よみがえった闘志
昨年10月の左肘負傷から9か月。手術を経てもなお、「よくなった」とは言い切れない。それでいて、2月の熊本「全日本選抜競輪」を制し、年末の「KEIRINグランプリ」出場権をいち早く獲得した。果たして、今の脇本をどう評価するべきか。経過を振り返りつつ、考察してみる。
【長引くケガ】昨年10月、「寬仁親王牌競輪」参加中に左肘関節を脱臼骨折。橈骨(とうこつ)の骨頭が割れる複雑なケガで、同年末の「KEIRINグランプリ」出場も危ぶまれた。それでも何とかレースに参加できるところまで回復し、ぶっつけ本番で「グランプリ」に出場。結果は9着に終わった。
今年に入っても痛みは引かず、症状の好転は見られなかったが、年頭の和歌山記念、続くいわき平記念を連続V。そして2月の熊本「全日本選抜」に臨んだ。自力で2勝を挙げて勝ち上がった決勝では、先行した寺崎浩平の番手を無風で回り、抜け出して大会連覇。「グランプリ」出場権を獲得した。「今年は厳しい戦いになると思っていたが、早くグランプリを決めたことで今後のプランが立てやすくなった」と、大きな勝利だったことを強調した。
【暗転再び】肘に関しては、いずれ再手術を予定していたが、時期が決まらず、しばらくはレースに参加。3月防府「ウィナーズカップ」では、「このあと手術の予定だが、ダービーか高松宮記念杯のどちらかを棒に振ることになる」と語っていた。ところが準決勝。後方からのまくりが決まり、上位入線は確実……と思われたところで、後方の接触のあおりを受けて後輪を払われ落車。体の右側からバンクに叩き付けられたのは不幸中の幸いだったが、もちろんダメージは残った。
ここで脇本は、ダービー回避、そして手術へと舵を切る。実戦復帰は5月の武雄「全プロ記念」。「根本から治る、という感じではなく、あくまで痛みを減らす対処的なもの。『次に肘から落ちたら、肘がなくなる』と医師に言われた」。折れた骨の間に軟骨などができる「偽関節」の症状まであったというが、再び走れる状態には戻した。
【意識の変化】かくして、6月の岸和田「高松宮記念杯競輪」に参戦。「ダービーも大事だが、やはり高松宮記念杯は近畿のGⅠのイメージ。自分の中でどちらを選ぶかは、もちろん葛藤があった。でも早く手術をする方がいいし、多少はよくなっているのかな」。この大会で脇本は初戦から苦しみ、結果として準決勝で敗退した。並の心構えなら最終日を欠場するところだが、意地で走り抜き、「全日本選抜」V以来、4か月ぶりの白星を挙げた。
「まだ力を入れれば痛いので、それを軽減するために今回は全日本選抜で使ったフレームに戻した。全プロ記念の時はハンドルが遠く感じたので、寸法的には少し小さいものを使っている。上体のフォームは一緒だけど、肘の角度が違ってくる。正直、グランプリに間に合えばいいと思っていた。焦らずいきたいが、残りのGⅠもしっかり戦いたい気持ちもある。まだまだだけど、半年以内にしっかり仕上げたい」
権利を持っているからといって、あぐらをかいて時を待つつもりはない。最強のGⅠ王者に、闘志がよみがえった。覚悟を持って勝負にいく脇本の後半戦に注目したい。