●今月のMVP 三谷竜生(35)奈良101期 S級1班
最近では毎年2月ごろに地元記念が行われるのが常となっており、そこへ向けて仕上げていくのが三谷のいつものルーティンだ。1月京王閣FⅠを制して順調に仕上げると、待ってましたと挑んだ地元大会を見事に4連勝の完全Vで制した。この開催は脇本雄太が初日特選で途中欠場し、古性優作までもが二次予選で失格して姿を消すなど、地元・近畿勢に暗雲が立ち込めかけたが、残ったメンバーをまとめ上げて地元の牙城を守った。
直後に行われた高知GⅠ「全日本選抜競輪」でもファイナル進出を果たして3着をゲット。ここ数年は大舞台でのヒットが少なかったが「最近はものすごく調子がいいんです」と自画自賛しており、徐々に調子を取り戻し往年の脚が戻りつつある。かつては脇本の番手は三谷の指定席だった。今年は特別戦線でも両者の好連係が見られそうだ。復権を目指す三谷の一挙手一投足から目が離せない。
●レース 奈良競輪「開設72周年記念 春日賞争覇戦」2月4日 12R準決勝
新田祐大(37)福島 90期 S級S班
ウェブ上などで幾度も取り上げられたが、新田の執念と気迫がこもった奇跡のレースだった。打鐘7番手から巻き返しを図ると、中団にいた嘉永泰斗のけん制を受け金網近辺まで飛ばされて圏外へと消えた。が、その後がすごかった。落車をせずに済んだと確認すると9番手から怒涛の勢いでカマしを放ち、あれよあれよという間に1車ずつ抜き去り、とうとう直線を突き抜けてしまった。
レース直後、スタンドの歓声はまるでGⅠ決勝のごとくすさまじかった。本人は「金網に当たったかとか、自転車が故障した、自分の体の具合などは真っ白で、レースの記憶がない」と言うほど危機一髪の状況だった。そしてレースを「あれは事故ですよ」と端的に評した。それでも爆発的な走りで勝ってしまった。
何をするかわからない謎めいた運行が競輪選手・新田の最大の魅力。神がかったこのレースは何年経っても新田の名勝負のひとつとして記憶されていくだろう。