第65回オールスター競輪が西武園競輪場で開催される。昨年と同様に6日制のナイター開催だ。ダービー王の脇本雄太と今年すでにGIを2度制覇している古性優作の近畿コンビがあまりも強力で、地元の平原康多率いる関東勢や松浦悠士率いる中四国勢らがいかに近畿コンビを攻略していくかが一番の見所になるだろう。
ドリームレース展望
地元の平原康多がファンの期待に応える
オールスター競輪はファン投票によって出場選手が決まるのが特徴で、ファン投票第1位から第9位までのベストナインがドリームレースに、第10位から第18位の9名がオリオン賞レースに出場する。しかし、両レースとも位置づけは一次予選で、出場選手たちはポイントの優遇措置はあるものの予選スタートの選手たちと同様に2走してポイントを稼がねばならず、獲得ポイント上位者9名だけが準決フリーパスのシャイニングスター賞へ進めるので、1走目から気の抜けない激しい戦いが繰り広げられるだろう。
ファン投票第1位は地元の平原康多で2年連続の選出だ。今年の平原は2月の全日本選抜と5月の日本選手権で優出と相変わらず安定した走りを見せていたが、6月の高松宮記念杯の準決で落車、その影響か7月のサマーナイトフェスティバルも準決で敗れてしまった。ついでに言えばサマーナイトの準決には関東勢が8名乗っていたが優出できたのは森田優弥ひとりだっただけに、平原を中心にしっかりと立て直しを図ってくるだろうし、第1位に選出してくれたファンのためにも、そして地元の意地にかけても平原はきっと期待に応える走りを見せてくれるだろう。
ファン投票第2位は松浦悠士だ。今年の松浦は全日本選抜での準優勝はあるが、日本選手権は二次予選敗退と低迷していた。だが、サマーナイトフェスティバルでは徳島の新鋭・犬伏湧也との連携によって連覇を達成しており、その勢いに乗って今回も復活を目指す走りを見せてくれるだろう。一方の清水裕友はファン投票第7位で、松浦と同様に決して調子は悪くないのだが波が大きくて成績が安定していない。しかし、中四国は次々と強い若手が出てきているので清水もうかうかしていられず、今回は松浦とうまく連係して強い走りを披露してくれるだろう。
ファン投票第3位は郡司浩平だ。今年は平塚でグランプリが開催されるので郡司を後押しするファンの応援は力強い。郡司は高松宮記念杯で今年初のGI優出を決めたが、サマーナイトフェスティバルの準決では惜しくも4着に敗れており状態はまだ完調とは言えない。それでも直前の久留米記念では3連勝の勝ち上がりで準優勝しており、高松宮記念杯の準決は渡邉雄太の逃げに乗っての番手捲りながら上がり11秒1をマークと着実に調子は上がってきている。今回も南関東の仲間たちと連携しながらグランプリ出場を目指して勝ち上がっていくだろう。
佐藤慎太郎がファン投票第5位だ。今回北日本はひとりだけなので、ここは連係実績豊富な関東勢を追走するだろう。日本選手権決勝では眞杉匠-平原康多の3番手を追走で眞杉の逃げは脇本雄太に捲られたが、佐藤はゴール前伸びて2着に突っ込んでいる。サマーナイトフェスティバル決勝でも目標の新田祐大が不発で福島コンビは完全に終わったかと思われたが、佐藤は岩本俊介の捲りに巧みに切り替えて3着に入っており、今回もベスナインの中では最年長だがゴール前での佐藤の突っ込みが侮れない。
ダービー王の脇本雄太はファン投票第6位だ。脇本は今年の2月まで長期欠場していて3月のウィナーズカップも決勝6着に終わったために票が伸びなかったが、日本選手権決勝では圧倒的なスピードで別線を完封して6度目のGI制覇を成し遂げており、今回も優勝候補の筆頭であることはまちがいないだろう。一方の古性優作はファン投票第4位だ。サマーナイトフェスティバルは優出に失敗したが、脇本不在の中でも今年はGIを2度制覇しており、脇本と古性の近畿2人は現時点では輪界最強のコンビと言っていいだろう。
オリオン賞展望
新田祐大がスピードの違いを見せつける
オリオン賞レースは7月のサマーナイトフェスティバルで強い走りを見せた新田祐大と守澤太志の北日本コンビが中心となるが、眞杉匠、町田太我、太田竜馬のヤングパワーも侮れず、細切れ戦が予想されるだけに波乱の余地も十分でレース巧者の山口拳矢の一発も軽視できない。
新田祐大は5月の地元開催の日本選手権を落車のために欠場したのが影響したのか、ファン投票では昨年の第6位から第10位へと下がってしまった。欠場明けの6月の高松宮記念杯も二次予選敗退と散々だったが、7月のサマーナイトフェスティバルでは2連勝の勝ち上がりで優出と久しぶりに強い走りを見せてくれた。7着に終わった決勝を見る限りではまだ万全の状態とは言えないが、準決では町田太我の逃げを目標に番手捲りした清水裕友の上を捲り切っており、今回も新田らしいスピード抜群の走りを披露してくれるだろう。
山口拳矢はファン投票第12位だ。落車の影響などで昨年9月に共同通信社杯を優勝したころの勢いはやや影を潜めている印象だが、若手らしからぬ自由奔放な走りで相変わらず人気は高い。今年は日本選手権で準決進出と調子はまずまずだ。近況は以前とは違って早めに先行態勢に入る積極的な走りも見せており、不振が続く中部の救世主としての期待は大きい。ファン投票第11位の浅井康太がサマーナイトフェスティバルを欠場と体調面が不安なだけに山口の責任は重大で、浅井を連れての積極的な走りに期待したい。
太田竜馬は昨年のファン投票は第29位だったが、近況の活躍が評価されて今年は第14位に浮上し2年ぶりのオリオン賞レース選出となった。サマーナイトフェスティバルは準決で敗れたが、直前の小松島記念では優勝こそならなかったものの二次予選は7番手からの捲りで上がりタイム11秒1をマーク、準決は逃げ切りと引き続き好調だ。今年は2月の全日本選抜と3月のウィナーズカップで優出、日本選手権と高松宮記念杯は準決に勝ち上がっており、ファン投票第18位の町田太我とともに今回も中四国勢を引っ張っていく。
今や関東を代表する先行選手のひとりへと成長を遂げた眞杉匠はファン投票第17位で、初のオリオン賞レース選出となった。今年は日本選手権で2度目のGI優出と実績も申し分ない。サマーナイトフェスティバルの準決では平原康多を連れて打鐘先行に出るも8着に沈んだが、直前の小松島記念決勝では松浦悠士や太田竜馬らを相手に3番手から単騎で捲って2度目の記念優勝を達成、上がりタイムも10秒6と文句なしのスピードを見せつけており、今回もファン投票第15位の宿口陽一とワンツーを目指す。
予選展望
グランプリ出場を目指して九州勢の躍進が続く
九州勢はファン投票では上位に食い込めなかったが、このところの盛り上がりはかなり熱い。5月の日本選手権では九州からの優出は荒井崇博だけだったが、6月の高松宮記念杯では荒井と山田庸平と園田匠の3人が優出、7月のサマーナイトフェスティバルでは荒井と山田英明の2人が優出している。サマーナイト終了時点での獲得賞金ランキングでは山田庸平が7位、荒井崇博が10位とグランプリ初出場が狙える位置につけている。山崎賢人や嘉永泰斗らの若手機動力型の存在も頼もしく、今回も九州勢が大暴れしてくれるだろう。
中四国からまたまた大型先行が登場した。それが徳島・119期の犬伏湧也だ。今年はFI戦ながら4度の優勝をすべて完全優勝で達成、3月の119期のルーキーチャンピオンレースも5番手からの捲りで圧勝している。そしてビッグレース初出場となったサマーナイトフェスティバルでは初日予選が逃げ切り、準決は松浦悠士を連れて眞杉匠の逃げを捲り3着に粘り込んで優出を果たしている。決勝も結果は6着ながら逃げて松浦を優勝に導いており、今回もトップクラスを相手の先行勝負で中四国勢引っ張っていく。
岩本俊介はサマーナイトフェスティバルの初日予選では町田太我の逃げを4番手から捲って圧勝、上がりタイム10秒8の一番時計をマークした。準決は勝負どころで内に詰まる苦しい展開だったが、最後は5番手から大外を捲り追い込んで2着で決勝進出、決勝も犬伏湧也-松浦悠士の逃げを5番手から捲り4分1車輪差届かなかったが準優勝と健闘した。昨年もサマーナイトフェスティバルで優出したあとのオールスターで大敗しているのがやや気になるが、今の状態ならばオールスターでの活躍が十分に期待できるだろう。
プレイバック 2017年 第60回大会 渡邉一成
渡邉一成が新田祐大を交わして2度目のGI優勝
新田祐大-渡邉一成-山崎芳仁の地元福島トリオが前受け、単騎の脇本雄太と原田研太朗が続き、深谷知広-竹内雄作-浅井康太-坂口晃輔の中部勢が後攻めで周回を重ねる。青板周回の2コーナーから深谷が上昇しバック過ぎには早くも先頭に立つが、竹内が深谷の後輪と接触して落車してしまう。すぐさま浅井が追い上げて深谷の番手に収まるが、中部勢も福島勢と同様に3人のラインとなる。下げた新田は絶好の4番手となり、落車のあおりを受けた脇本と原田は切り替えられず7番手と8番手となる。そのままの隊列で打鐘を迎え、最終ホームから深谷がスパートする。すぐさま脇本が仕掛けるが車が伸びず、続けて最終2コーナーから新田が捲る。新田のスピードはよく、山崎が付け切れずに離れてしまうが、3コーナー過ぎには新田-渡邉で深谷を捲り切っしまう。最後の直線では地元両者のマッチレースとなり、外に膨らんだ新田の内を突いた渡邉がゴール前で新田を交わして優勝、新田が2着、浅井が3着に入る。
バンクの特徴
400バンクだが直線が短く333バンクに近い
周長は400m、最大カントは29度26分54秒、見なし直線距離47.6m。西武園はもともと500バンクだったが、1994年に400バンクに改修された。そのため旧のバンク名残から400バンクとしては比較的カントが緩く直線も短いので333バンクに近い性格を持っており、先行選手が有利といわれている。
21年4月の記念開催では千葉・111期の野口裕史が一次予選こそは捲りだったが、二次予選、準決、決勝と3日間逃げ切って記念初優勝を完全優勝で飾っている。
ちなみに記念開催の決まり手を見てみると、全47レース(ガールズ1個レースを除く)のうち1着は逃げが12回、捲りが15回、差しが20回、2着は逃げが10 回、捲りが7回、差しが11回、マークが19回となっている。 直線が短くて見た目は333バンクに近いが、333バンクほどのカントがないのでスピードに乗りにくく、捲りは最終3角過ぎに先手ラインの3番手あたりまで迫ってもそこから先が乗り越えられず不発のパターンが多い。上がりタイムもほとんどが11秒台後半から12秒台だ。
それでもS 級上位の選手ならば、バンクの特性に関係なくパワーとタイミングで捲り切ってしまうケースも少なくない。3日目準決の10Rでは黒沢征治の逃げを和田真久留が6番手から捲っていったが、8番手から仕掛けた高橋晋也がその上を捲り切って1着でゴールイン、上がり11秒4の好タイムをマークしている。今回も輪界のトップスターが勢揃いのGI開催となれば、必ずしも先行選手有利とはならないのは容易に想像できるだろう。
追い込みは直線が短くとくに伸びるコースもないので番手必須だ。それでも最後の直線ではインコースは空かないが、3、4番手ぐらいに位置していれば車を外に持ち出し、イエローライン上を踏み込んでいけば頭に突き抜けることも可能だ。