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第79回日本選手権競輪展望
レース展望 2025.04.09

第79回日本選手権競輪展望

#グレードレース展望

 6大会のGIの中でも最高の格式を誇るレースである第79回日本選手権競輪が名古屋競輪場で開催される。3月のウィナーズカップでは古性優作が優勝と近畿一強の流れは一向に止む気配がなく、もちろん今回も古性率いる近畿勢が断然の中心となるが、決勝に3人が乗りながら不発に終わった南関東勢の巻き返しは必至だ。孤軍奮闘ながらも決勝までコマを進めた新山響平の先行力もやはり強力で、同じく決勝までコマを進めた浅井康太の地元地区での活躍にも期待したい。

古性優作のGⅡ初優勝で近畿がますます勢いづく

古性優作(大阪 100期)

 競輪界はスピード自慢の若手選手たちが次々登場してきて漢字の「競輪」からカタカナの「ケイリン」に変わってきたと言われて久しいが、現在の近畿一強の流れを見ると競輪はやはりスピードよりもラインの結束力が重要だということがよくわかる。3月のウィナーズカップの決勝も寺崎浩平にタテヨコなんでもできる古性優作が続くラインはあまりにも強力で、先行日本一の新山響平も捲り鋭い眞杉匠も近畿ラインを打ち破ることはできなかった。今回も近畿ラインが断然の中心で、他地区の選手たちがいかに近畿ラインに立ち向かっていくかが見どころになるだろう。
 グランプリ2回、GI優勝8回の経験がある古性優作がウィナーズカップでGⅡ初優勝を達成した。3番手から捲り上げた寺崎浩平を追走していた古性は後方から迫ってきた眞杉匠をブロック一発で止めると、そのまま先行する新山響平と浅井康太を抜き去って先頭でゴールインと漢字の「競輪」の醍醐味を凝縮したような素晴らしい走りだった。昨年のグランプリ覇者の古性は常に最内枠から位置取りができるのが近畿ラインにとっては有利で、輪界最強の古性が番手を回る近畿ラインの猛攻は今後も続いていくだろう。

寺崎浩平(福井 117期)

 寺崎浩平はウィナーズカップ決勝では8着に終わったが、勝ち上がり戦は連日の強い走りで存在感を示した。初日特別選抜予選は最終ホーム8番手からの捲りで1着で古性優作とワンツー。2日目毘沙門天賞も最終ホーム8番手からの捲りで古性とワンツー。準決は最終2角7番手からの捲りで2着に届いている。決勝は打鐘から逃げる新山響平を叩きにいって力尽きたが、決勝も得意の捲りに構えていればワンチャンスがあったのではないかと思わせる出来の良さで、今回も優勝候補の一角に名を連ねてくるだろう。

浅井康太(三重 90期)

 浅井康太は2月に豊橋で開催された全日本選抜では準決で敗れたが、ウィナーズカップで優出と好調で、今回も全日本選抜に続いての地元地区でのGI開催だけに今度こその優出を目指しているだろう。ウィナーズカップでは二次予選が中野慎詞の番手を奪った纐纈洸翔の番手捲りに乗って2着、準決も纐纈の逃げに乗り深谷知広―郡司浩平の南関東コンビに捲られながらも3着に入っている。今回も纐纈洸翔、藤井侑吾、志田龍星、山口拳矢らの若手機動力型を目標に地元勢の活躍が期待できるだろう。

新山響平が日本一の先行力を見せつける

新山響平(青森 107期)

 新山響平は3月のウィナーズカップ決勝は3着に終わったが、あの強豪ぞろいを相手に先行して粘りに粘っての3着なのだから、9人の中で新山が一番強かったと言っても過言ではないだろう。即席ラインを組んだ浅井康太がツキバテしたのは残念だったが、あの新山の強い走りを見れば北日本の追い込み勢はきっと発奮してくれるだろう。直前の名古屋記念では決勝4着だったが、二次予選と準決は大槻寛徳とのタッグで逃げ切っており名古屋バンクとの相性もいいので、今回も先行日本一の走りを見せてくれるだろう。

中野慎詞(岩手 121期)

 ナショナルチームの中野慎詞は世界レベルのスピードでの活躍が期待されていたが、ウィナーズカップでは二次予選敗退となり、勝ち星も3日目特選の逃げ切りのみだった。同じナショナルチームの太田海也も1着2回、2着1回のまずまずの成績だったがやはり二次予選敗退となっており、スピードだけでは勝てない競輪の奥深さを思い知らされる結果となった。それでも中野も太田もウィナーズカップのあとも競輪を2場所走って今回に臨んでくるので、競輪での走りの勘を取り戻しての活躍に期待したい。

眞杉匠(栃木 113期)

 眞杉匠はウィナーズカップ決勝では単騎戦で、勝負どころの打鐘では大きく離された9番手と完全に組み立てに失敗したかと思われたが、最終ホームから猛然と巻き返すとアッという間に前団に迫り、古性優作にきついブロックを受けながらもすぐに立て直して2着に突っ込んでいる。優勝に届かなかったのは残念だが、そのスピードは驚異的と言ってもいいほどた。勝ち上がり戦も3日間とも3着だったが、3日間ともバック取りと体が自然に反応している様子で絶好調と言ってよく、今回も自慢のスピードで優勝を取りにいく。

吉田拓矢(茨城 107期)

 吉田拓矢は2月の全日本選抜決勝では突っ張り先行の眞杉匠の番手で、3番手から仕掛けた古性優作に合わせて番手捲りを打つも寺崎浩平―脇本雄太の福井コンビに捲られて4着と悔し涙を飲んだ。ウィナーズカップの出場はなかったが、3月の玉野記念では単騎捲りで7度目の記念優勝を達成と引き続き好調で、打倒近畿を狙ってくる。昨年の日本選手権では関東勢から4人が優出し吉田の逃げ乗った平原康多が復活優勝を遂げており、今回も眞杉匠や坂井洋らとともに関東の結束力を見せつけてくれるだろう。

近畿には負けない結束力で南関東が巻き返す

郡司浩平(神奈川 99期)

 郡司浩平は3月の名古屋記念では深谷知広の前回りを選択、新山響平の逃げを捲り切って番手から伸びた深谷が1着、郡司が2着とワンツーを決めている。それもあってかウィナーズカップ決勝でも地元地区の深谷を立てて郡司が前回りとなったが、さすがに対戦メンバーがランクアップしているGⅡの決勝では同じ手は通用しなかった。それでも南関東からは3人が優出と地区に勢いがあるのは確かだし、名古屋記念で連日強い走りを見せていた郡司はバンクとの相性もよく、今回こそは同じ轍を踏まない走りで優勝を狙ってくる。

深谷知広(静岡 96期)

 深谷知広も名古屋記念を優勝しているのでもちろん好調でバンクとの相性もいい。名古屋では準決は逃げて2着だったが、初日特選は郡司浩平の逃げに乗って郡司とワンツー。二次予選は逃げ切りで決勝も1着だ。ウィナーズカップでは勝ち星はなかったが、二次予選は逃げて2着、準決は捲って2着で番手を回った郡司が1着だ。2月の元ホームバンクの豊橋で開催された全日本選抜では地元ファンから連日大声援を受けていたが、今回も深谷を愛する中部地区のファンの期待に応えるパワフルな走りを見せてくれるだろう。

犬伏湧也(徳島 119期)

 中四国勢は清水裕友と松浦悠士のかつてのゴールデンコンビが不振から抜け出せず厳しい状況が続いており、4月1日からS級S班の犬伏湧也の責任は重大だ。もちろん本人も突然のS班に戸惑いがあるかもしれないが、ベストナインの自覚を持って中四国勢を引っ張っていってもらいたい。全日本選抜では準決で敗れたが二次予選では捲り、4日目特選では逃げ切りで2勝をマーク、ウィナーズカップも準決で敗れたが二次予選では逃げ切りと調子も悪くはない。

山田庸平(佐賀 94期)

 九州勢では山田庸平が復調気配だ。全日本選抜では二次予選敗退で4日間未勝利と散々な結果だったが、3月の玉野記念で準優勝してから上昇モードに入った。ウィナーズカップも残念ながら準決で敗れたが、一次予選が捲り。二次予選が伊藤楓馬の逃げに乗っての追い込み。4日目特選が捲りで3勝を挙げている。九州はいい意味で個性的な選手が多いのでラインの結束力はいまいちの印象があるが、個々の能力は決して劣ってはいないので、うまく流れに乗れば格上相手のレースでも十分に一発が期待できるので軽視はできない。

2019年 第73回大会 脇本雄太
脇本雄太が8番手捲りで完全優勝を達成


 脇本雄太―古性優作の近畿コンビが前受け、3番手に清水裕友―松浦悠士―原田研太朗の中四国トリオ、単騎の菅田壱道が続き、7番手に渡邉雄太―田中晴基の南関東コンビ、単騎の深谷知広が最後尾の並びで周回を重ねる。青板1センターから渡邉が上昇すると脇本はすんなり引き、バックで渡邉が先頭に立つ。中四国トリオ、菅田、深谷の順で南関東コンビに切り替えていき、脇本は8番手となる。渡邉はしきりに後ろを警戒しながら徐々に先行態勢に入っていくが、深谷が内をすくって上昇し、南関東コンビの後ろに収まって清水が4番手になったところで打鐘を迎える。渡邉がペースを上げて先行勝負に出ると、深谷がすかさず捲っていくが田中にブロックされる。同時に最終ホームから脇本が捲っていき、外のもつれを見た菅田が内に切り込んでいく。脇本の反撃に合わせて清水も捲り、2センターで捲り切るが、背後に脇本が迫ってくる。最後の直線では清水と脇本のマッチレースとなり、ゴール前で脇本が清水を捕らえて先頭でゴールイン、清水が2着、菅田が3着。

バンクの特徴 どんな戦法の選手でも活躍できる高速バンク

 周長は400m、最大カントは34度01分47秒、見なし直線は58.8m。名古屋は走りやすさとスピードの出やすさを求めて設計されたバンクで、選手間でも日本一走りやすいとの声が多い。カントはややきつめだか、コーナーが流れるので自力選手にも追い込み選手にも走りやすく、どんな戦法でも存分に力を発揮できるバンクとなっている。
 バンクレコードはオーストラリアのシェーン・パーキンスが2013年9月に叩き出したした10秒4だが、2020年9月に開催されたオールスターではバンクレコードタイが2度出ている。4日目12Rの準決では新山響平の逃げを3番手から捲った脇本雄太の上がりタイムが10秒4。5日目3Rの選抜では最終バック8番手から捲った渡邉一成が10秒4をマークしている。とにかくスピードに乗りやすいので、仕掛けのタイミングさえまちがえなければ後方の7、8番手からでも捲り切れてしまう高速バンクだ。
 2020年のオールスターでは全54レース(ガールズ2個レースを除く)のうち10秒台の上がりタイムが11回、11秒台前半のタイムが36回、11秒後半のタイムが7回となっている。
 ちなみに1着、2着の決まり手を見てみると、全54レースのうち1着は逃げが6回、捲りが21回、差しが27回、2着は逃げが8回、捲りが7回、差しが18回、マークが21回となっている。やはり高速バンクだけに捲りが優勢だが、先手ラインの選手が1着を取った回数が24 回と先行選手もかなり健闘している。4日目3Rの選抜では河端朋之が最終ホームからの突っ張り先行で逃げ切って上がりタイムは10秒9。5日目選抜では新山響平が最終ホームから前団を叩いて逃げ切り上がりタイムはやはり10秒9をマークしており、スピードのある選手なら戦法に関係なく活躍できることがわかる。
 なお決勝戦では原田研太朗の逃げに乗った松浦悠士が番手捲りを打ち、捲ってきた脇本雄太とのもがき合いを制して優勝している。


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