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第41回共同通信社杯競輪GⅡ展望
レース展望 2025.08.27

第41回共同通信社杯競輪GⅡ展望

#グレードレース展望

第41回共同通信社杯競輪が福井競輪場で開催される。8月のオールスター競輪決勝で4車結束から見事に優勝者を出した地元近畿勢が今回も中心になりそうだが、連日の力強い走りで3度目のGⅠ優出を決めた太田海也のビッグレース初制覇にも期待がかかる。ダービー王・吉田拓矢率いる関東勢の一発も侮れず、地元地区の開催で優出ならなかった北日本勢や南関東勢の巻き返しにも注目したい。いよいよ佳境に入ってきたグランプリ出場権をかけた賞金争いからも目が離せず、GⅡ開催ながら賞金の上乗せを狙うトップレーサーたちの熱き戦いが繰り広げられるだろう。

鉄壁の布陣で近畿ラインがシリーズをリードする


 共同通信社競輪は若手選手の登竜門という位置付けがあり、若手選手がより多く選考されているのが特徴だが、もうひとつ一次予選と二次予選の自動番組編成という特徴もある。一次予選は選考順位によって各番組に振り分けられ、二次予選は一次予選の着順によって振り分けられるため、普段とは違った組み合わせのレースを見ることができる。たとえば昨年の一次予選9Rは脇本雄太と和田健太郎が連携してワンツー決着、11Rは眞杉匠のほぼ先行一車の組み合わせで、眞杉が果敢に逃げるも、番手の取り合いでもつれたところを捲った伊藤旭が1着、眞杉が2着となっており、今年も一次予選と二次予選は面白い組み合わせの番組を楽しむことができるだろう。
 大会のシリーズリーダーはもちろん地元の脇本雄太だ。昨年7月の記念開催では連日上がり10秒台の捲りを放って完全優勝を飾っており、当然ながらバンクとの相性もいい。ただ腰にヘルニアという爆弾を抱えているために近況は欠場が多く、コンデションに不安があるのも事実だ。8月のオールスターでもドリームレースと二次予選Aでは大敗しているが、準々決勝Bは捲りで圧勝、準決では逃げ粘りの2着で優出しており、今回も万全の状態でなかったとしても、地元ファンの期待に応える走りをきっと見せてくれるだろう。
 寺崎浩平がついに念願のGⅠタイトルを獲得した。ラインの絆によって若手自力選手が優勝に近い番手を回らせてもらうと、責任感と緊張によって仕掛けが早すぎたり遅すぎたりして失敗するケースがよくあるが、そんな不安を微塵も感じさせない堂々たる勝ちっぷりだった。これで近畿勢は2人がグランプリの出場権を獲得。さらに賞金ランキングで優位な位置に立つ古性も含めると今年も近畿ラインが優勢になりそうだが、欲をいえばもうひとりという思いもあるはずで、タイトルホルダーの仲間入りを果たした寺崎が今回も近畿勢を力のかぎり引っ張っていくだろう。
 関東は昨年の大会の覇者である眞杉が不参加なのは残念だが、その分も含めてダービー王の吉田拓矢がしっかりと関東勢を引っ張っていくだろう。オールスターの決勝では仕掛けがやや遅れて5着に終わったが、捲っていったときのスピードは悪くなかった。オリオン賞では6番手からの捲りで1着、準決は眞杉の先行に乗って1着と好調をキープしており、今回も勝ち上がりが期待できる。吉田の練習仲間でGⅠ初優出を決めた115 期の佐藤礼文や、若手ながら追い込み主体で準決まで勝ち上がった117期の鈴木玄人も注目の存在だ。

脇本雄太 福井 94期
寺崎浩平 福井 117期
吉田拓矢 茨城 107期

太田海也が今度こその積極策でビッグ初優勝を目指す

 太田海也はオールスターでは連日の力強い走りで3度目のGⅠ優出を決めたが、決勝は初手で8番手となってしまったのが運の尽きだった。一度は近畿ラインの3番手まで追い上げたが、そこからズルズル後退して自ら勝機を失ってしまった。多くのファンはドリームレースのときと同様に太田が脇本を切りにいくのを期待していたはずで、それが太田にとっては唯一の打開策だったはずだ。太田は海外での実績は豊富だが、競輪ではまだ若手なのだから、チャレンジャー精神を忘れずに今度こそはの積極的な攻めを期待したい。
 清水裕友はオールスターの準々決勝Bでは先行勝負に出て9着に敗れ、ファンの期待を裏切ってしまった。おまけにオールスター終了時点での獲得賞金ランキングでは18位 とS班陥落の危機にもひんしている。それでも敗者戦ながら5日目特選では7番手から捲って上がりタイム10秒9をマークしており調子は決して悪くないはずだ。中四国には太田や犬伏湧也という心強い味方がいるだけに、なにかひとつきっかけさえあれば必ずや復活の走りをみせてくれるだろう。
 郡司浩平はドリームレースでは深谷知広の捲りを差して1着、シャイニングスター賞も深谷の捲りを差して1着と好調だったが、準決では太田が脇本を叩かずに想定外の動きで3番手に収まってしまったために仕掛けのタイミングを失ってしまい、懸命に捲っていくが微差の4着に敗れた。別線の仕掛けを当てにしすぎて自分からレースをつくっていく勇気がなかったのが敗因だろう。それでも状態は万全に近いのは間違いなく、今回もオールスターでの失敗を糧に南関東のエースにふさわしい走りを見せてくれるだろう。
 深谷知広もドリームレースは5番手から太田の逃げを捲って郡司とワンツー、シャイニングスター賞は3番手から眞杉の逃げを捲って郡司とワンツーと好調だったが、大事な準決で組み立ての甘さが出てしまい懸命に捲り上げるも4着と敗れてしまった。それでも獲得賞金ランキングでは郡司が6位、深谷が7位とグランプリを狙える位置につけている。深谷は2年前の共同通信社杯を優勝し賞金を上積みしてグランプリ出場を果たしており、今年も郡司とともにグランプリに出場するために優勝を狙ってくる。

太田海也 岡山 121期
清水裕友 山口 105期
郡司浩平 神奈川 99期
深谷知広 静岡 96期

 
新山響平が本領発揮の走りで復活を目指す

 函館のオールスターでは残念ながら北日本勢からの優出はなかった。さらにいえば準決まで勝ち上がれたのは新山響平だけという寂しい状況だった。その新山もドリームレースは単騎で3着、シャイニングスター賞も単騎で7着、準決でようやく愛媛の松本貴治が番手についてくれたが7着に終わっており、自分の持ち味を発揮できない悔しい敗戦となった。獲得賞金ランキングも10位と厳しい位置にいるだけに、新山らしい先行主体の走りを期待するファンのためにも今回は気合いを入れ直して巻き返しを狙ってくるだろう。
 中野慎詞は7月のサマーナイトフェスティバルでは準決で4着と敗れたが、残り3走はすべて2着と好走していた。しかし、オールスターでは準々決勝Aまで勝ち上がるも5走して一度も連絡みなしとやや期待外れの結果となった。同じナショナルチームの太田は3度目のGⅠ優出を決めているが、中野の場合は国際ルールのケイリンに慣れすぎていて組み立てが素直すぎているのが原因のひとつだろう。もちろんスピードに関しては太田と比べてもまったく遜色ないし、うまく展開がハマればビッグレース初優出が期待できる。
 中部勢はオールスターでは山口拳矢と纐纈洸翔の2人が準決まで勝ち上がっている。山口は直前の富山記念決勝で4番手から捲って今年2度目の記念優勝を達成、上がりタイムは8秒8とバンクレコードを更新している。その勢いに乗ってオールスターのオリオン賞では6番手から寺崎の逃げを捲りきって上がりは10秒9だった。残念ながらその後は連絡みがなかったが、今回もここぞというときに勝負強さを発揮してくれそうだ。纐纈も連絡みは1回だけだったが、昨年のヤンググラプリの覇者だけに侮れない。
 九州勢はオールスターでは荒井崇博、嘉永泰斗、山田庸平、伊藤颯馬の4人が準決まで勝ち上がっており九州復活まであと一歩だ。嘉永泰斗は2023年5月の函館記念で上がりタイム10秒7の好タイムで優勝しているが、その相性抜群のバンクでのオールスターでも二次予選Aでは中野の逃げを捲っての2着で北津留翼とワンツー、準々決勝Aでも中野の逃げを捲っての2着で荒井とワンツーと確実に復調してきており、ベテラン健在の荒井らとともに勝ち上がりが大いに期待できるだろう。

新山響平 青森 107期
中野慎詞 岩手 121期
山口拳矢 岐阜 117期
嘉永泰斗 熊本 113期

プレイバック 2019年 第35回大会 郡司浩平
郡司浩平が3番手捲りで2度目のビッグ制覇


 渡邉一成-佐藤慎太郎の福島コンビが前受け、3番手に地元の柴崎淳と金子貴志の中部コンビ、5番手に平原康多-諸橋愛の関東コンビ、7番手に山崎賢人-稲川翔の即席コンビ、最後尾に単騎の郡司浩平の並びで周回を重ねる。赤板手前から平原が上昇し山崎を押さえて先頭に立つ。そこへ山崎が飛んできて平原を叩き先行態勢に入る。単騎の郡司が山崎ラインを追走してきてすんなり3番手に収まり、叩かれた平原が4番手、6番手に渡邉、8番手に柴崎となったところで打鐘を迎える。山崎はいったん山をつくってから迷いなくスパートして一本棒の隊列で最終ホームを通過する。2コーナーから郡司が後ろの動きを確認してしてからバックから仕掛けていく。平原も郡司を追っていくが、稲川が大きくけん制してもつれてしまい、6番手から捲ってきた渡邉もあおりを受けて止まってしまう。後続のもつれを尻目に郡司は3コーナーで山崎を捲りきり、そのまま先頭でゴールイン。渡邉の番手から内に切り込んだ佐藤が2着、稲川のけん制で外に膨らみながらも態勢を立て直して郡司を追った平原が3着に入る。

福井競輪場は軽くてクセのないタイムの出やすいバンク

 周長は400m、最大カントは31度28分37秒、見なし直線距離は52.8m。福井は日本競輪選手養成所の400バンクをモデルに造られており、選手間でもクセがなくて走りやすいと評判が高い。標準的な400バンクだが、直線が短いので先行選手に有利とされている。しかし、軽い走路なので捲りや直線強襲の追い込みも決まりやすく、どんな戦法の選手でも十分に力を発揮できるバンクとなっている。
 昨年7月の記念開催の決まり手を見てみると、全48レースのうち1着は逃げが7回、捲りが15回、差しが26回、2着は逃げが9回、捲りが11回、差しが10回、マークが18回となっている。S級上位の選手が集う大会であっても逃げがかなり健闘しており、先手ラインの選手が1着を取った回数も17回だ。
 大会のベストタイムは初日12Rの初日特選で脇本雄太が4番手から捲ってマークした10秒7で、脇本は4日間10秒台の捲りを連発して完全優勝を飾っている。
 ちなみに4日目2Rの一般でも一戸康宏が4番手から捲って10秒9をマークしているが、その他のレースでは11秒台前半が22回、11秒台後半が20回、12秒台が1回で、同じ近畿地区の岸和田ほどではないが、まずまずのタイムの出やすいバンクといっていいだろう。
 ただコーナー部分が長いので先手ラインの番手の選手にうまく合わされると捲りは不発になりやすいので、捲りはバックを取る勢いで早めに仕掛けるのが肝心となる。直線も特に伸びるコースはなく、イエローライン付近を通っての大外強襲も少なく、脚をためての捲り追い込みは効きにくい。
 追い込みも直線は短いが、最終4コーナーでスピードを殺さずに回ることができれば直線では流れるように車が進むので、うまくコースを掴んでいけば中割り強襲で頭に突き抜けることができる。また直線の短い高速バンクなので、捲り-捲りや捲り-逃げなどの自力選手同士の決着も多い。

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