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第68回オールスター競輪 レース展望&注目選手
レース展望 2025.07.30

第68回オールスター競輪 レース展望&注目選手

#グレードレース展望

第68回オールスター競輪が函館競輪場においてナイターレースで開催される。今回からは勝ち上がり方式に変更があり、昨年まではファン投票で上位に選ばれてドリームレースとオリオン賞レースに出場する選手も含め、全員が一次予選を2走してポイントを稼がなければならず、ポイント獲得上位者が二次予選へ進出できた。しかし、今回はポイント制が廃止され、ドリーム1個レース、オリオン賞2個レースを含む一次予選は1走のみとなっている。そしてドリームで5着までに入った5名とオリオン賞で2着までに入った4名はシャイニングスター賞へ進出でき、失格しないかぎり9名全員が準決へ進み、決勝へ勝ち上がれるので6日間で4走ですむ。ところが一次予選スタートの選手は昨年までのようにシャイニングスター賞へ進むことはできず、二次予選、準々決勝、準決勝、決勝へと進むので5走しなければならない。ファンに支持されてドリームとオリオン賞に選ばれた選手たちがより優遇されるシステムとなっている。

ファン投票で選ばれしベストナインの真剣バトル

ファン投票上位のベストナインによるドリームレースは初日11Rに実施される。2年連続ファン投票第1位の古性優作と第5位の脇本雄太の近畿コンビ、第4位の郡司浩平と第7位の深谷知広の南関東コンビ、第6位の犬伏湧也、第8位の清水裕友、第9位の松浦悠士の中四国トリオの3つのラインができるが、第2位の眞杉匠と第3位の新山響平は単騎での戦いとなるだろう。人気はやはり近畿コンビとなりそうだが、3人のラインとなった犬伏が主導権取りに燃えてくれば波乱の決着も十分だ。


 古性優作は2年連続のファン投票第1位で、昨年の大会では窓場千加頼の捲りに乗って優勝しており、今年もファンの期待に応える走りを見せてくれるだろう。ただ、7月のサマーナイトフェスティバル(以下、SNF)での落車の影響が気になるし、昨年のオールスターからビッグレースの優勝を積み重ねてきた勢いにやや陰りが出てきている印象もある。そこがオフシーズンのない競輪の難しいところだが、誰よりも競輪と真摯に向き合っている古性だけに、今回もファンの期待を決して裏切らない走りで連覇を目指してくるだろう。
 ファン投票第2位の眞杉匠はSNFで関東4車結束から連覇を達成した。5月の日本選手権競輪では吉田拓矢にゴール前で交わされて準優勝だったが、SNFでは吉田の猛追を微差で振り切っての優勝だった。レース内容も佐々木悠葵の先行に乗り、太田海也に捲られると俊敏に太田の番手に切り替えての優勝と眞杉らしさを十二分に発揮した走りだった。今回も単騎戦になりそうだが、いつもどおりに混戦を待っての巧みな位置取りと捌きでチャンスを掴んでくるだろう。
 ファン投票第3位は、タイトルホルダーの仲間入りを果たしたあとも自分のスタイルを崩すことなく、徹底先行を貫いている走りが多くのファンの支持を得ている新山響平だ。ただ、近況は北日本の追い込み勢に元気がなく、ほぼ孤軍奮闘の走りを余儀なくされているために疲れがピークに達している様子。SNFでも二次予選Aで落車して途中欠場となった。それでもドリームでは5着までに入ればシャイニングスター賞に進めるので、単騎でも大ガマシの先行があるかもしれない。
 郡司浩平はSNF決勝での初手は7番手の位置取りとなり、青板バックから早めに上昇して前受けの関東ラインを押さえにいくが、太田海也の仕掛けがないと見ると元の7番手に下がってしまった。そこで脚を使ってしまい、打鐘の2センターから太田がスパートしたときにタイミングよく追走できずに5着に終わった。二次予選Aや準決では好走していただけに、決勝では別線の仕掛け待ちの消極的な走りになったのが残念だ。それでも今回も深谷知広という頼もしい仲間がいるので巻き返しが期待できるだろう。
 犬伏湧也はSNFの二次予選Aでは荒井崇博を連れて逃げるも、5番手からの深谷知広と3番手からの中野慎詞の捲りに屈して8着と敗れた。それでも初日特別選抜予選は逃げて5着だったが、清水裕友の1着に貢献、3日目特選は逃げ切りで橋本強とワンツー、4日目特選も逃げ切りで締めくくって次につながる走りができたことは収穫だったといえる。今回のドリームも強敵ぞろいだが、連携実績豊富な清水と松浦悠士の援護を信じて迷うことなく先行勝負に出てくるだろう。

古性優作 大阪 100期
眞杉匠 栃木 113期
新山響平 青森 107期
郡司浩平 神奈川 99期
犬伏湧也 徳島 119期

太田海也が自慢のスピードで難関を突破していく

 オリオン賞レースは昨年までは1個レースだったが、今回は2個レースとなってファン投票の第10位から第27位までの18名が出場し、2日目の10Rと11Rに実施される。オリオン賞では各レースで2着までに入った4名が、失格しない限り準決へフリーパスとなる3日目のシャイニングスター賞へ進出できる。ただし、2着までと権利が厳しいので、脚をためての仕掛け遅れや意外な選手の突っ込みなども考えられ、実績どおりの結果とはならない可能性も高いだろう。
 太田海也は、7月のSNF決勝では打鐘の2センターから仕掛け関東ラインを叩いて主導権を取り切ったが、清水裕友が離れてしまい、番手に眞杉匠に入られてしまったために6着に終わった。勝ち上がり戦の3日間もすべて先行して二次予選Bは松本貴治とのワンツーで2着、準決は清水裕友とのワンツーで2着と地元戦で最高のパフォーマンスを披露しており、優勝した眞杉匠よりも存在感があったといっても過言ではないだろう。もちろん今回も力を出し惜しみしない走りで難関を突破していく。
 中野慎詞はSNFでは準決で惜しくも4着と敗れたが、太田海也と同様に勝ち上がり戦では世界レベルのスピードを武器に好走している。一次予選は松谷秀幸の強襲に屈したが逃げ粘りの2着、二次予選Aは深谷知広との捲り合戦で2着、4日目特選は松井宏佑に先手を取られたが懸命に追い込んで2着だ。同地区の新山響平と同様にもう少し追い込み勢の援護があればと思ったファンも多いはずだが、もちろん今回も新山とともに北日本勢を引き連れて北日本復活の起爆剤となってくれるだろう。
 岩本俊介はSNFでは準決で敗れたが、初日特別選抜予選は1着入線の山口拳矢が失格での繰り上がりながら志田龍星-山口拳矢の中部コンビを追走して2着、2日目アルタイル賞で松井宏佑の捲りに乗り、最後は大外強襲で寺崎浩平-古性優作の近畿コンビを下して1着、4日目特選も松井宏佑の逃げ乗って1着だ。6月の高松宮記念杯競輪も準決で惜しくも3着で敗れているが好調をキープしており、今回もS級S班の名に恥じない鋭さを発揮して、5月の日本選手権以来のGⅠ優出を狙ってくる。
 寺崎浩平はSNFでは準決で佐々木悠葵に先手を取られて8着に敗れたが、初日特別選抜予選は逃げ粘りの2着で古性優作とワンツー、2日目アルタイル賞は岩本俊介の強襲に屈したが、古性が2着、寺崎は逃げ粘りの3着と、前場所の高松宮記念杯で脇本雄太を優勝に導いた勢いをしっかりキープしているのはまちがいない。SNF終了時点の獲得賞金ランキングでは7位につけており、今回も近畿の先導役を務めながらグランプリ初出場を目指して突き進んでいく。

太田海也 岡山 121期
中野慎詞 岩手 121期
岩本俊介 千葉 94期
寺崎浩平 福井 117期


ダービー王の吉田拓矢が強さを発揮する

 吉田拓矢は5月の日本選手権では眞杉匠の捲りを差し切ってダービー王に輝き、7月のSNFでも太田海也の番手から抜け出した眞杉匠に微差まで詰め寄って準優勝と、今回のオリオン賞のメンバーの中では頭ひとつ抜けた存在といってもいいだろう。SNFの2日目アルタイル賞は9着だったが、初日特別選抜予選は1着入線の山口拳矢の失格により繰り上がりながら1着、準決は佐々木悠葵の先行に乗っての1着で、眞杉匠との連携がなくともしっかりと強さを見せつけるだろう。
 浅井康太はすでにベテランの域だが今も中部のエースと活躍しており、ファン投票も第17位と人気は高い。SNFでは優出はならなかったが、予選は皿屋豊の捲りを追走して2着、二次予選Aは皿屋が7番手と後手を踏んだが最後まで諦めずに4着に突っ込み、119期の新鋭・志田龍星ともに準決までコマを進めている。SNF終了時点での獲得賞金ランキングでは8位と7年ぶりのグランプリ出場が狙える位置につけており、今回も持ち味のしぶとい走りで勝ち上がりを狙っていく。
 九州勢はSNFには17名が出場していたが、ひとりも準決まで勝ち上がれなかったのでさらなる奮起を期待したい。ファン投票でも九州勢の最高位は北津留翼で第19位だ。北津留はSNFへの出場はなく成績の波も大きいが、展開がハマったときの捲りのスピードは多くのファンを魅了し続けている。6月の久留米記念では決勝は6着だったが、一次予選はあがり10秒7の捲りで1着、二次予選も捲りの1着、準決は捲りで迫る郡司浩平を振り切っての逃げ切りと好調だ。

吉田拓矢 茨城 107期
浅井康太 三重 90期
北津留翼 福岡 90期


プレイバック 2020年 第63回大会 松浦悠士
脇本とのもがき合いを制した松浦が2度目のGⅠ優勝


 山田英明-内藤秀久の89期コンビが前受け、3番手に脇本雄太-古性優作-守澤太志の混成ライン、6番手に原田研太朗-松浦悠士-柏野智典の中四国ライン、単騎の諸橋愛が最後尾の並びで周回を重ねる。青板のバックから原田が上昇し脇本を押さえて3番手に。中四国ラインに諸橋も続いて脇本は7番手になり、その並びのまま赤板ホームを通過。先頭の山田が誘導員から3車身ほど空けて車間を切り、3番手の原田も89期コンビから5車身ほど車間を空け、7番手の脇本は実質13番手という包囲網を敷かれてしまう。そして2コーナーから原田が踏み込み、打鐘とともに山田を叩いて先行態勢に入り、すかさず脇本も猛然と巻き返してくる。最終1コーナー手前で脇本が中四国ラインに並びかけると、松浦がけん制するが脇本はそれを乗り越えて先頭に立ち、松浦も番手捲りで応戦する。そのまま外に脇本、内に松浦で壮絶なもがき合いが続くが、4コーナーで脇本をブロックした松浦が直線で抜け出して先頭でゴールイン、脇本が2着、古性が3着に入る。

ゴール
表彰

函館競輪 バンクの特徴 捲りが断然有利で、スジ違いの決着が多い


 周長は400m、最大カントは30度36分51秒、見なし直線距離は51.3m。標準的な400バンクで走路はクセがなくて走りやすい。カントもごく平均的で戦法的な有利・不利はなく、タイムも出やすい。
 2023年5月の記念開催で嘉永泰斗が4番手から捲って2度目の記念優勝を飾り、上がりタイムも10秒7とバンクレコードを更新しているが、その2か月後に開催されたSNFの2日目12Rの準決では脇本雄太が8番手から捲って10秒6とさらにバンクレコードを更新しており、そのほかにも10秒台が2度出ている。
 

ちなみにSNFの決まり手を見てみると、全27レース(同時開催のガールズケイリンフェスティバルを除く)のうち1着は逃げが2回、捲りが16回、差しが9回、2着は逃げが5回、捲りが3回、差しが11回、マークが8回となっている。
 函館は400バンクの中では見なし直線距離がやや短めなので逃げが有利とされているが、トップクラスの選手たちが集うビッグレースとなるとやはり捲りが優勢だ。また1センター側が海に近く、風の強い日は1センターから風が吹き込んでホームが向かい風、バックが追い風となるのでますます逃げは苦しくなってしまう。
 大会の最難関である2日目の準決も10Rは8番手から捲った新田祐大が1着、眞杉匠の逃げに乗った平原康多が2着、11Rは5番手から捲った松浦悠士が1着、松浦の踏み出しに遅れながらも内、外とコースを探しながら懸命に追いかけた山田英明が2着、12Rは8番手から捲った脇本雄太が1着、5車身差と大きく離されながらも捲り追い込んだ山口拳矢が2着と3個レースとも捲りが勝っている。先手ラインの選手が1着を取ったのは全27レースのうち7回しかなかった。
 もう一つ注目したいのは2着の決まり手でマークよりも差しのほうが多く、スジ違いの決着が多くなっている。


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