朝晩はすっかり秋。この秋、初の長袖シャツ姿で競輪場へ向かう俺。奈良記念じゃないよ。奈良で代替開催の京都向日町記念「平安賞」。今日は最終日。
村上義弘が現役バリバリだったころは、「他地区の選手が一番優勝しにくいのが平安賞」と呼ばれていたけどな。外野から見ていても、近畿の選手は緊張感の中にも、ノリノリって感じがしたもの。
11時52分発走の3Rに間に合うようにやってきたから、ラーメン店に寄らずに車券売り場へ。狙っているのは田中大我。
田中は奈良の115期で、思い切って仕掛けていく先行選手。前受けして突っ張るという選択肢が今の先行選手にはあるけど、田中は引いて巻き返していく。瞬発力を生かすためだ。このへんは柔道出身らしい。今年2月の奈良記念では二次予選こそ8着と大敗したけど、あとの3走は確定板を外していない。7月の前橋GⅢはオール3着。決勝では脇本雄太に前を任されて、ゴーッと音がするほどの加速で先頭に立ち、脇本の優勝に貢献している。落車後に走った先月の西武園FⅠで完全優勝。今回の平安賞は狙ってみたいねと、ラーメン店の常連、トミさんやタナカくんと話していた。
今シリーズの初日は先行したものの4着。二次予選も逃げて、格上の杉浦侑吾、岩井芯に力負けして9着。なんか体が重そうな感じだったな。3日目は競輪場へ来られなかったのでネット投票。田中が地元の菱田浩二のために先行と読んで、後ろにつける瓜生崇智との⑧=②からの3連単。田中は出られなかったけど、菱田がそこから伸びて⑧②⑦で1万400円。100円だけゲットしたけど、田中は9着だった。
最終日は3R。やっと逃げ切ってくれた。3連単は①⑤②で1番人気の810円。①=⑤から100円ずつ流してたんだけど、あとでもう100円足していたから、ちょい浮きか。
ラーメン店が昼休憩に入るころに顔を出すと、座っていたトミさんが、あいさつもせずにいきなり、「田中、やっと逃げ切ったね」と声をかけてきた。番手の山内卓也から買っていたタナカくんは、「田中、今日は蘇りましたね」と少し悔しそう。柔道出身者は競輪に向くかについて少し話をした。柔道出身者には往年の大スター、福島正幸がいるけど、俺だって、その現役時代を知らない。確かに短時間や瞬間で高出力が要求されるのは共通点だけど、出力の箇所が違うから。競輪はペダルをいかに速く回すか、なので、向き不向きはどうだろうというのが、頼りない俺たちの結論。日本発祥という点は共通か。
タナカくんが「柔道っていえば、今回走っている神奈川の塚本瑠羽もそうですよ。東海大の柔道部出身で、井上康生や山下泰裕の後輩」。国際的な柔道の大会でも優勝している本格派。塚本はヘルメットから出た長髪をなびかせて、2日目はきれいにまくっていた。
さらにタナカくんがノートPCを開いて、日本競輪選手養成所のホームページを見せてくれた。117回生から128回生まで、自転車競技以外の競技歴がある選手候補生の出身競技歴別人数の表が載っている。男子は野球がダントツで、陸上、サッカーと続く。女子は陸上、バスケットボールからコンスタントに入所している。柔道はというと、男子は119・121・123・125回生に各2人。女子は118回生と128回生に各1人入っている。
そして決勝の話。

俺が「平安賞は伝統的に近畿勢が強い。だから古性。逃げそうな南関勢に乗って、そこから早めに踏み上げてもいいし、一気に仕掛けてくる犬伏に切り替えてもいい」と熱弁をふるうと、タナカくんは、「乗りに乗っているし、犬伏の破壊力が違いますよ。伝統的に近畿勢が強いと言っても、昨年の平安賞in奈良の優勝は犬伏ですよ」と言い返してきた。さらにトミさんは「いやいや、競輪は展開。丸山が絶対に先行するんだから、恵まれるのは根田でしょ」と主張。脇で聞いていた店主のマサさんは笑って聞いてらあ。俺の車券は古性と犬伏、古性と根田の表裏から3着を流す3連単。あれっ、この車券って、3人のいいとこ取り?

レースは丸山に乗った根田が最終ホームから番手まくり。これを追った古性が差して、3着には山田庸平がコースを探しながら届いた。大本命の犬伏は8番手から仕掛けていくが、最終3コーナーで村上博幸と接触して失速し5着。3連単は①②⑨で4万1560円。200円持ってるじゃない。
トミさん、タナカくん、マサさんに車券を見せる俺。「アクシデントがあったから、当たっても喜べないな」と言葉を添える。嫌味じゃないよ、ほんとに。トミさんは3着に山田がなかったし、タナカくんは犬伏が行けなかった時点でアウト。
最終ホームでいったん仕掛けていった古性は、再度、根田にマークし直したことを、後ろの村上、中井に謝っていると思う。そういう男だろうな。なので俺も、この車券はトミさんとタナカくんのおかげだよと、いくばくかのご祝儀を彼らに渡したのでした。小さな古性になれるかな。