【11月のMVP】
眞杉匠(栃木・113期)命運を左右した絶妙な「1車、追い上げ」
小倉競輪 「第65回 朝日新聞社杯 競輪祭」
関東からただ1人勝ち上がり単騎戦となった眞杉。「(単騎は)元々、好きだった」と得意としており、位置取りも巧妙だった。狙い絞った位置は深谷知広を先頭に3車でまとまった南関勢の後ろ。レースが動いた青板バック過ぎ、中団の深谷は後ろ攻めの脇本雄太にフタをされ一旦は車を下げたが、すぐさま巻き返して先頭に躍り出た。ここで眞杉は切り替える事無く深谷の仕掛けを信じた。それは「深谷さんらが前にこういう感じの先行をしていたなと思ったので、それを信じて付いて行った」と過去の経験則があったからだ。
その後は思い切りフカす深谷に乗っかり「来たのがわかったので、(バックの)直線から1車、追い上げた」と太田海也のまくりに合わせるように踏み上げた。すると深谷マークから松井宏佑が慌てて番手まくりを打ったが、3番手の簗田一輝の口が空いた。眞杉はわずかなスキを逃さず松井にスイッチし、ゴール寸前に松井をブチ抜いた。「単騎、やっぱり気楽でしたね(笑)。読みもよくレースに反応できた。(単騎で)何もできなかったダイヤモンドレースの失敗を生かせました。まるで自分じゃないってくらいうまく動けました」と高笑い。
反省を糧とし、軌道修正を施して最高の結果を出した。これで8月西武園オールスターに続くGⅠタイトルを手にして今年2冠を達成した。これ以上ない勢いを手にして年末の「KEIRINグランプリ2023」に挑む。
【11月のベストレース】
「第65回 朝日新聞社杯 競輪祭」簗田一輝(静岡・107期)27歳・S1
自在性に富む器用な立ち回りで存在感を発揮
競輪祭は自力のレースから番手、3番手回りと大忙し。何でもありの立ち回りでひょいひょいと勝ち上がり、自身初となるGⅠ決勝の舞台を踏んだ。インパクトを残したのは松井宏佑―郡司浩平の3番手から突き抜け、3連単80万円強の高額配当を叩きだした5日目の準決10Rだったが、ここで取り上げたいのは3走目の二次予選Aだ。
ここは松井―岩本俊介の3番手。松井が取鳥雄吾と踏み合いになると1センターで口が空き、岩本と連係を外してしまった。松井が突っ張り通して前の2人が先頭にいると、簗田は猛然と追い上げた。まずは外にいた坂井洋マークの平原康多をドカして内へ切り込むと、取鳥から切り替え岩本の後ろにスイッチしていた岩津を外からキメて、返す刀で坂井を弾いた。そしてゴール寸前に前の2人に付け直し、岩津を制して3着に飛び込んだ。自らのミスを帳消しにする大立ち回りは、ラインを壊してはならないとの責任感から来るもので、しっかりと南関勢で確定板を独占し、準決以降へ流れをつないだ大ファインプレーだった。