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直送!競輪場便りfrom高知競輪場 山中貴雄(高知90期)
インタビュー 2023.03.15

直送!競輪場便りfrom高知競輪場 山中貴雄(高知90期)

#競輪場便り

 地元の声援を力に

 古くからある競輪の格言「地元3割増し」。地元選手となれば声援も多く、気合も入って力が出る―というのが定説だが、根拠の有無は誰も知らない。だが、こと高知に関して言えば、今年改装したとはいえ、独特の形状によるクセは変わらず。となると、走り慣れている地元選手が有利なのは間違いないところだ。

 今年最初のG1「全日本選抜競輪」が2月23日から高知で開催された。当所でのG1は2007年9月の「オールスター」以来、15年半ぶり。この晴れ舞台に地元・高知から唯一選出されたのが山中だ。高知のS級選手は今期10人いるが、1班は山中のみ。「全日本選抜競輪」ならではの、各県代表としてのエントリー。しかも、山中自身通算300勝にリーチがかかっている状況。嫌でも重圧がかかる立場だが「2月に入ってずっと緊張していたが、直前にだいぶ気持ちがほぐれてきましたね」と、意外にも前検日の表情は穏やかだった。

 初日、一次予選は8R。犬伏湧也(徳島)―香川雄介(香川)の3番手。堂々の本線だったが、犬伏と香川の連係が乱れてしまい、最後は内へ進路を取ったが及ばず6着。初戦敗退が決まった。当初予定されていた入場制限も解除され、祝日でもあったことから大きな声援が飛んだ。にも関わらず「地元3割増し」の効果はなかなか表れない。2日目は6着、3日目は5着。苦戦続きの中、山中は初日のレースが心に引っかかっていた。「位置はともかく、勝ち上がれるコースが見えていた。それが悔しくて…」。バンクを熟知した地元選手だからこそ、なぜそこへ突っ込めなかったのか…。

 思えば2019年、当所記念を制した時も内を伸びた。同期の田中晴基(千葉)に前を任せて、前団のもつれを見ていた。最終3コーナーでは目の前が壁になるほどの混戦だったが、勝利につながるコースは知っていた。逃げた取鳥雄吾(岡山)と、その番手で競り勝った諸橋愛(新潟)の中を割って優勝。鮮やかな強襲劇は記憶に新しい。モヤモヤした気持ちを抱えながら挑んだ最終日は、橋本優己(岐阜)との即席タッグ。高橋晋也(福島)の先行を、最終2コーナー4番手から橋本がまくり、3コーナーでは後方から反撃してきた菊池岳仁(長野)から山中が張って援護。まくり切った橋本とのワンツーが決まった。「(菊池を)止めてからじゃないと、のまれそうだったんで。抜きたかったけどね」。300勝はお預けとなったが、ようやくホッとした笑顔を見せた。

 今回の山中は「地元3割増し」だったのか。本人は言う。「初日の声援がすごくて、それでリラックスできた。4日間を通じて、思ったよりも状態はよかった」。見えない部分で、効果は出ていた。「初日敗退で正直落ち込んでいたけど、(決勝に進んだ)香川さんの準決勝のレースを見て、頑張らなアカンなと」。

4月には40歳の大台を迎えるが、その前に地元記念のあっせんもある。また大声援を浴びて3割、いや5割増しの戦いぶりで、高知を盛り上げる。

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