川口雄太がA級生活で得たものは――
2024年前期に2回失格をした影響で、今期は3年間在籍したS級から陥落。ただS級で100点以上を常にキープしていた自在脚は、やはりA級では上位の存在で、4月までの4か月間で6VとA級トップクラスの数字を残している。ただこの成績には「まさかこんなに優勝できるとは思っていませんでした(笑)」と本人もビックリ。
というのも、川口の持ち味は「泥臭くガムシャラに前々に攻める姿勢」。強力な本線に対して当たって砕けろ精神で果敢に攻め込み、時々大物食いを見せる一方、「抜けた脚力があるわけではないので」と、人気を集めた時に勝ち切れないというケースがS級時代は多々あったからだ。
それでもS級時代の実績が評価され、A級を走れば常に人気の軸に推され続けた。挑む立場から“受けて立つ立場”に環境が変わったことが、川口をさらにレベルアップさせた。
「S級では“勝ちたい”という気持ちで走っていたけど、A級では人気にもなるし“負けちゃいけない”っていう意識の方が強いですね。だからこそ人気に応えられるように、どんな手を使ってでも勝とうと(笑)。“勝ちたい”と“負けられない”の違いを経験できたのは大きいと思います」とA級陥落によって学べた一例を挙げた。
7月からはS級に定期昇級する予定だが、レインボーカップ(6月8日=別府記念最終日)の出場も決まっており早ければあと1か月弱でA級卒業となる。
「選手生活を振り返った時に、あのA級生活が大きなポイントになったかも、と言えるといいですね」
“緑パンツ”をはいたことによって付けた勝ち癖や得られた経験は、大きな財産となったことだろう。自力の番組でも人の後ろ回りでも巧みにこなす万能性や、ガッツあふれるレーススタイルからも、やはりS級の水が合いそうだ。曾祖父、祖父、父も競輪選手という非凡素質を秘めた4代目レーサーが、約半年間のA級生活を今後の飛躍への足掛かりにする。