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直送!競輪場便りfrom前橋競輪場 田尾駿介(高知111期)
インタビュー 2022.11.16

直送!競輪場便りfrom前橋競輪場 田尾駿介(高知111期)

#競輪場便り

勝負の世界に必ずある「壁」。それにぶち当たった時、人は2種類の反応を見せる。自分の非力を悟って諦めるか、乗り越える方法を考えるか。田尾にとって初めてのG1となった10月20日からの「寬仁親王牌」。初日から9、6、5着と苦戦が続き、心が折れかけた。だが最終日、島川将貴後位から直線で伸びて、ビッグ初の連絡みを果たす。「やっとレースに参加できた。力の差を感じて、ショックを受けていた。何もできないで終わっていたら、うちひしがれて帰るところでした」。失格者が出て繰り上がりながらの2着ではあったが、ホッと息をついた。

 高知工高から自転車を始め、スポーツ推薦で明大入り。2013年のインカレ・ケイリンで3位に入るなど活躍。逸材揃いの111期を在校16位で卒業した。四国の同期には松本貴治、門田凌、今野大輔、川口雄太、小川丈太らがおり、切磋琢磨しながら着実に階段を上ってきた。昨年1月にS級に昇格、その初戦は年頭の立川記念。初日敗退のあと、2日目に果敢攻めで2着入線しながら、後ろから突っ込まれてゴール後落車の憂き目に遭い、右手親指を骨折。わずか2走で4か月の長期離脱を余儀なくされた。5月の名古屋で戦線復帰したが、今度はその初戦で落車失格と、雌伏の時期も味わった。だが、転んでもタダでは起きないのが田尾のいいところ。「自力が通用しないのなら」と心機一転。続く函館記念の一次予選では、橋本智昭後位の伏見俊昭に競り込んで番手を奪い3着と、新スタイルでいきなり名を売った。そこから追い込み寄りの自在戦が板に付いて、競走得点もジワジワ上昇。徐々に存在感を増していった。

 昨年の四国地区プロ・1000mタイムトライアルで2位に入り、今年の全プロ大会出場権(大会は未実施)を獲得したことで、G1出場にこぎ着けた。まだF1戦の優勝もない田尾にスポットライトが当たったのは、今年3月1日に決勝が行われた地元・高知のG3「施設整備等協賛競輪 土佐水木賞」。取手G1「全日本選抜」終了直後で強力メンバー不在ではあったが、そのチャンスを生かして2、1、2着で勝ち上がり、G3初のファイナル進出。四国4車ラインの3番手を回って7着に敗れたものの、同県の重鎮・佐々木則幸に前を回らせてもらったことは、大きな財産になった。

 あらためて、初のG1参戦を振り返ってもらった。「自分の中では足りていない部分が多くて…。タイムもスピードも違うし、勝負どころで少し離れたり。自分は早いうちから自在志向で、S級では自力を出していなかった。基本的に練習が弱くて、それでもF1ではごまかしが利いていたけど、このレベルでは全然無理」。やはり心は折れていたのかと思いきや「ショートまくりを打てれば、幅も広がる。前次第ではリカバリーできないですから。小倉(竜二)さんみたいなヨコはもちろん必要だが、まず余裕を持って追走するところから。今回の経験を無駄にしないように、明日からしっかり練習したい。早く練習したいですね」と目を輝かせた。自らのウィークポイントを知って、打開するための手段を練る方を選んだ田尾。一流と呼ばれる選手は、その繰り返しで大きくなってきた。「壁」の先には、思い描く輝く未来がある。

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