第19回サマーナイトフェスティバルが2年ぶりに函館競輪場で開催される。6月の高松宮記念杯で地元連覇を達成した古性優作と脇本雄太の近畿コンビが今回も中心となるが、地元地区で必勝を期す北日本勢やサマーナイトを連覇中の松浦悠士率いる中四国勢も強力で、近況勢いのある九州勢や骨折明けながら高松宮記念杯で優出した郡司浩平率いる南関東勢も侮れない。
古性と脇本の近畿コンビが最強の走りを見せる
古性優作は6月の高松宮記念杯では一次予選1で落車に見舞われ8着に終わった。地元戦でのいきなりの落車は精神的なダメージが大きかったはずだが、一次予選2、二次予選、準決を捲りの3連勝で突破しており、その精神力の強さには恐れ入るしかない。決勝も地元連覇のプレッシャーに負けることなく逃げる脇本雄太をしっかり追走して優勝と強い走りを見せている。サマーナイトは18年の松戸大会以降は優出がないのがやや気がかりだが、もちろん今回も脇本とのタッグで輪界最強の走りを披露してくれるだろう。
脇本雄太は高松宮記念杯では一次予選1が捲りで上がりタイム10秒6、一次予選2が10秒7、4日目白虎賞が11秒1、準決が11秒0と不動のスピードスターぶりを見せつけた。決勝は前受けからの突っ張り先行で6着だったが、押さえにきた新山響平が一瞬ためらったスキを逃さずに腹をくくって仕掛けたところはさすがとしか言いようがなく、古性優作を優勝に導いて自分の努めをしっかり果たしている。今回は6日制の高松宮記念杯と打って変わって3日制の短期決戦だけに、脇本のまくりでの3連勝も十分に期待できる。
新山響平は高松宮記念杯の決勝では勝負どころで判断の甘さが出てしまい脇本雄太に突っ張られて9着に終わったが、決勝までの勝ち上がりは万全だった。一次予選1は逃げて7着でポイントのかかった一次予選2はさすがに捲りかと思われたが、それは自分の目指す走りではないとばかりに逃げて4着、二次予選は逃げ切りで2着権利の準決も逃げて2着と徹底先行を貫いた。その走りが決勝での脇本雄太の突っ張り先行につながったのは疑問の余地はなく、地元地区でのビッグレースである今回も北日本勢を連れて逃げまくってくれるだろう。
46歳の佐藤慎太郎は5月の日本選手権では決勝3着、高松宮記念杯では準優勝とまさにレジェントと呼ぶにふさわしい走りを見せた。決勝では新山響平が脇本雄太に突っ張られてバックを踏んでしまい新山が6番手、佐藤は8番手となったが、最終バックから4番手の松浦悠士が捲りにいっても佐藤は冷静にインコースを突き進み、最後は中割りを決めて2着に突っ込んでいる。一次予選2と二次予選ではそれぞれ渡邉一成と新田祐大を目標に勝ち星も挙げており、19年のグランプリ以来のビッグレース制覇も十分だ。
松浦悠士が3連覇の偉業を狙う
松浦悠士は21年の函館大会では清水裕友の捲りに乗って優勝、昨年の玉野大会では犬伏湧也の逃げに乗って優勝とサマーナイトフェスティバルを連覇中だ。今年は3月のウィナーズカップを優勝後に4月の武雄記念で落車してからやや調子落ちになったが、6月の高松宮記念杯で優出して復活をアピールした。ただ勝ち上がり戦では勝ち星がなかったし、決勝も4番手から捲るも脇本雄太-古性優作-稲川翔の近畿ラインを越えることができなかっただけに、さらなる脚力強化を目標に練習を積み重ねて3連覇を狙ってくるだろう。
犬伏湧也は高松宮記念杯では優出できなかったが、勝ち上がり戦では連日主導権を取りきって見せ場をつくっていた。とりわけ準決は連係実績の多い松浦悠士とは別線と戦いにくい組み合わせで、結果的には3番手から仕掛けた松浦に捲られたが、本命の脇本雄太を少しでも苦しめようと全開で飛ばした走りは評価できるだろう。サマーナイトは昨年の玉野ビッグレース初出場で初優出を決めており、今年は5月の日本選手権でGI初優出も達成して急成長を続ける犬伏が今回も先行一本で勝ち上がる。
郡司浩平は地元・平塚の日本選手権の準決で無念の落車となったが、欠場明けの高松宮記念杯では決勝進出を果たした。一次予選1は青野将大の逃げに乗っての番手捲りで1着、二次予選2は北井佑季の逃げを差して1着、準決は深谷知広の逃げに乗って1着と自力勝負が番手捲りの1回だけというのがやや気になるが、骨折明けとは思えないほど状態はよさそうだった。ただ決勝は欲をかきすぎた松井宏佑と共倒れでなにもできなかったのが残念だが、今回も南関東の頼れる仲間たちとともに勝ち上がっていくだろう。
深谷知広は高松宮記念杯では優出できなかったが、捲りで3勝を挙げており、6日目特別優秀では上がりタイムが10秒7と好調だ。これまでの深谷は地区に関係なく後ろについてくれた選手のために主導権を取りにいくスタイルが多かったが、高松宮記念杯では意識に変化があったのか、年齢的にも捲りを多用するようになったのはいい傾向だ。それでも準決では長年培われてきた先行選手の性のせいか郡司浩平を連れて打鐘とともに飛びだしていったが、それもまた深谷の魅力であり、今回も積極的な攻めが期待できるだろう。
スピード抜群の嘉永泰斗が九州勢を牽引する
九州の注目選手は嘉永泰斗だ。5月の函館記念の決勝では犬伏湧也の逃げを車間が大きく空いた4番手から捲り記念初優勝を達成、上がりタイムは10秒7とバンクレコードを更新しており函館との相性は抜群だ。6月の高松宮記念杯では準決で敗れ、一次予選2では事故入のアクシデントもあったが、1着1回、2着2回と好成績を挙げている。一次予選1は捲りの2着で山田庸平とワンツー、6日目特選は逃げ粘りの2着で荒井崇博とワンツーを決めており、今回もスピード抜群の先行・捲りで九州勢を牽引していく。
山田庸平は2月の全日本選抜はまさかの二次予選敗退、5月の日本選手権は準決敗退に終わったが、高松宮記念杯の準決では5番手から捲った目標の嘉永泰斗が松浦悠士のブロックを受けて不発に終わるも、そこから自力に転じて脇本雄太に続く2着で決勝進出を決めた。一次予選2では目標の北津留翼が8番手からの捲りで不発に終わったが、最後の直線で前団の3人をごぼう抜きにして上がりタイムは10秒8を叩き出している。決勝は5着に終わったが、調子は上向きだけに念願のビッグレース初制覇が期待できるだろう。
平原康多は高松宮記念杯では欠場明けの出場だったが、4日目青龍賞でまたもや落車してしまい、その悪い流れが他の選手にも波及したのか関東勢からの決勝進出はなかった。それでも眞杉匠が一次予選1で逃げて2着で吉澤純平とワンツー、一次予選2も逃げて5着だったが、平原康多-宿口陽一のワンツー決着に貢献している。坂井洋も一次予選1は新山響平の逃げを捲ってライン3車で上位独占、6日目特別優秀は捲りで1着と調子は悪くなく、関東は選手層が厚いだけに一丸となっての巻き返しを期待したい。
中部は高松宮記念杯ではダービー王・山口拳矢の走りが注目されたが、二次予選2では4番手から捲って2着に入るも斜行によって失格となってしまった。それでも浅井康太が優出こそならなかったが、一次予選1は谷口遼平の逃げに乗って1着、二次予選2は山口拳矢との連係から2着で勝ち上がり準決までコマを進めている。今回も中部は出場予定選手がわずかに4人だが、山口拳矢、谷口遼平に7月から1班に昇班の119期の新鋭・志田龍星もいるので、浅井が彼らをうまくリードしていけば決して侮れないだろう。
プレイバック 2022年 第18回玉野大会 優勝 松浦悠士
犬伏湧也の逃げに乗って松浦悠士が連覇
新田祐大-佐藤慎太郎の福島コンビが前受け、3番手に山田英明-荒井崇博の佐賀コンビ、5番手に犬伏湧也-松浦悠士の中四国コンビ、7番手に単騎の森田優弥、8番手に岩本俊介-和田健太郎の千葉コンビで周回を重ねる。青板周回の3コーナーから岩本がゆっくり上昇開始、赤板で岩本が福島コンビを押さえて前に出ると山田がその後を追い、新田は5番手まで車を下げる。同時に犬伏も上昇を開始、前団では山田が岩本をインからすくって先頭に出るが、そこを犬伏が一気に叩いて主導権を握ったところで打鐘を迎える。中四国コンビに続いていた森田は前を追いきれず外に浮いた状態で後退していく。犬伏が先頭、3番手に山田、5番手は内に岩本、外に新田で中団の取り合いとなったまま最終ホームを通過する。犬伏は快調に逃げ、バック手前から山田が仕掛けるが車が伸びず、荒井が山田の内に入って中四国コンビを追う。外並走が続いた新田も仕掛けきれず、3コーナー5番手から岩本が捲りにいくと並走状態で離れ気味になっていた和田は追いきれず佐藤が岩本の後ろに切り替える。岩本のスピードはよく、佐賀コンビをあっさり乗り越えると4コーナーで中四国コンビに迫って最後の直線へ向かう。直線に入ると犬伏を交わして踏み出した松浦がゴール前で並びかけてきた岩本に体を寄せてからハンドルを投げ、4分の1車差でサマーナイト連覇を達成、岩本が2着、佐藤が3着に入る。
バンクの特徴 標準的な400バンクでタイムも出やすい
周長は400m、最大カントは30度36分51秒、見なし直線距離は51.3m。標準的な400バンクで走路はクセがなくて走りやすい。カントもごく平均的で戦法的な有利・不利はなく、タイムも出やすい。
今年5月の記念決勝では嘉永泰斗が犬伏湧也の逃げをやや車間の空いた4番手から捲って2度目の記念優勝を飾り、同時に上がりタイムが10秒7とバンクレコードを更新している。21年7月のサマーナイトフェスティバルの初日7Rでは皿屋豊が3角8番手から捲って10秒8と当時のバンクレコードタイをマークしている。
ちなみに21年のサマーナイトフェスティバルの決まり手を見てみると、全27レースのうち1着は逃げが3回、捲りが9回、差しが15回、2着は逃げが3回、捲りが9回、差しが6回、マークが9回となっている。
同時開催のガールズケイリンフェスティバルの決まり手は全9レースのうち1着は逃げが1回、捲りが6回、差しが2回、2着は逃げが1回、捲りが2回、差しが2回、マークが4回となっている。
函館は400バンクの中では見なし直線距離がやや短めなので逃げが有利と言われているが、ビッグレースとなるとやはり捲りが優勢だ。また1センター側が海に近く、風の強い日は1センターから風が吹き込んでホームが向かい風、バックが追い風となるため逃げは苦しくなる。
それでも男子のレースでは11レースで先手ラインの選手が1着を取っており、先行選手がかなり健闘していた。捲りはもちろん中団取りが基本だが、バンクレコードタイをマークした皿屋豊は8番手だし、北津留翼は初日こそ失敗したが、2日目2Rの選抜では7番手からで11秒1、3日目5Rの選抜では8番手からで11秒0と力のある選手なら後方からの巻き返しが効く。
ただし女子のレースも捲りの1着が多いが、そのほとんどが2番手や3番手からの仕掛けであり、4番手以降からの巻き返しは難しいようだ。
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