第39回共同通信社杯競輪が青森競輪場で開催される。8月のオールスターでは113期の眞杉匠がGI初優勝を飾るなど若手選手たちの活躍が光っていたが、今回の共同通信社杯も「若手選手の登竜門」と位置付けされている大会だけにヤングパワーの爆発に期待したい。
好調な若手が勢揃いで上位陣を脅かす
8月のオールスターは落車の影響などで上位陣に精彩がなく波乱続きの大会となったが、110期台の新鋭たちが上位陣を脅かして波乱の要因のひとつになったのも確かだ。GI初優勝を飾った眞杉匠(113期)を始め、犬伏湧也(119期)、山崎賢人(111期)、嘉永泰斗(113期)、伊藤颯馬(115期)、寺崎浩平(117期)、吉田有希(119期)などオールスターで活躍した選手たちが今回も出場予定で、ひょっとすると世代交代が一気に加速するかもしれない。
眞杉匠がついにGIタイトルを獲得した。以前からタイトルホルダーの仲間入りを果たすだろうと目されていた逸材だったが、オールスター決勝では関東4車が揃ってライン的にも強力だったとはいえ、3度目のGI決勝で与えられたチャンスをしっかりモノにした走りは称賛に値する。準決も吉田有希が中野慎詞を叩けないと見ると自ら踏み込んで逃げ切りと万全だった。今年のグランプリは立川で開催されるが、関東勢は獲得賞金ランキングで伸び悩んでいるだけに今回は眞杉が関東の仲間たちをグイグイ引っ張っていく。
吉田有希は3月のウィナーズカップでは準決進出、5月の日本選手権は二次予選で敗れたが4走すべてでバック取りと好調だったが、6月の高松宮記念杯で落車して勢いが止まってしまった。オールスターも一次予選は2着、3着ながら自力を出しておらず状態面を不安視されたが、二次予選では逃げて2着に粘り準決進出と復調をアピールした。準決は中野慎詞との先行争いに敗れたが、中野とのもがき合いが結果的には眞杉匠の1着突破につながったのは間違いなく、今回もケレン味のない自力勝負を披露してくれるだろう。
オールスターで驚異のパワーを見せつけてくれたのが犬伏湧也だ。1走目のオリオン賞は見せ場なく終わったが、一次予選2は伊藤颯馬の逃げを7番手から捲り後続を5車身千切って1着、二次予選も吉田有希の逃げを5番手から捲り5車身千切っての1着、準決は山口拳矢を叩いての主導権取りで上がりタイム11秒0の逃げ切り、マークの山田庸平が2着で3番手にいた古性優作も流れ込みが精一杯だった。決勝は6着だったが、デビューしてまだ3年目とは思えない恐るべきパワーで、今回はビック初優勝が十分に期待できる。
清水裕友は日本選手権決勝では犬伏湧也ー清水裕友ー香川雄介の並びで犬伏の逃げに乗っての準優勝だったが、オールスター決勝では犬伏湧也と松本貴治の四国2人と別線を選択した。準決では太田海也の番手ながら吉田拓矢にあっさり捲られ、なにも抵抗できずに清水が3着、太田が4着に沈んだのがかなりショックだったようで、決勝では自分の現在の力を試してみたい気持ちがあったのだろう。結果は4着だったが、関東ラインに攻め込む気合い十分の走りを見せており、今回も清水らしい強気の走りを貫いて勝ち上がりを狙う。
落車禍に苦しむ上位陣が巻き返しを狙う
北日本は今年4人のS級S班を擁しているが、オールスター終了時点での獲得賞金ランキングでは佐藤慎太郎が4位、新田祐大が8位、新山響平が9位、守澤太志が11位で、佐藤以外はグランプリ出場が微妙な順位となっている。新田はオールスターではドリームレースと一次予選2を連勝と好調だったが、シャイニングスター賞での落車の影響で準決は6着に敗れている。共同通信社杯はGIIなので優勝してもグランプリには直結しないが、賞金の上積みを狙ってしっかりと立て直しを図ってきてくれるだろう。
新山響平はオールスターのドリームレースでは新田祐大を連れて逃げて新田の勝利に貢献、一次予選2では逃げ切りでライン上位を独占とさすがの走りを見せた。ところが準決では新鋭の太田海也にあっさり叩かれ、なにもできずに8着と敗れてしまった。それがあまりにショックだったのか、6日目優秀では北日本ラインを連れて逃げるも5着に沈んでいる。もちろんこのままで終われるわけはなく、今回は気合いを入れ直し、S級S班のプライドにかけて本来の強い強い走りを見せてくれるだろう。
郡司浩平は5月の地元開催の日本選手権では準決で落車して無念の途中欠場となったが、オールスターでも一次予選2で落車に見舞われ二次予選で5着に敗れた。それでも6日目優秀では3番手からの捲りで渡邉雄太とワンツーを決めて上がり10秒9をマークしており、やはり底力はある。昨年も決して順風満帆な1年とは言えなかったが、共同通信社杯を優勝して賞金の上積みに成功しグランプリ出場につなげており、今年も獲得賞金ランキングでは13 位だが、賞金の上積みのために連覇を狙ってくるだろう。
山口拳矢はオールスターのオリオン賞は3着、一次予選2は8番手から大外を伸びて2着とまずまずの調子だったが、シャイニングスター賞で落車に巻き込まれた。そのためか準決は8着と敗れたが、犬伏湧也を相手にカマシたスピードは悪くなかった。6日目優秀はやはり落車の影響があったのか6番手から動けずに4着に終わっているが、途中欠場せずに最後まで走り終えたのはダービー王の責任感と投票で11位に選んでくれたファンのためだろうし、今回もファンの期待に応える走りをきっと見せてくれるだろう。
古性優作が輪界最強の自在戦で近畿を引っ張る
脇本雄太は9月のオールスターでの落車で骨折して全治1か月と診断され共同通信社杯の欠場が発表された。それでも輪界最強の自在戦士である古性優作がオールスターでも準優勝と健闘しており、やはり古性率いる近畿勢は強力だ。決勝は単騎戦で最終バックでは6番手と後手に回っていたが、後ろから捲ってきた犬伏湧也を牽制して止めてから、最後の直線では中割り強襲で2着とさすがの走りを見せている。今回も目標不在のレースとなっても、いつもどおりの自在な走りで窮地を突破してくる。
寺崎浩平は8月にイギリスで開催された世界選手権から帰国後に中2日の強行軍でオールスターに出場したが、一次予選1では打鐘から野口裕史を叩いて主導権を奪い、マークの稲川翔がいったんは離れてしまうハイパワーで逃げ切った。一次予選2も打鐘から吉田有希を叩いて先行し、4番手からの嘉永泰斗の捲りをまったく寄せつけずに押し切って村上博幸とワンツーを決めている。残念ながら二次予選で敗れたが、今回もオールスターのときと同様に強い気持ちで仕掛けられれば勝ち上がりが期待できるだろう。
山崎賢人は世界選手権の代表メンバーから漏れてしまったが、それならばと気合いを入れ直して臨んだオールスターで好走した。一次予選1は3番手からの捲りで1着、一次予選2は眞杉匠に捲られたものの逃げ粘りの2着、二次予選は深谷知広ー郡司浩平の南関東コンビを相手に逃げて山田庸平が1着、山崎が2着の九州ワンツーだ。準決は中野慎詞と吉田有希の先行争いを見てしまい、8番手から仕掛けきれずに4着と甘さが出てしまったが、今回も九州勢を引き連れて逃げまくってくれるだろう。
山田庸平はオールスター終了時点での獲得賞金ランキングが10位で、9位の新山響平との差はわずかに20万円だ。昨年は競輪祭の準決で8着と敗れグランプリ初出場はならなかったが、今年こそはの強い気持ちで賞金の上積みを狙ってくるだろう。オールスターでは一次予選1が太田海也、一次予選2が伊藤颯馬、二次予選が山崎賢人、準決が犬伏湧也と連日目標に恵まれて決勝進出を果たしている。決勝は5着に終わり脚力不足を痛感したとコメントしているが、九州は今盛り上がっているだけに今回も優出が期待できるだろう。
プレイバック
第33回共同通信社杯 40歳の諸橋愛がビッグレース初優勝
平原康多ー諸橋愛の関東コンビが前受け、そこに単騎の松谷秀幸が続き、4番手に渡邉一成ー新田祐大ー守澤太志の北日本勢、7番手に村上義弘ー村上博幸ー稲川翔の近畿勢の並びで周回を重ねる。青板3コーナーから村上兄が上昇開始、4番手の渡邉を押さえにいくと渡邉は7番手まで引く。村上兄は赤板2コーナーから車を外に持ち出し、渡邉の動きを確認しながらスパートし打鐘で先頭に立つ。すかさず渡邉が巻き返し、村上弟の牽制をしのいだ渡邉が最終ホーム過ぎに村上を叩いて主導権を奪う。続いて平原も1コーナーから捲り発進、平原のスピードはよく2コーナーで北日本勢に迫る。新田が車を外に持ち出して平原を牽制しようとするが、平原は意表を突いてインに切り込み、インに平原、アウトに新田で並走となる。バックで新田が渡邉の番手から出ようとするが、平原がインからすくい新田は外に浮く。そのまま最後の直線に入ると関東コンビのマッチレースとなり、諸橋がゴール前で平原を交わしてGII初優勝、平原が2着、新田が3着に入る。
バンクの特徴 青森競輪場 直線は長めだが逃げ切りが多い
周長400m、最大カントは32度15分7秒、見なし直線距離は58.9m。縄文バンクの愛称で知られている青森はクセのない走りやすいバンクだが、直線が長めでカントもややきついので捲りや追い込みの選手に有利とされている。
しかし、昨年9月の記念開催の決まり手を見てみると、必ずしも捲りや追い込みが有利とは言えない結果となっている。全48レースのうち1着は逃げが12回、捲りが13回、差しが23回、2着は逃げが9回。捲りが9回、差しが12回、マークが18回となっている。
競輪という競技の性質上1着は差しが最も多くなるのは当然だが、逃げと捲りの回数がほぼ同じで捲りが有利なバンクとは言えない。先手ラインの選手が1着を取った回数も半数以上の25回だ。
そこで注目したいのが上がりタイムだ。大会のベストタイムは11秒1でこれは2回出ているが、そのほかのレースはほとんどが11秒台中盤から後半のタイムである。青森は400バンクとしてはややきつめのカントを持っているがスピードには乗りにくい印象だ。よほどの脚力差があれば7、8番手からでも捲れるが、やはり勝負どころで中団を取れていないと巻き返しは難しい。
逆に先行は打鐘からカマシ気味に仕掛け、最終ホームで前団を叩いて主導権を奪ってしまえば簡単には捲られず、そのまま押し切ることができる。ここで注目したいのは2着の決まり手でマークが最も多くなっている。青森は直線は長めだが、とくに伸びるコースはないので、先行選手がスピードを殺さずに最終4コーナーを先頭で通過できればラインの選手同士で決まる確率が高い。
ただ昨年の記念の決勝ではデビューから30連勝で突っ走ってきた中野慎詞が注目の的だったが、清水裕友が中野を出させずに主導権を奪って展開がもつれ、中団にいた吉田拓矢がインコースをするする伸びて優勝しており、やはり直線が長いだけに脚力上位の選手たちが叩き合うような展開になればゴール前はもつれてすんなりとは決まらない。