第8回ウィナーズカップが取手競輪場で開催される。格付けはGIIながらS級S班9名を始めとするトップスターたちが勢揃いの熱き戦いだ。年頭からのスタートダッシュに成功して記念優勝が2回、2月の全日本選抜では準優勝と絶好調の清水裕友が今大会も中心となりそうだが、GI初優出で3着と健闘した北井佑季の先行力や地元関東勢の巻き返しにも注目が集まる。
清水と松浦の中国コンビがウィナーズ5連覇へ
ナショナルチームに属する選手たちが次々と台頭して、競輪は個々のスピードを重視する競走形態へと変わってきていたが、2月の全日本選抜では神奈川3車の鉄壁のラインから郡司浩平が優勝と改めてラインの強さを思い知らされる結果となった。対戦相手がやや落ちる勝ち上がり戦ならば自慢のスピードで突破できても、ビッグレースの決勝となるとどんなに強い選手でもやはりラインの助けは不可欠で、今回も近況勢いのある地区の選手や、若手自力選手が果敢な走りを見せてくれるラインに注目していきたい。
清水裕友は1月の大宮記念で5人揃った地元埼玉ラインを6番手から捲って今年初優勝、2月の静岡記念では郡司浩平の逃げに乗って番手捲りを打った深谷知広をゴール前で交わして優勝している。しかし、1月の川崎記念では南関東ラインの3番手を奪うも番手から発進した郡司浩平を交わせずに2着、2月の全日本選抜も郡司に続いての2着とラインの力に勝てなかった。それでもKEIRINグランプリ覇者である松浦悠士も調子を上げてきているだけに、今度こそは別線にも負けないラインの力で今年初のビッグ優勝をもぎとってくるだろう。
ウィナーズカップは第4回が松浦悠士、第5回と第6回が清水裕友、昨年の第7回が松浦悠士と中国コンビで4連覇している。清水が今絶好調で、松浦も全日本選抜では優出を逃したが次場所の高松記念では3連勝の勝ち上がりで準優勝と調子は悪くないだけに中国コンビでの5連覇も十分にありえるだろう。高松記念での松浦は初日特選と二次予選が犬伏湧也、準決と決勝が町田太我の逃げを目標のレースだったが、今回も中四国の目標に事欠くことはないので、勝ち上がりに失敗することはまずないだろう。
北井佑季は全日本選抜の一次予選は逃げ切りで和田健太郎とワンツー、二次予選は捲りの1着で郡司浩平が2着、準決では主導権争いで脇本雄太ともがき合い、脇本に先手を取られながらも脇本の番手にすっぽりハマるとゴール前で鮮やかに差し切って1着と驚異のスタミナを見せつけた。決勝も新山響平の番手にハマったときに勝てると思ったかもしれないが、そこはやはり経験値の差で3着に終わった。それでもGI初決勝で3着は大健闘であり、今回もパワフルな走りでビッグ初優勝を目指す。
深谷知広は2月の地元静岡記念では初日特選が松井宏佑の逃げに乗っての番手捲りで1着、二次予選も渡邉雄太の逃げに乗って1着、準決も郡司浩平の捲りに乗って1着だったが、決勝も郡司が逃げてくれたにもかかわらず2着と完全優勝はならなかった。それで心が少し折れたのか、全日本選抜は準決で5着と敗れたが、初日特選予選は松井宏佑の逃げに乗って1着、4日目特別優秀は逃げて3着と調子は悪くない。今回も南関東の仲間たちとともに助け、助けられの精神で力強い走りを見せてくれるだろう。
古性優作が名誉挽回の走りで優勝を狙う
古性優作は2月の全日本選抜の3連覇はならなかったが、しっかり優出を果たしてさすがの安定ぶりを見せつけた。準決では南関東ラインを分断し松井宏佑の番手を郡司浩平から奪って南修二とワンツーを決めている。しかし、決勝では2日続けての分断策にはためらいがあったのか、先に清水裕友が仕掛けて展開が乱れるのを待つという消極的な走りになってしまい4着に終わっている。もちろん今や輪界最強の男と呼ばれる古性が同じ過ちを繰り返すはずはなく、今回は攻めの姿勢で名誉挽回の走りを見せてくれるだろう。
脇本雄太は全日本選抜では準決で4着と敗れたが、主導権争いで北井佑季ともがき合い、番手に入った北井にゴール前で交わされたのだから致し方ない敗北だったといえる。次場所の奈良記念でも決勝は7人乗った近畿勢が3つのラインに別れ、脇本は古性優作ともがき合って9着に終わっている。それでも初日特選は新山響平の逃げを8番手から捲って1着、二次予選も7番手からの捲りで番手追走の南修二を5車身引き離す独走劇、準決は逃げ切りで三谷竜生とワンツーと8割方戻ってきていると見ていいだろう。
新山響平は全日本選抜では北日本勢からただひとり優出、決勝ではいつもどおりに最終ホームで南関東ラインを叩いて主導権を取ったが、即席ラインの浅井康太が離れてしまい、番手に北井佑季に入られて格好の目標になっただけに終わった。やはりどんなに強い選手でもラインの援護がなければGIの決勝で勝ち切るのは難しい。次場所の奈良記念では準決で敗れているが、二次予選は逃げて菅田壱道とワンツー、4日目特選は捲って1着と調子に問題はなく、今回も先行主体の走りで勝ち上がる。
佐藤慎太郎は全日本選抜では準決で敗れたが、二次予選では眞杉匠の快速捲りに食らいついていって2着と調子は決して悪くない。次場所の高松記念でも決勝は6着に終わったが、準決では目標の吉田拓矢が不発で最終4角で5番手と苦しい展開に追い込まれながら中コースを伸びて2着と直線での鋭さも健在だ。新田祐大が先頭員早期追い抜きのペナルティで今回出場できなくなり新山響平の先行力がますます重要になってくるだけに、佐藤が新山をしっかり援護して北日本勢を盛り上げてくれることを期待したい。
眞杉匠を中心に地元関東勢が巻き返しを狙う
関東勢は2月の全日本選抜ではひとりも優出できなかった。眞杉匠が落車後の欠場明けで本調子でなかったこともあるが、近況の関東勢は個々の能力は高くてもラインのまとまりがいまひとつで力を出し切れていない印象だ。1月の大宮記念決勝で埼玉勢が5人も乗りながら清水裕友の捲りに屈してしまったのがいい例だ。今回は総大将の平原康多が不出場なので眞杉匠の責任は重大だが、坂井洋、吉田有希、小林泰正らとともに地元地区でのビックレースで関東勢を引っ張っての巻き返しを期待したい。
中部は浅井康太が全日本選抜で優出しているが、残念ながら今回は浅井の出場がないのでやはりS級S班の山口拳矢の奮起に期待したい。山口は全日本選抜では準決で敗れたが、二次予選では松井宏佑のハイスピードの捲りに屈したものの最終ホームから一気に先行態勢に入って3着と気合満点の走りを見せている。直前のいわき平記念でも捲りで1着1回、2着1回と調子は悪くない。気分屋なのかレースごとの出来不出来の差が大きいのが難点だが、自分の力を信じて攻めの走りができれば必ずや勝ち上がれるだろう。
九州勢では山田英明が全日本選抜で優出を果たしたが、即席ラインの新山響平と息が合わず8着に終わっており、気心の知れた九州の自力型と連係したかったのが本音だろう。九州も若手選手たちが力をつけてきているが、ビッグレースでの優出が期待できるのはやはり北津留翼か。北津留は全日本選抜では二次予選で敗れたが、一次予選と4日目選抜で九州ワンツーを決めている。次場所の高松記念でも準決で敗れたが、二次予選で園田匠とワンツーを決めており、相変わらず安定感は低いがツボにはまったときの捲りは強烈だ。
プレイバック 第7回ウィナーズカップ
松浦悠士が近畿コンビを分断して2度目の制覇
好位置狙いで前で受けたのが嘉永泰斗-山田庸平の九州コンビ、同じく捌きを主眼に置いた近畿コンビは古性優作が3番手で脇本雄太がその後ろ、5番手に松浦悠士-福田知也の即席コンビ、7番手に新山響平-新田祐大-守澤太志の北日本トリオで周回を重ねるが、新田が新山の後ろをすんなり回れるかがレースの焦点となった。残り3周の青板過ぎから嘉永が誘導との車間を切って後続を牽制するが、後続からの仕掛けがないまま赤板を過ぎて打鐘を迎える。仕方なく嘉永が突っ張り気味に前へ踏み込むが、そこへ新山が猛然と巻き返してきて打鐘の3コーナーで嘉永を叩いて先頭に立つ。嘉永は番手に飛びつくが、新山のスピードに合わせることができず、結局は北日本ラインの後ろの4番手まで下がる。と同時に近畿コンビが巻き返してきて松浦も近畿コンビを追う。古性が新田の横まで迫ると、新田は二度三度と牽制するが、新田は雨走路でスリップしてバックで落車してしまう。それでも古性のスピードは緩むことなく、今度は新山とのもがき合いとなる。その直前、新田が落車したときに守澤がバックを踏み、その一瞬を逃さずに松浦が内に切り込み、脇本をどかして古性の番手に入っていた。古性と新山のもがき合いは4コーナーを過ぎて最後の直線まで続いていたが、ゴール手前で古性がようやく新山を交わした上を松浦が一気に伸びて先頭でゴールイン、松浦を追っていた脇本2着、守澤が3着に入る。
冬場はバンクが重くタイムも出ない
周長は400m、最大カントは31度30分25秒、見なし直線距離は54.8m。直線の長さもカントも標準的で、走路もクセがなくて走りやすく、どんな戦法の選手でも力を発揮できるバンクとなっている。
ただし利根川のほとりに位置しているため冬場は冷たい風が吹きつける日が多くバンクは重くなる。22年2月に開催された全日本選抜では2日目に風速4mの強い風が吹き、7Rの二次予選では新田祐大が5番手から捲って成田和也とワンツーを決めるも上がりタイムは11秒9と平凡だった。
風はバック向かい風の日が多く、セオリーどおりなら先行不利、捲り有利となるはずだが、やはり2日目11Rの二次予選では最終ホームから先行態勢に入った松井宏佑がまんまと逃げ切っており、上がりタイムは12秒4だった。捲りも位置取り合戦で仕掛け遅れ、バックまでに先手ラインを捕らえられないと自身も向かい風を受けてスピードが上がらず逃げ切られてしまうパターンが多い。
2日目以外は風速が1mと穏やかだったが、ほとんどのレースが11秒台後半から12秒台前半の上がりタイムとなっており、冬場の取手は重くてスピードに乗りにくい。
ちなみに22年の大会の決まり手を見てみると、全48レースのうち1着は逃げが5回、捲りが20回、差しが22回、マーク(1着入線選手が失格のため繰り上がり)が1回、2着は逃げが8回、捲りが10回、差しが15回、マークが15回となっている。やはり捲りのほうが優勢で先手ラインの選手が1着を取った回数も12回のみだが、逃げ切りと逃げ粘りの2着の合計が13回と先行選手もかなり健闘している。
最後の直線はとくに伸びるコースはなく、バンクが重くてスピードに乗りにくいので大外強襲もあまり見られない。後手を踏んだ選手は外へ行くよりはじっくり脚を溜め、最後の直線ではうまくコースを見極めての中割りを狙うかインコースに切り込んでいくと頭に突き抜けることができる。