグランプリに続いて、今大会も平塚での開催となれば、地元南関東勢の活躍に期待したい。優勝こそ逃したものの、3連勝で勝ち上がった吉田拓矢と眞杉匠の関東コンビの勢いもよく、関東勢による日本選手権3連覇も十分に狙える。落車などの影響で精彩を欠いていた近畿勢の巻き返しにも注目で、ホームバンクの防府で優出して復活の狼煙を上げた清水裕友ら中四国勢の一気の台頭も十分にある。

平成の怪物・深谷知広が12年ぶりのGI制覇を目指す
3月のウィナーズカップで、深谷知広が2023年9月の共同通信社杯以来となるGⅡ優勝を達成した。決勝は勝負どころで6番手となったが、2コーナーから踏み出した瞬間に「これは捲れる」と誰もが思ったほどの素晴らしいスピードで、番手捲りの眞杉匠に3車身差をつける圧勝劇だった。本心かどうかはわからないが、とあるインタビューで「上位で通用しなくなったら引退も……」と答えていた。だが、平成の怪物とうたわれたスピードは今なお健在であり、2014年7月の寬仁親王牌以来となるGI制覇も十分に期待できるだろう。

郡司浩平は今回も平塚が舞台だけに大いに期待されるが、近況はやや物足りない印象だ。今年はまだ優勝がなく、2月の全日本選抜は決勝5着、ウィナーズカップは準決勝敗退。残る3走はすべて2着と調子自体は悪くなさそうだが、初日特別選抜予選で逃げた深谷知広の番手という絶好の展開になりながら2着に終わったのはいただけない。深谷を残したい気持ちが強かったのはわかるが、勝てる時に勝っておかないと負け癖がついてしまう怖さもある。今回こそはグランプリ覇者の強さをきっちり見せつけてほしい。

吉田拓矢はウィナーズカップ決勝では眞杉匠を連れて逃げ、9着に終わったが、勝ち上がりは3連勝と絶好調だった。とりわけ準決勝では、古性優作の強烈なブロックで捲りを止められていったん後退しながらも、直線で態勢を立て直して鋭く伸びて1着。年末のグランプリの時と同様、驚異の二の脚を発揮していた。次場所の伊東温泉記念の決勝は6着に終わったが、4月の西武園記念では眞杉匠の逃げに乗って優勝しており、もちろん今回も眞杉との強力タッグで日本選手権連覇を狙っていく。

眞杉匠は落車の影響もあって、今年は1月、2月と優出がなかった。しかし、ウィナーズカップ準決勝では吉田有希の番手回りから山崎賢人に叩かれて3番手となったものの、4番手に入った郡司浩平の仕掛けを警戒してしっかり車間を切り、最後の直線で鋭く伸びて1着。今年初優出を果たし、久しぶりに眞杉らしいクレバーな走りを披露した。次場所の豊橋記念は二次予選で失格し途中欠場となったが、4月の西武園記念決勝では逃げて2着に粘り、栃茨ライン3車で上位を独占。今回も関東ラインの強さを見せつけてくれるだろう。

清水裕友が中四国の仲間たちとともに完全復活を目指す
清水裕友は年明けから病気欠場が続き、2月の全日本選抜が今年初出走だった。二次予選では犬伏湧也の逃げに乗って1着を取ったものの、準決勝で敗退。しかし、地元開催の3月のウィナーズカップでは、二次予選で町田太我の逃げに乗って1着、準決勝では石原颯の逃げに乗っての番手捲りで1着と、優出を決めている。地元優勝こそならなかったが、決勝では吉田拓矢―眞杉匠の後ろ、3番手を取り切って3着。確定板に乗り、地元ファンを沸かせた。今回も中四国の豊富な機動力に助けられながら勝ち上がっていくだろう。

犬伏湧也は昨年4月に繰り上がりでS級S班に昇班。当初は戸惑いとプレッシャーで本来の力を出し切れていない印象だったが、10月の寬仁親王牌準決勝で清水裕友とワンツーを決めてから、調子は確実に上向いてきている。今年も1月の小松島で代替開催となった高松記念の準決勝を捲りで2着突破すると、決勝では石原颯を連れて逃げ、石原の地元優勝に貢献。続く全日本選抜でも3着で準決勝進出を果たしている。その後は日本選手権まで7車立てのFI戦が続くのがやや気がかりだが、今回も中四国勢を力強く引っ張っていくだろう。

寺崎浩平は全日本選抜決勝で脇本雄太を連れて逃げ、優勝に導いたが、ウィナーズカップでは準決勝4着と敗れている。それでも初日特別選抜予選と4日目特別優秀はともに2着で、数字だけ見れば悪くない。ただ、どちらも後手を踏んでの捲り届かずの2着で、レース内容はあまり良くない。先行か捲りかで迷い、仕掛けが中途半端になっている印象だ。脇本雄太の落車の影響が判然としない中、近畿を背負って立つ寺崎の責任は重大。今回こそは自分の脚力を信じた積極的な走りを期待したい。

古性優作は今年もさすがの安定感を維持しているが、2025年のウィナーズカップ以降は特別競輪での優勝がない。安定感はあるものの絶好調とは言えず、本人も現状から早く脱したいと願っているに違いない。ウィナーズカップ決勝も最終ホーム5番手から仕掛けたが、番手捲りの眞杉匠に合わされて不発。焦りが全面に出ていた印象だった。それでも4月の伊東温泉記念を完全優勝で飾っており、今回までに脚力だけでなく精神面でもしっかり立て直しを図って、今度こそのGI優勝を狙ってくるだろう。

流れの悪い嘉永泰斗が今度こその走りを見せる
嘉永泰斗は1月の立川記念で決勝3着と健闘したが、次場所のいわき平記念では初日特選で落車して途中欠場。2月の地元開催の全日本選抜では準決勝で無念の失格となった。次場所の大垣記念は準決勝で敗れるも1着2回、2着1回と好走したが、3月のウィナーズカップでは準決勝で落車と悪い流れが続いてしまった。それでも落車は軽傷で、4日目特選では逃げて3着に粘り、荒井崇博の1着にも貢献しており、調子自体は問題ない。5月の今大会までに悪い流れを断ち切り、本来のスピード抜群の走りを見せてくれることを期待したい。

山崎賢人は1月のいわき平記念では決勝3着だったが、勝ち上がりでは3日間先行し、初日特選と準決勝は逃げ切りと好調ぶりをアピールした。全日本選抜は二次予選で敗れたが、一次予選は逃げ粘って2着、4日目選抜は逃げ切り。そして迎えたウィナーズカップでは、2024年9月の共同通信社杯以来となるビッグ優出を決めている。決勝は後手を踏んで9番手となり、懸命に捲るも前が遠くて5着に終わったが、準決勝では裸単騎で逃げながらも2着と引き続き好調。今回も先行主体の走りで活躍してくれるだろう。

中部は今回も出場予定選手が11人と、他地区の半数ほどで厳しい戦いになりそうだ。そこで期待したいのは、ラインよりも単騎戦で力を発揮する山口拳矢。山口のGI初優勝は、2023年5月に平塚で開催された日本選手権だっただけに、本人も気合を入れて今開催に臨んでくるだろう。今年は2月の全日本選抜で、2024年5月の日本選手権以来となるGI優出を決めており、調子は上向きだ。捲り追い込みが主戦法の山口には333バンクはやや厳しかったようで、ウィナーズカップは準決勝敗退となったが、平塚とは相性が良く、一発を狙っていきたい。

今年はいわき平でグランプリが開催されるため、北日本勢は出場権獲得へ向けて奮闘中だが、現状はやや厳しいと言わざるを得ない。全日本選抜では新山響平ら3人が準決勝に進出したが、新山の逃げを嘉永泰斗に捲られて勝ち上がれなかった。ウィナーズカップでは菅田壱道が優出したものの、単騎戦で8着に終わっている。それでも3月の豊橋記念で新山響平が逃げ切り優勝を果たしたのは明るいニュースだ。近況は捲りに回されるケースが多い新山だが、この優勝をきっかけに、必ずや本来の力強い走りを取り戻してくれるだろう。
【プレイバック】2021年 第75回大会 松浦悠士
清水裕友の逃げに乗って松浦悠士が初優勝

清水裕友―松浦悠士の中国コンビが前受け、単騎の松岡健介と浅井康太が続き、5番手に眞杉匠―平原康多―武藤龍生の関東トリオ、8番手に郡司浩平―佐藤慎太郎の混成コンビという並びで周回を重ねる。青板過ぎから郡司が動いて眞杉に並びかけるが、眞杉は引かず、両者で5番手の取り合いとなる。そのまま郡司と眞杉の並走が続く中、打鐘を迎えて前受けの清水が先行態勢に入ると、すかさず郡司が追い上げ、最終ホーム過ぎに松岡をどかして3番手を奪い取る。松岡は後退し、清水―松浦、郡司―佐藤、浅井、眞杉―平原―武藤の一列棒状となってバックを通過。そこから眞杉が捲りにいくが不発に終わり、前4人のS級S班による争いとなる。最後の直線に入り、松浦が清水の番手から抜け出すが、外を郡司、内を佐藤が迫り、3人が横一線でゴール。写真判定の末、松浦が微差で優勝、郡司が2着、佐藤が3着で決定した。
どんな戦法の選手でも走りやすい良バンク
周長は400m、見なし直線距離は51.5m、最大カントは32度10分34秒。カントも直線の長さも標準的なバンクで、走路にもクセがなく走りやすいため、戦法的な有利・不利は少なく、力通りの決着になるケースが多い。
昨年のグランプリシリーズは真冬の開催だったためバンクは重く、上がりタイムも11秒台後半から12秒台前半のレースが多かったが、日本選手権が開催される5月は気候が良く、バンクも軽い。2023年5月に平塚で開催された日本選手権では、5日目10Rの準決勝で脇本雄太が逃げ切りで上がり10秒7をマーク。初日7Rの一次予選では長島大介が追い込みで、3日目11Rの二次予選では脇本雄太が捲りで、5日目6Rの特選二では坂井洋が捲りで、それぞれ10秒8をマークしている。その他のレースも多くは11秒台中盤前後のタイムで決まっていた。
2023年開催の決まり手を見ると、全66レース(ガールズ1レースを除く)のうち、1着は逃げ11回、捲り28回、差し27回。2着は逃げ11回、捲り10回、差し14回、マーク31回となっている。他のGIと比べると逃げの連対率が高く、先手ラインの選手が1着を取った回数も28回に上る。大会最難関の5日目準決勝も、11Rは清水裕友が捲って1着、清水を追った山口拳矢が2着。9Rは新山響平の逃げに乗った佐藤慎太郎が1着、新山が2着、和田圭が3着と北日本勢で上位独占。10Rは脇本雄太が逃げ切り、古性優作が2着の近畿ワンツーだった。
2着の「マーク」が極端に多い点にも注目したい。必ずしもラインの選手同士の決着だけではなく、別線の選手が前の選手を追って2着に入るケースも多いのだが、それも平塚はクセがなくて走りやすく、前の選手を追いやすい良バンクである証拠と見ていいだろう。ちなみに決勝は、犬伏湧也の逃げを番手捲りした清水裕友を追った山口拳矢が、ゴール前で差し切ってGI初優勝を達成している。