「現状維持じゃダメ」進化を求めて近代競輪に順応する
2004年のアテネ五輪でチームスプリント銀メダルを獲得し、2006年には花月園オールスター競輪で初のGⅠ制覇を達成。続く2008年に小倉競輪祭で2度目のGⅠ優勝を飾ると同年のKEIRINグランプリを制した。現役で五輪に出場してメダルを獲得し、なおかつグランプリのタイトルまでもさらった選手は、広い競輪界を振り返ってみても伏見俊昭と井上の2人しかいない。それほど競輪界にとっては偉大な存在だ。
そんな井上もデビューから22年が経ち、今年7月には44歳を迎える。大ベテランの域に突入したレジェンドはまだまだ元気いっぱいで常にS級1班に在籍し続けている。「年齢(の衰え)を感じることはありますよ。もう(年齢的に調子が)グッと上がることもないし。でも落ちないためにどうすればいいかはずっと考えています」と近年のスピード競輪に圧されながらも、生き抜くため策を練っている。
九州では2022年の9月に荒井崇博が、今年4月には同学年の中川誠一郎が通算500勝を達成した。井上は5月平塚「GⅠ日本選手権競輪」前の段階で通算468勝を挙げており、節目まで32勝と迫っているが「長いなあ…。自力で動いていたときなら1年で行けるかどうかって感じだけど、最近は後ろを回るレースも増えているし1着は減っている。来年ぐらいになるのかな…」と話しつつ、静かにモチベーションを高めている。
レベルを落とす事なく節目を達成するためには、今後もS級上位に君臨し続け、日々変化していく近代競輪にアジャストし対応していく必要がある。「九州の若手…例えば(嘉永)泰斗なんかの後ろに付くと年齢の差を感じる。自分はトレーニングとかで追い込んで現状維持でいい、なんて考えじゃもうダメ。自分らの年齢では衰退していくだけですよ。進化…そう進化しなきゃいけませんね」と自らを戒めるように言葉をつむいだ。ベテランの飽くなき挑戦はまだまだ続く。