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第20回サマーナイトフェスティバル(GII)展望
レース展望 2024.06.26

第20回サマーナイトフェスティバル(GII)展望

#グレードレース展望

 第20回サマーナイトフェスティバルが松戸競輪場で開催される。6月の高松宮記念杯で念願のGI初優勝を達成した北井佑季をはじめとする南関東勢が今回も中心となりそうだが、古性優作率いる近畿勢や平原康多率いる関東勢も強力で、近況やや低調ながらもサマーナイト4連覇の偉業がかかる松浦悠士と清水裕友の中国コンビの動向からも目が離せない。

GI初制覇の北井佑季が南関東勢を引っ張る


 今年も前半戦が終わり2月の全日本選抜では郡司浩平が優勝、5月の日本選手権では平原康多が優勝とS級S班への返り咲きが続き、6月の高松宮記念杯では北井佑季がGI初優勝を飾り、これで来年度のS級S班は3名の入れ替えが確定した。獲得賞金ランキングを見るとすでに1億円を突破している2位の古性優作、7千万台円で4位の清水裕友は今年もグランプリ出場は大丈夫そうだが、7位の脇本雄太、10位の深谷知広、13位の新山響平らは油断できない状況だ。今回のサマーナイトフェスティバルはGIIなのでグランプリには直結しないが、賞金の上乗せを狙ってトップレーサーたちが熱いバトルを繰り広げるだろう。


 北井佑季は2月の全日本選抜では郡司浩平の復活優勝に貢献したが、そのお返しとばかりに高松宮記念杯決勝では郡司が北井を連れて突っ張り先行を敢行、北井は見事にGI初優勝を飾った。準決でも松井宏祐が北井を連れて逃げて北井の1着に貢献と、これまで南関東勢を力の限り引っ張ってきた北井にGIを取らせたいという南関東勢の熱い思いが伝わる大会となった。もちろん後半戦は年末に静岡で開催されるグランプリに1人でも多くの仲間を送るために北井が死力を尽くして南関東勢を引っ張っていくだろう。
 岩本俊介は今年4月に40歳を迎えたが、40歳にしていきなり覚醒してしまった。これまでGIIでは4回の優出があったが、4月の日本選手権では怒涛の3連勝でGI初優出を決めると決勝も2着と大活躍だった。高松宮記念杯では二次予選手で落車して途中欠場となったのは残念だったが、一次予選1が2着、一次予選2が3着とトップクラスが相手でも決して力負けしないことを改めて証明してみせた。賞金獲得ランキングは6位とグランプリ初出場も濃厚で、今回も地元の千葉の大会でファンの大歓声を受けることになるだろう。
 北日本はかつての勢いを取り戻すことができず、全日本選抜での優出は新山響平のみ、3月のウィナーズカッブと日本選手権はゼロ、高松宮記念杯はやはり新山のみだった。それでも新山は一次予選1が逃げ切りで守澤太志とワンツー、一次予選も逃げ切りで成田和也とワンツーと抜群の走りを見せており、追い込み勢がもう少し頑張ってくれればと思っているファンが多いだろう。決勝は6着だったが桑原大志との即席ラインでもしっかり見せ場をつくっていたし、今回も自慢の先行力を十二分に発揮してくれるだろう。

北井佑季 神奈川 119期
岩本俊介 千葉 94期
新山響平 青森 107期

 

輪界最強の男・古性優作が今度こその優勝を狙う


 古性優作は6月の高松宮記念杯では期待されていた3連覇はならなかったが、決勝では目標の脇本雄太が不発の苦しい展開から内へ内へと切り込んで3着に突っ込んだ走りはさすがとしか言いようがない。一次予選1は捲って南修二とワンツーだったが、一次予選2は窓場千加頼の逃げに乗って1着、準決は寺崎浩平の逃げに乗って1着と現在の近畿には頼れる先行選手が目白押しなのも古性にとっては好材料だ。今回も輪界随一の自在選手である古性が近畿の仲間たちとともに最高のパフォーマンスを披露してくれるだろう。
 脇本雄太は高松宮記念杯決勝は不発に終わったが、一次予選2では打鐘から前団を叩きにいって主導権を取り切り、山田久徳ー山本伸一の2車を引き連れての逃げ切り、4日目白虎賞は寺崎浩平の逃げに乗っての番手捲りで1着、準決は逃げ切りで南修二とワンツーで欠場明けながら持病の腰痛の影響はなさそうだった。昨年のサマーナイトフェスティバルは即席ラインの松浦悠士にゴール前で交わされて準優勝だったが、今年は腰痛の再発さえなければ短走路が舞台だけに逃げ切り優勝が十分に狙えるだろう。
 松浦悠士は昨年のサマーナイトフェスティバルでは中四国からただひとり優出したが、同じく近畿からただひとり優出の脇本雄太の番手を主張、脇本雄太の逃げをゴール前で交わして3連覇を達成している。今回は4連覇の偉業がかかるが、高松宮記念杯では二次予選敗退と近況は低空飛行が続いているのが不安材料だ、盟友の清水裕友も高松宮記念杯では準決敗退とやや調子落ちの気配だが、それでも二次予選では逃げて桑原大志とワンツーを決めており、今回はゴールデンコンビと呼ばれていた2人の復活に期待してみたい。
 中四国勢に朗報なのは犬伏湧也の復調だ。一時期はタイトルに最も近い男のひとりと目されていたが、昨年11月の競輪祭で一気に失速した。今年も全日本選抜とウィナーズカッブでは準決で9着敗退、日本選手権では二次予選で9着敗退と大事なシーンで仕掛けられない病にかかってしまった。しかし、高松宮記念杯では準決で惜しくも3着と敗れたが、一次予選の1と2は逃げて松浦悠士と小倉竜二の1着に貢献、二次予選は堂々と逃げ切っており、今回も積極性の戻った走りで中四国勢を引っ張っていくだろう。

古性優作 大阪 100期
脇本雄太 福井 94期
松浦悠士 広島 98期
犬伏湧也 徳島 119期


小林泰正が3大会連続のビッグレース優出を目指す

 関東は5月の日本選手権では大挙5人が優出して平原康多が復活優勝を遂げたが、残念ながらその勢いは続かなかった。6月の高松宮記念杯では関東からの優出は1人だけに終わり、今回は総大将の平原康多の出場がないのでS級S班の眞杉匠の責任は重大だ。高松宮記念杯の一次予選1は逃げて3着、一次予選2は逃げ切りと調子は悪くないが、仕掛けのタイミングがワンテンポ遅い印象で準決ではわかっていながら南関東勢の2段駆けを許しており、2冠に輝いた昨年のような積極的な仕掛けを期待したい。
 小林泰正は日本選手権では1、1、2着の勝ち上がりでGI初優出を達成、6月の地元前橋記念ではあっぱれの完全優勝、高松宮記念杯でも優出と急上昇中だ。高松宮記念杯の二次予選は捲って2着、準決は小林-諸橋愛と眞杉匠-平原康多-宿口陽一で別線だったが、小林は南関東コンビの3番手をうまく取り切って2着に入っている。単騎戦となった決勝でも勝負どころでうまく南関東トリオの4番手に収まったがゴール前で古性優作に突っ込まれて4着に終わっており、今回こそは決勝戦での確定板入りを狙ってくる。
 高松宮記念杯での中部勢は山口拳矢は二次予選で敗退したが、浅井康太は準決まで勝ち上がっている。一次予選1では3度目のビッグレース出場ながらも連日好走した藤井侑吾の捲りを差して1着、藤井が2着でワンツー、二次予選は目標の山口拳矢が後手を踏んでの7番手と苦しい展開だったが、浅井は8番手から懸命に捲り上げると最後の直線では中コースを伸びて3着とさすがの走りを見せている。準決は再び藤井侑吾との連係ながら5着に敗れているが、今回もベテランの技で苦しい展開を乗り越えながら勝ち上がっていく。
 九州勢は高松宮記念杯では北津留翼、荒井崇博、野田源一のベテラン3人が準決まで勝ち上がったが、西日本の準決は2個レースとも近畿勢が強力すぎて九州勢は優出できなかった。それでも北津留は一次予選2が捲って2着、二次予選が追い込みで1着と好走しており、短走路の松戸は北津留向きとは言えないが今の調子なら今回も活躍が期待できるだろう。山崎賢人の参戦も頼もしく、パリ五輪出場はならなかったがナショナルチームで鍛え抜いた豪脚で九州勢を引っ張っていってくれるだろう。

眞杉匠 栃木 113期
小林泰正 群馬 113期
浅井康太 三重 90期
北津留翼 福岡 90期




プレイバック 第19回サマーナイトフェスティバル
脇本雄太を目標に松浦悠士が3連覇を達成


 佐々木悠葵-平原康多-神山拓弥の関東勢が前受け、新田祐大、松井宏祐、山口拳矢の単騎3車が続き、7番手に脇本雄太-松浦悠士-山田英明の即席ラインで周回を重ねる。そのまま赤板まで動きはなく、赤板過ぎの2コーナーからようやく脇本が上昇を始める。同時に振り返って脇本の上昇を認めた佐々木が誘導を下ろしてペースを上げ突っ張る構えを見せる。脇本が4番手の新田の横まで上がってきたところで打鐘を迎え、脇本はいったん新田を押し込んでから一気にペースを上げ前団に襲いかかる。そのとき松井が山田を捌いて脇本-松浦の3番手に収まる。佐々木は必死に抵抗するが、脇本が最終ホームで佐々木を捕らえ、脇本-松浦-松井の3車が完全に出切り、佐々木は後退して4番手に平原が続く。7番手まで下がっていた新田が最終2コーナーから捲っていき、山田と山口が新田を追うが、新田の捲りは4番手の横までで完全に前3車の争いとなり、ゴール前で脇本を交わした松浦が優勝、2着に脇本、3着に松井が入る。

バンクの特徴
先行有利が基本だが、最後は力勝負の決着になりやすい


 周長は333m、最大カントは29度44分42秒、見なし直線距離は38.2m。松戸は周長333mの短走路で見なし直線距離も全国44場の中では小田原、奈良に次いで3番目に短く、カントも333バンクの中では最も短いので先手ライン有利が基本となっている。
 しかし、トップスターが揃うビッグレースではやはり基本どおりにはいかない。18年7月に開催されたサマーナイトフェスティバルの決まり手を見てみると、全27レース(同時開催のガールズケイリンフェスティバル9個レースを除く)のうち1着は逃げが5回、捲りが11回、差しが11回、2着は逃げが4回、捲りが5回、差しが11回、マークが7回となっている。
 さすがに短走路だけあって他のビッグレースと比べると逃げがかなり健闘しているが、トップクラスの選手たちはバンクの特性を圧倒的なパワーでねじ伏せてくるので、カントが緩めでも捲りのほうが優勢だし、最後の直線が短めでも大外を捲り追い込んで頭に突き抜けてくる。
 2日目10Rの準決では深谷知広が鈴木竜士を叩いて先行、叩かれた鈴木は深谷の番手で粘り、隊列が短くなったところで渡邉一成が一気にカマしてくるが、佐藤慎太郎が離れて渡邉の番手に深谷がすっぽりハマる。これで深谷に絶好の展開となったが、最終4角5番手からイエローライン上を追い込んできた古性優作が突き抜けて1着、深谷が2着、逃げ粘った渡邉が3着だった。短走路らしい展開が目まぐるしく変わるレースだったが、結局最後は点と点の力勝負で決まっている。
 もちろん短走路なので最終的に主導権を取りそうなラインから狙っていくのが定石だが、トップクラスが集うビッグレースでは最後にモノを言うのは選手個人の調子とパワーであることを忘れてはいけない。18年の大会では先手ラインの選手が1着を取れた回数は8回で、ラインの選手同士で決着したスジ車券も8回しかなかった。

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