4月26日はオールガールズクラシック(以下AGC)の最終日。午後6時45分。キッチンのカウンターに置いたタブレットから、レースの始まりを告げるファンファーレが流れる。料理の手を止めて、しばし画面に見入る。号砲が鳴り、7人の選手たちが発走機を離れる。松戸競輪の第8R、選抜戦がスタートした。
これが私の楽しみのひとつ、キッチンでの競輪観戦。しかもガールズケイリンオンリー。さらに言えば、夜オンリー。仕事から帰ってきた私と三十路の娘が、料理をしながら、食事をしながら、缶酎ハイやワインを飲みながら、一緒にガールズのライブ配信で盛り上がる。土日は少額だけど車券だって買う。さらに盛り上がる。モーニング、デイ、ナイター、ミッドナイトのダイジェストを見て、ああだこうだと話すのも楽しい。なんたって、ほぼ毎日、日本のどこかで開催されていますから。
ことの起こりは、昨年の今ごろ。私がマンションの階段で転んで腰を骨折し、入院したときのこと。娘が置いていったノートパソコンで、女性たちが自転車で競走しているYouTubeのサムネイルをたまたまクリック。元気いっぱいに走る彼女たちの姿を、骨折中の自分と重ね合わせて見ていたら、涙が出てきた。しかも嗚咽するほどに。以来、毎日見るようになり、しばらくすると、仕事帰りに病院に寄ってくれる娘もこの楽しみに付き合い始めた。CTCの投票会員にもなり、ベッドの上で2人して声を押し殺してはしゃいでいた。なんちゅー患者やねん。入院生活で、ガールズケイリンのファンが2人誕生した。自分でも意外だったけど、この母娘、実はギャンブラーだった(笑)。やばい!でも楽しい。
今回のAGCに思い入れが強いのは、岐阜で行われた昨年のこの大会でガールズケイリンと出会ったから。しかもちょうど昨年の4月26日。だから今日は記念日。私が最初に名前を覚えた選手が高木萌那(たかき・もな)さん。その記念日の第1Rで勝った選手だからだ。AGCと同時開催されていた通常のガールズレース予選2だった。今回はAGCの方に名前を連ねているのが感慨深い。着実に強くなっている。
高木さんは福岡県出身の22歳。高校時代には女子硬式野球の強豪・神戸弘陵学園の正捕手として全国制覇したアスリートだ。レースを見ていても体の強さが伝わってくる。父は高木和仁さんという競輪選手。養成所時代は126期のナンバー3で、2年前の5月にデビューした。ルーキーシリーズではなく、いわゆる通常のガールズレースで初優勝を飾ったのは、昨年7月の大宮モーニング。先にまくった小林莉子さんをさらにまくり、その後ろにいた吉川美穂さんも抜かせなかった。娘と「つえー」と言い合ったのを覚えている。
最近で特筆すべきは、3月の久留米決勝。今年に入って22戦全勝だった児玉碧衣さんのまくりを差し切ったレースだ。仕掛けてきた児玉さんに1センターで切り替え、間が空いていたにもかかわらず、4コーナーで追いつき、ゴール前で交わした。あれは本当に驚いた。
見ていて思うのは、高木さんはゴール前20〜30mあたりから、外をグイグイと伸びてくること。そして、まくりも同じく力強く「グイグイグイ」と進んでいく。この瞬間が最大の応援ポイントだ。見ているこちらも一緒になって力を入れたい。グイグイグイと声を出しても構わない。
高木さんは今回のAGC初日も、外をグイグイ伸びて3着。惜しくも準決勝には進めなかったが、「これは買おう」と2日目の第7Rで車券を購入。しかし、いいところまでまくったものの力尽きて6着。グイグイグイと声援を送ったのだが……。一緒に見ていた娘が「きっと初日は仕掛けが遅かったから、早めに行ったんだよ」とひと言。まるでプロの解説のようだ(笑)。なるほど、と頷く私。

そして今日の冒頭のレース。奥井迪さん、熊谷芽緯さん、高木さんの3連単ボックスと、3着に村田奈穂さん、高橋梨香さんを入れた3連単を購入していた。
レースは、奥井さんと高橋さんの先行争いをまくった熊谷さんが勝利。2着はマークしていた永禮美瑠さん。高木さんはその後ろから伸び切れず3着。奥井さんと高橋さんの先行争いは読めなかった。悔しい。配当も8,900円とついていたのに。娘いわく「負けた選手たちは、ママより悔しいと思うよ」。またしても、なるほどと頷いてしまう。
高木さんは、まくり切れなかったレースや伸び切れなかったレースで見つかった課題を持ち帰り、また練習し、次のレースに挑んでいくのだろう。
頑張ってほしい。高木萌那さん!
それから今回のAGC。決勝は圧倒的に強い佐藤水菜さんから買い、2着の太田りゆさんも押さえていたが、3着の児玉碧衣さんが抜けてしまい、残念な結果に。それでも激しいレースが多く、レベルの高さを改めて実感した。面白かった。ファンになってよかった。