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第38回共同通信社杯展望
レース展望 2022.08.24

第38回共同通信社杯展望

#グレードレース展望

 第38回共同通信社杯が名古屋競輪場で開催される。8月のオールスターで完全優勝を達成した脇本雄太が断然の中心だが、若手選手の出場が多く「若手の登竜門」と位置付けられている大会だけに次代のエースを目指すヤングパワーの走りにも注目したい。


脇本雄太が再び桁違いのスピードを披露する


 今年のGI戦をふりかえってみると、2月の全日本選抜と6月の高松宮記念杯は古性優作が優勝、5月の日本選手権と8月のオールスターは脇本雄太が優勝と近畿コンビでタイトルを独占している。そのためグランプリ出場権を獲得しているのは現時点では2人だけなので賞金争いは例年になく熾烈だ。GIIの共同通信社杯はグランプリ出場には直結しないが、優勝賞金が2千万、準優勝でも1千万なので、賞金の上積みを狙う選手たちによる激しい戦いが繰り広げられるだろう。
 脇本雄太は8月のオールスターでは5連勝の完全優勝を達成して今年2度目のGIタイトルを獲得した。決勝では初手は寺崎浩平の番手ながら松浦悠士に内から捌かれて7番手まで下がってしまい、さすがの脇本も万事休すかと思われたが、最終バック手前から猛然と巻き返すと番手捲りの松浦を捕らえて先頭でゴール、上がりタイムは10秒8だった。20年8月に名古屋で開催されたオールスターの準決では上がり10秒4のバンクレコードタイをマークとバンクとの相性もよく、今の脇本なら対戦相手や展開に関係なく負ける要素はまったく見当たらないと言っていいだろう。
 北日本はオールスターでは新田祐大が準決敗退と残念な結果に終わったが、守澤太志、成田和也、新山響平、小松崎大地の4人が優出と健闘した。とりわけ好調さをアピールしていたのが守澤だ。準決の守澤は7番手の展開となってしまったが、最終4角手前から内に切り込み、そこからコースを見極めて車を外に持ち出すと直線鋭く伸びて先頭でゴールイン、2着の松浦悠士に1車身の差をつける完勝だった。決勝も3着でオールスター終了時点での獲得賞金ランキングは5位、成田和也も9位に浮上しており今回も北日本勢がしぶとい走りで勝ち上がっていくだろう。
 関東はオールスターでは準決で平原康多と吉田拓矢が落車してしまい、関東からの優出は吉澤純平ひとりと寂しい結果になってしまった。それでも平原は最終日の特別優秀では吉田有希の逃げに乗って大会2勝目を挙げて地元ファンの大歓声を受けており調子は悪くない。敗者戦でも熱い声援を送ってくれたファンのためにもしっかり立て直しを図ってくるだろう。獲得賞金ランキングでは6位と決して安全圏とは言えない位置なので、今回も関東の頼もしい後輩たちとの連係から優勝を目指してくる。

 

脇本雄太 福井 94期
守澤太志 秋田 96期
平原康多 埼玉 87期


松浦悠士がオールスターのリベンジを誓う


 中四国は8月のオールスターでの優出が松浦悠士ひとりだったが、決勝では近畿ラインを分断して寺崎浩平の番手を奪取と単騎戦らしい奇襲戦法で見せ場をつくった。しかし、逃げる寺崎の番手から仕掛けて「優勝」の2文字が見えた瞬間に脇本雄太の怒涛の反撃で優勝をさらわれてしまっただけに悔しさは相当なものがあるはずで、今回はリベンジを誓ってくるだろう。清水裕友は準決で敗れたが脇本雄太相手に思い切った先行策に出ており、太田竜馬も準決では先行して松浦の優出に貢献と中四国はやはり役者揃いで強力だ。
 中部はオールスターでは優出者がゼロと復活の糸口がなかなか見つからない。それでも昨年岐阜で開催された共同通信社杯では山口拳矢がビッグレース初優勝を飾っているだけに、今年もきっとチャンスは巡ってくるだろうし、地元ファンのためにも中部勢の頑張りに期待したい。浅井康太はオールスターでは準決で敗れたが、一次予選2は皿屋豊の捲りに乗って1着、最終日優秀では三谷竜生の捲りを追走から2着と調子は悪くなく、坂口晃輔も一次予選2が1着、二次予選が2着で準決進出を果たしている。
 南関東はやはり郡司浩平がまだ本調子ではなかったのかオールスターでは準決で敗れている。準決では脇本雄太を執拗に牽制したのが敗因のひとつだが、なにがなんでも脇本を止めてやるという強い気持ちの表れは郡司らしい走りだったと言えなくもない。一次予選2では誰も行かないならオレが行ってやるとばかりに打鐘先行で逃げ切っており、その気持ちの強さが郡司のなによりの魅力だ。獲得賞金ランキングでは10位と微妙な位置に落ちてしまったが、今回も平塚でのグランプリ出場に向かって郡司らしい走りを見せてくれるだろう。
 九州では荒井崇博の巻き返しに期待だ。44歳のベテランの荒井は今年突然覚醒し、5月の日本選手権、6月の高松宮記念杯、7月のサマーナイトフェスティバルで優出、残念ながらオールスターで連続優出は途切れてしまったが、獲得賞金ランキングは11位とグランプリ初出場が狙える位置に付けている。オールスターの準決は斜行による失格だったが、最終4角9番手から直線伸びて入線順位は2着、二次予選では3番手から直線伸びて1着と脚勢は相変わらず好調で、01年のヤンググランプリを優勝した思い出の平塚バンクでのグランプリ出場を目指して今回も突っ走る。

松浦悠士 広島 98期
浅井康太 三重 90期
郡司浩平 神奈川 99期


荒井崇博 佐賀 82期

若手選手の無欲の逃げが波乱を呼び起こす


 共同通信社杯は比較的若い選手たちに出場枠が確保されているのが特徴で、「若手の登竜門」と位置付けされている大会だ。昨年の大会では新山響平-新田祐大-守澤太志の鉄壁の北日本ラインを捲った山口拳矢がビッグ初優勝。20年の大会では山崎賢人が脇本雄太と新田祐大の両雄を不発に終わらせる大逃げを打ち、番手の山田英明の失格による繰り上がりながら中本匠栄がビッグ初優勝を飾っている。今回も脇本雄太が文句なしの優勝候補の筆頭だが、若手選手たちの頑張り次第では波乱の決着もあるだろう。
 犬伏湧也はオールスターの二次予選は落車の影響で当日欠場となったが、一次予選1では根田空史の逃げを早めに捲り返してGI初出場GI初勝利と期待どおりの走りを見せた。ビッグレース初出場だった7月のサマーナイトフェスティバルでも1着、3着で勝ち上がり、決勝では松浦悠士を優勝に導いている。今回も落車の影響がやや気になるが、オールスターの当日欠場でファンに迷惑をかけたぶんも含めてより一層の強い走りを見せてくれるだろうし、中四国勢を連れての無欲の先行が波乱を巻き起こしてくれるだろう。
 吉田有希は今回で5回目のビッグレース出場となるが、回を重ねるごとに着実に強さと存在感を増している。ビッグ初出場だったウィナーズカップではバックを取れたのは1回だけだったが、6月の高松宮記念杯では4走のうち3走でバックを取り、8月のオールスターでは5走すべてで先行している。一次予選1では番手追走の諸橋愛を振り切っての逃げ切りでGI初勝利を達成、二次予選は4着に沈んだが平原康多の勝ち上がりに貢献、最終日特別優秀では平原とワンツーを決めており今回も関東勢を力強く引っ張っていく。
 歳は37と若くはないが競走はいつまでも若々しいのが北津留翼だ。オールスターでは一次予選1で落車してしまったが、一次予選2は吉田有希の逃げを6番手から捲っての1着で上がりタイムは10秒7、4日目選抜は小森貴大の逃げを7番手から捲っての1着で上がりタイムは11秒1、最終日優秀も太田竜馬の逃げを7番手から捲っての1着で上がりタイムは11秒0と、一次予選1の落車が大いに悔やまれる結果だった。敗者戦回りで対戦相手がやや軽めだったとはいえそのスピードは抜群で、今回も自慢の捲りで勝ち星を積み重ねていくだろう。

犬伏湧也 徳島 119期
吉田有希 茨城 119期
北津留翼 福岡 90期

思い出のレース 2016年 第32回大会 竹内雄作


竹内雄作が逃げ切りでビッグ初優勝


 新田祐大-守澤太志の北日本コンビが前受け、3番手に平原康多-神山雄一郎-佐藤悦夫の関東勢、6番手に竹内雄作-浅井康太-西村光太の中部勢、単騎の園田匠が最後尾で周回を重ねる。青板2コーナーから竹内が上昇開始、合わせて平原も上がっていき新田は下がる。竹内はバックで誘導員を下ろして先頭に立つ。すると平原は内に潜り込んで西村をどかして3番手を確保する。並走を嫌った園田が関東勢の後ろの6番手まで下がり、新田が7番手、捌かれた西村が最後尾となる。そのままの隊列で打鐘を迎え、4コーナーから竹内が踏み上げて先行態勢に入る。平原は車間を切って仕掛けのタイミングを狙い最終2コーナーから捲っていくが、それを牽制した浅井の後輪に平原が接触して落車、佐藤も平原に乗り上げて落車してしまう。しかし、神山は落車を避けて内に切り込み浅井をどかして2番手に入る。その後ろに園田も続くが、竹内がそのまま逃げ切ってビッグ初優勝、神山が2着、園田が3着に入る。

高速バンクで10秒台の上がりタイムが続出


 周長は400m、最大カントは34度01分47秒、見なし直線距離は58.8m。名古屋は走りやすさとスピードの出やすさを求めて設計されたバンクで、選手間でも日本一走りやすいと評判が高い。直線は長すぎず短すぎずの標準的な長さで、カントはややきつめだがコーナーが流れるので自力選手にも追い込み選手にも走りやすく、どんな戦法の選手でも力を発揮できるバンクとなっている。
 20年8月に開催されたオールスターの決まり手を見てみると、全54レース(ガールズ2個レースを除く)のうち1着(1着同着1回を含む)は逃げが6回、捲りが21回、差しが28回、2着は逃げが9回、捲りが7回、差しが16回、マークが21回となっている。
 バンクの性格としては逃げ、捲り、追い込みとどんな戦法にも向いているが、スピードの出やすい高速バンクなので自力選手は叩き合いの消耗戦を強いられるために逃げは苦しく捲りが有利だ。
 4日目12Rの準決では新山響平の逃げを脇本雄太が3番手から捲り上がりタイムはバンクレコードタイの10秒4で、さすがの古性優作も追走一杯の2着だ。5日目3Rの選抜では皿屋豊が単騎ガマシ。それを8番手から捲った渡邉一成の上がりタイムがやはり10秒4、4番手から捲った山田久徳が10秒6で2着、皿屋が11秒4で3着に残っている。
 ガールズを除いた全54レースのうち10レースで10秒台の上がりタイムが出ており、自力選手はもちろん追い込み選手もスピードのある選手でないとお話にならない。
 5日目8Rの選抜では島川将貴が押さえてきて前受けの新山響平はいったん3番手に入ったが、最終ホームからタイミングよく仕掛けて上がり10秒9で逃げ切り、追走の佐藤慎太郎が2分の1車身差で2着だった。捲りはどこから仕掛けてもスピードに乗れるので基本的には逃げは苦しいが、ハイスピードのレースで追い込み勢はバテバテになるので、逃げ切りは難しくても2着、3着に残れるケースが多い。

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