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第21回サマーナイトフェスティバルGⅡ展望
レース展望 2025.07.01

第21回サマーナイトフェスティバルGⅡ展望

#グレードレース展望

 第21回サマーナイトフェスティバルが玉野競輪場で開催される。昨年まではガールズケイリンフェスティバルとの同時開催だったが、ガールズケイリンフェスティバルが8月に開催予定の女子オールスター競輪と統合される形で廃止されたため今回からは男子のレースのみの開催となり、従来どおりにナイター開催で実施される。さらに昨年までは3日制だったが、今回からは1日12レースの4日制となり、2日目12 Rには初日特別選抜予選3個レースから3着までに入った選手たちによる優秀競走(アルタイル賞)が2日目に新設されており、アルタイル賞では失格にならないかぎり9名全員が準決勝に進出できる。

グランプリ出場権をかけて賞金の上積みを狙う

 6月の高松宮記念杯競輪は脇本雄太の完全優勝で幕を閉じ、年末のグランプリ出場権をかけた選手たちの戦いはいよいよ後半戦に突入する。現在グランプリ出場権を獲得しているのは吉田拓矢と脇本雄太の2人。高松宮記念杯終了時点での獲得賞金ランキングで2位の古性優作、4位の眞杉匠、5位の郡司浩平まではほぼ大丈夫そうだが、続く6位の深谷知広が5千万円台、7位の寺崎浩平、8位の新山響平、9位の浅井康太、10位の松井宏佑が4千万円台と賞金争いは熾烈だ。サマーナイトフェスティバルはGⅡなのでグランプリには直結しないが、賞金の上乗せを狙う選手たちの熱い戦いが繰り広げられるだろう。


 優勝候補の筆頭はやはり脇本雄太だろう。高松宮記念杯の4日目白虎賞では8番手から大外を捲り追い込んで上がりタイムは10秒8、準決も8番手からの捲り追い込みで11秒0と圧巻のスピードを見せつけていた。決勝も寺崎浩平の逃げに乗っての番手捲りで11秒0とさすがの古性優作も追走一杯だった。ただ脇本は現在、今後のために自在な走りを求めて試行錯誤を繰り返しており、高松宮記念杯の予選1、2は展開がうまくはまって連勝だったが、5月の日本選手権競輪では内に詰まって二次予選で破れており、今回も注意が必要だ。
 寺崎浩平は高松宮記念杯決勝では脇本雄太  -古性優作を連れて打鐘から一気にスパートし、自身は9着だったがSSコンビのワンツーに貢献した。レース後に「4コーナー勝負ができる脚力が必要」とコメントしていたが、脇本に番手捲りされて残れる選手はまず存在しないし、太田海也と深谷知広を叩いての主導権取りは称賛に値する走りだった。2月の全日本選抜競輪決勝では捲りで2着に粘り脇本とワンツーとタイトルを取れる力はまちがいなくあるはずで、今回こそはビッグレース初制覇に期待してみたい。
 郡司浩平は高松宮記念杯でようやく今年初のGⅠ優出を決めたが、近畿ラインのベストタイミングの仕掛けに大きく遅れをとってしまい3着が精一杯だった。それでも準決は目標の松井宏佑が内に詰まる苦しい展開から最後の直線で中コースを伸びて2着、4日目青龍賞では松井宏佑の逃げに乗り、捲ってきた吉田拓矢をブロックして止めてから直線抜け出して1着と今年一番といっていいほどの万全の状態だった。今年のグランプリは平塚での開催なので、南関東のリーダーとして後半戦も力強い走りで駆け抜けていくだろう。
 松井宏佑は高松宮記念杯の予選1では8番手から捲って上がりタイムは驚きの10秒6をマーク、予選2も7番手から捲り後続に9車身差をつけて圧勝、4日目青龍賞は郡司浩平を連れて逃げて郡司の1着に貢献した。しかし、準決では吉田拓矢と並走となって内に詰まってしまい、やはり勝負師としての意地があったのか、徹底的にやりあった末に9着に終わってしまった。それでも気落ちすることなく6日目特選では逃げ切って3勝目を挙げており、もちろん今回も優勝を目指して力走してくれるだろう。

脇本雄太 福井 94期
寺崎浩平 福井 117期
郡司浩平 神奈川 99期
松井宏佑 神奈川 113期


地元戦で太田海也がさらなる進化を遂げる


 今回の一番の注目選手は地元戦で必勝を期してくる太田海也だ。高松宮記念杯の予選1は捲りで1着、予選2は逃げ切り、4日目白虎賞は脇本雄太に捲られるも3着、準決も脇本に捲られたが逃げ粘りの2着と、ナショナルチームで鍛えたスピードを遺憾なく発揮して、2023年の競輪祭以来、2度目のGI優出を決めた。決勝は前受けから深谷知広の反撃を突っ張きるも一瞬緩んだところを近畿ラインに叩かれて6着に終わったが、敗戦から学んだことは多かったはずで、さらなる進化を遂げた走りをきっと見せてくれるだろう。
 清水裕友が復調してきた。高松宮記念杯の予選1は捲りの1着で10秒9の上がりタイムをマーク、予選2は逃げ粘りの2着で小倉竜二とワンツー、4日目白虎賞と準決は太田海也との連携で2着と3着で、今年初のGⅠ優出を決めた。白虎賞では太田の踏み出しに離れるシーンもあったが、懸命に追い上げて2着と意地を見せている。本来は夏場を苦手としている清水だが、連日の猛暑の中、5日間連続で戦い抜いてまずまずの成績を挙げられたのが自信になっているはずで、今回も暑さに負けない力走で勝ち上がりを狙う。
 犬伏湧也は高松宮記念杯の予選1は逃げ粘りの2着、予選2は捲りの2着と順調に勝ち上がったが、4日目白虎賞は9着、準決も大敗した。白虎賞は太田海也に叩かれてずるずると後退、準決は寺崎浩平に叩かれると4番手からすかさず巻き返しにいくが、古性優作のブロック一発であっけなく後退している。脚力的には上位陣と比べて決して遜色ないはずだが、気持ちで負けている印象だ。それでも6日目特選では心折れることなく逃げ切って勝ち星を挙げており、今回こそは犬伏らしいパワー溢れる走りを期待したい。
 新山響平は高松宮記念杯の予選2ではいつもどおりの前受けから吉田有希の巻き返しを突っ張りきって逃げ切っているが、二次予選では打鐘から前団を叩きにいったときに守澤太志が離れて裸逃げとなり4着に敗れている。それでも5日目特選は成田和也の援護もあり逃げ切って意地を見せているが、車の伸びが重い印象で調子は思わしくなく、6日目特秀は凡走して3着に終わっている。獲得賞金ランキングも8位と厳しい状況の上に、北日本の追い込み勢も近況元気がないだけに、どこまで立て直してこられるかに注目したい。

太田海也 岡山 121期
清水裕友 山口 105期
犬伏湧也 徳島 119期
新山響平 青森 107期

昨年覇者の眞杉匠率いる関東勢が巻き返す

 関東は日本選手権で吉田拓矢と眞杉匠がワンツーを決めて近畿一強の流れを止め、これで勢いに乗るかと思われたが、高松宮記念杯での関東勢の優出は1人だけだった。しかし、昨年も日本選手権で5人が優出して平原康多が優勝するも高松宮記念杯での優出は1人に。それでもサマーナイトフェスティバルでは眞杉匠が優勝しているので、今年も関東勢の一発は侮れない。高松宮記念杯での眞杉匠と吉田拓矢は、ともに準決で敗れているが、それぞれ1着2回、2着1回と決して調子は悪くない。


 浅井康太は高松宮記念杯では勝ち星がなかったが、相変わらずそつのない立ち回りで準決進出と好調だ。予選1では目標の山口拳矢が清水裕友に捲られたが、外にかぶっていた近畿コンビをどかしてから中四国コンビを追いかけて3着、二次予選は最終バックで8番手と後手を踏んだが、インに切り込んでからコースを探しながらイエローラインよりを伸びて3着だ。獲得賞金ランキングでは9位につけており、今回もベテランらしい走りで賞金を積み重ねて8年ぶりのグランプリ出場を目指してくる。
 高松宮記念杯では九州勢から山田庸平、松岡貴久、荒井崇博、園田匠の4人が準決まで勝ち上がったが、残念ながら決勝進出はいなかった。それでも山田庸平は予選1では6番手から捲り追い込んでゴール前では犬伏湧也の捲りを交わして1着、6日目特選では嘉永泰斗の逃げに乗って1着と相変わらずの鋭さを発揮していた。荒井崇博も予選2では目標の松岡辰泰が不発と見ると7番手から自力に転じ、大外を捲り追い込んで1着、準決は近畿コンビを追走しての3着と惜敗しており、今回も個性豊かな九州勢の活躍が楽しみだ。

眞杉匠 栃木 113期
浅井康太 三重 90期
山田庸平 佐賀 94期


2024年 第20回大会 眞杉匠
眞杉匠が3番手から近畿コンビを捲り切って初優勝

 脇本雄太-古性優作の近畿コンビが前受け、3番手に眞杉匠-吉田拓矢の関東コンビ、5番手に単騎の山口拳矢、6番手に北井佑季-郡司浩平-松谷秀幸の神奈川トリオ、最後尾に単騎の新田祐大の並びで周回を重ねる。青板過ぎから北井が上昇を開始、バック手前で4番手の外まで上がってくると、それを見ていた脇本も誘導との車間を空けて臨戦態勢に入り、誘導員が退避すると脇本が突っ張る構えを見せて両者の先行争いとなる。しかし、脇本はすぐに車を引いて北井の番手に収まったところで打鐘を迎える。そこへ北井の番手を取り返そうと郡司が追い上げてくるが、古性から二度、三度とブロックを受け、さらには眞杉にも捌かれて郡司は後退していく。北井は後続のもつれも構わずに懸命に逃げて最終ホームを先頭で通過するが、そこから脇本がスパートして1コーナーで北井を交わして先頭に立つ。ところが、近畿コンビの後ろから捲り上げた眞杉がバックでの古性の牽制を乗り越え、最後の直線で捲り切ってそのまま先頭でゴールイン、吉田が2着、関東コンビを追ってきた新田が3着に入る。




直線は短いが、スピードに乗りやすく捲りが有利


 周長は400m、最大カントは30度37分33秒、見なし直線距離は47.9m。400バンクの中では佐世保競輪場に次いで、2番目に見なし直線距離が短く円形に近いバンクだが、走路はクセがなくて走りすい。ただ瀬戸内海が近くて風の影響を受けやすく、風のある日はバックストレッチ側が向かい風になるので直線が短くても先行有利とはならない。
 2022年7月に開催されたサマーナイトフェスティバルの決まり手を見てみると、全27レース(同時開催のガールズケイリンフェスティバルを除く)のうち1着は逃げが3回、捲りが9回、差しが15回、2着は逃げが3回、捲りが10回、差しが7回、マークが7回となっている。やはり逃げは苦しく連絡みが6回しかなく、先手ラインの選手が1着を取った回数も全体の3分の1の9回だけだった。
 大会のベストタイムは10秒8。3日間で3回出ているが、初日7Rの予選では岩本俊介が4番手から捲り、後続に5車身差をつけて圧勝している。3日目3Rの一般では佐々木豪が最終3角7番手から大外を捲り追い込んで10秒8、3日目8Rの特選では中川誠一郎が8番手からの捲り追い込みで10秒8だ。そのほかにも11秒台前半のタイムが15回出ており、400バンクとしてのカントは普通だが、スピードに乗りやすいバンクとなっている。
 それで苦しいのは追い込み選手だ。先手ラインで番手絶好の展開になっても、スピードに乗った選手たちが後ろから次々と襲ってきて最後の直線では4車、5車と横並びのせめぎ合いとなるパターンが多いので、番手絶好で余裕をかましていると勝ちきれない。ゴール前で横並びの展開になってしまうと3番手や4番手にいる選手はコースが空かないので抜け出せないし、番手の選手も2段駆けの要領で自力発進できるぐらいのタテ脚を持っていないと厳しい。
 ちなみに決勝戦では犬伏湧也の逃げに乗った松浦悠士が捲ってきた岩本俊介に合わせて番手から発進して先頭でゴールイン、岩本が4分の1車輪差で2着、逃げた犬伏は6着だった。


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