●5月のMVP
平原康多・87期・S1 4月30日~5月5日 「第78回日本選手権競輪」決勝
昨年は落車負傷が相次ぎ、長らく在籍したS級S班の座から陥落。今期は心機一転S級1班としてスタートした。久しぶりのFⅠシリーズをどう戦うかに注目が集まったが、肝心なところで取りこぼしもあり、思いのほか勝てず苦戦が続いた。周囲の関係者、選手やファンからは限界説もささやかれたが、本人は気丈に目の前の一戦に集中していた。
どうにか勝ち上がった決勝は、これまで幾度も連係を重ねてきた吉田拓矢を目標とし、後ろにはずっと目をかけてきた同県の後輩、武藤龍生を従えてのライン3車。数年前ならば強力本線として認知されたはずだったが、古性優作ら強豪もおり支線扱い。それでも吉田がガツンと気持ちよく出切り他の面々に反撃のチャンスを与えなかった。こうなれば番手絶好で、しかも4角手前で内を切り込んできた諸橋愛を武藤が猛烈に締め込み露払い。あとは番手から抜け出すだけだった。
これまで関東の看板選手として長らくラインをけん引してきた平原が、その背中を追ってきた後輩たちに支えられて手にした栄冠は「(ダービーは)GⅠで一番取りたかった」という垂涎モノだった。これでGⅠ「グランドスラム」に王手がかかった。残るは「オールスター競輪」で8月に開催を控えている。捲土重来を果たし、更なる目標に突き進む平原から目が離せない。
●ベストレース 阿部将大・117期・S1
5月23~25日「別府競輪FⅠナイターシリーズ」 25日、決勝12R
迷った末の決断、地元完全Vを飾るまで
競走得点上位者でありシリーズリーダーとして挑んだ地元戦は初日特選、準決ともに連勝を飾り、たやすく決勝へと進出。しかも共に2車1番人気に応えるなど順調だった。
2日目を終え決勝メンバー7人が出揃ったが、九州は阿部を含め立部楓真、島田竜二、塚本大樹、松尾信太郎と総勢5人。並びを決める際に立部は早々と「先頭で自力」と表明し、追込陣は阿部のジャッジ次第。阿部とすれば、ここまでの2走の流れを大事にして自力で戦うか、もしくは立部に任せるかを迫られたが、最終的には立部マークを決断し、残りの3人も塚本、島田、松尾と続きライン5車で結束した。「もちろん立部君と別線で自力も考えました。でも、この先のことも踏まえて番手の勉強も。(開催にいた)小野(俊之)さんにも相談しました。もし分断があってもそれも経験ですから」と悩める胸中を打ち明けた。
残り2車は恩田淳平―木暮安由と並んだ群馬コンビ。5枚でまとまられ、しかも阿部が1番車とあってはやりにくい。恩田はコメントに悩み、熟考した末に「立部君の番手にジカ」ではなく「自分で何か」と選択肢を広げた。
レースは前受けが九州、後ろ攻めは群馬と大方の予想通り。恩田は赤板前から阿部のヨコまで上昇したが、誘導を下ろして車を下げた。そして打鐘前、踏み上げた恩田は立部に合わされると、今度は阿部をドカしにかかった。打鐘4角から2角までの攻防は激しかったが阿部が内から丁寧に恩田をさばき番手を死守すると、最後は直線を猛然と突き抜けて完全優勝を挙げた。2着には塚本、3着には立部が逃げ粘り、ここも2車1番人気。最初から最後までシリーズリーダーとしての任務をまっとうした、充実のシリーズだった。