10月のMVP 久留米競輪 10月6~9日熊本競輪開設73周年記念「火の国杯争奪戦」in久留米
嘉永泰斗(熊本・113期)
地元エースが力の限りを尽くした4日間
地元は割増、とは競輪界に伝わる常套句。もちろん特別戦線も大事だが、年に一度の地元記念はモチベーションがかなり高まる晴れ舞台だ。嘉永にとってもそう。2年前の当大会で初の記念制覇を達成したが、あの北津留翼のブン回しに乗ったもので、まだ‶駆け出し〟だった。
あれから年月が経った今は5月に函館記念を自力で制し、特別戦線の争覇クラスに名を連ねるなど猛烈なスピードで進化を続けており、地元のエースとしてここは何としても譲れなかった。直前は1本配分を欠場して準備を整え、並々ならぬ思いで大会を迎えた。
だが、初日特選でいきなり落車。右膝の痛みをかかえながらハンデを背負った戦いとなった。
「地元じゃなかったら、帰っていました。それぐらいきつかった」とそこからは阿修羅のような立ち回りで決勝へと勝ち上がり、決勝は「前でやると決めていた」と確固たる決意を固めていた松岡辰泰に託した。松岡のブン回しに新山響平が手を焼くと、2角から渾身の番手発進。最後は中本匠栄との伸び比べに屈したが、郡司浩平の猛追をしのぎ両者のワンツーが決まった。
2度目の地元制覇は逃したが、練習仲間の中本との決着がうれしく、これまでの険しい表情からようやく笑顔が戻った。久留米競輪場を借りて行われた「火の国杯争奪戦in久留米」はひとまず今年でおしまい。掉尾を飾るにふさわしい地元ワンツーで幕を閉じた。来年は、生まれ変わった熊本バンクで「優勝を目指す」と早くも気持ちを高めている。
●10月のベストレース
河端朋之(岡山・95期)38歳・S級1班
弥彦競輪場「第32回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」
元ナショナル仕込みのハイパワーで初のGⅠ決勝へ
2009年のデビューから14年目にして初のGⅠ決勝へと勝ち上がった。2日目に二次予選は位置取りを巧みに中団3番手をキープして、先手を奪った深谷知広を11秒3のまくりで捕まえた。準決はらしさを発揮した単騎戦。他派の攻防が激しい中、バックシンガリ9番手で虎視眈々と脚を温存して直線のひと踏みにかけた。最後は大外を強襲し山田久徳に4分3輪差で制して3着をゲットした。
決勝は今をときめく若手、犬伏湧也がいたが諸橋愛が番手を主張すると、別で自力を選んだ。「そこ(番手)は自分の戦う場所じゃないですから」とキッパリ。決勝は出だしこそ良かったが伸びを欠きまくり不発に終わったが「この舞台を走れていい経験になった。また走りたいですね」とすがすがしい表情だった。
2年前にナショナルチームを引退してからは競輪に集中しているが、時折、走るPIST6では圧倒的強さを示し5開催連続して完全Vを飾るなどいいモチベーションになっており、本業の競輪にも好影響をもたらしているようだ。