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第74回高松宮記念杯競輪展望
レース展望 2023.05.24

第74回高松宮記念杯競輪展望

#グレードレース展望

第74回高松宮記念杯競輪が岸和田競輪場で開催される。今大会から昨年までの4日制から25年ぶりに6日制へと変わり、前半3日間はガールズケイリン初のGIとなるパールカップと同時開催となる。勝ち上がり戦は従来どおりに東西対抗戦だが、一次予選はオールスター競輪や競輪祭と同様にポイント制となり、特別選抜予選は廃止され、一次予選を2走した合計ポイントによって二次予選進出者が決定される。そして東西の合計ポイントの上位者はそれぞれ4日目の青龍賞(東日本)と白虎賞(西日本)へ進出でき、全員が失格しないかぎり5日目の準決へフリーパスとなる。5日目の準決は従来どおり東西2個レースの4個レースで、それぞれのレースで2着までに入った8人と3着の1人が晴れて決勝へ進出できる。


絶好調の新山響平が北日本勢を引っ張っていく

 岸和田競輪場は2年前の大改修で国内有数の高速バンクとなったために自力選手たちの叩き合いが避けられず、一次予選がポイント制で2走しなければならないので6日間で5走しなければならない。しかも4個レースの準決は2着権利なので自力選手にとっては厳しい勝ち上がりとなっている。昨年の準決では9Rは渡邉雄太の逃げに乗った郡司浩平が1着、12Rは岡崎智哉の逃げに乗った古性優作が1着とすんなり決まったが、10Rは普段は連係している中国勢と四国勢の叩き合い、11Rは関東勢同士の叩き合いになっており、今年の準決も自力選手にとっては試練の戦いになるだろう。
 北日本は新山響平が好調だ。2月の全日本選抜は準決で敗れたが、3月のウィナーズカップで準決を1着で突破してからグングン調子を上げ、以降の記念で勝ち星を量産、5月の日本選手権では決勝は6着だったが勝ち上がり戦の3走はオール2着で、3走とも守澤太志や佐藤慎太郎とワンツーを決めている。GI初優勝を飾った昨年の競輪祭も今大会と同様に高速バンクでの6日制だが、準決も逃げ粘り2着で突破しておりスタミナ的にも問題はなく、自分の力を信じて攻めていけば2着権利の準決も難なく突破してくるだろう。
 新田祐大は今年位置取りにこだわる走りを見せており、1月の立川記念と3月の高知記念は追い込みで優勝している。以前のように豪快な捲りで勝つ姿を見たいというファンも多いだろうが、年齢的なことも考えるとこれがベストの選択なのだろう。日本選手権は二次予選敗退となったが、5日目特選では成田和也とのワンツーで勝ち星を挙げており調子は悪くない。次場所の函館記念も決勝は2着に終わったが、準決は逃げて3着と自力脚も健在で、16年と17年に連覇している高松宮記念杯で3度目の優勝を目指す。
 関東はエースの平原康多が落車の影響で日本選手権を欠場しており、今回も体調面の不安は拭いきれない。それでも日本選手権で2勝を挙げた吉田拓矢や同じく日本選手権で1着1回、2着1回の眞杉匠など好調な自力選手が揃っているだけに勢力的には強力だ。ただ昨年の高松宮記念杯の準決では関東同士が別線となり北日本ラインにまんまと逃げ切られており、自力選手が多すぎるのがかえって足かせになる可能性もある。平原康多が若手選手たちをいかにリードしていくかが今回も一番の見どころになるだろう。

新山響平 青森 107期
新田祐大 福島 90期
平原康多 埼玉 87期

ダービー王の山口拳矢が少数精鋭の中部を盛り上げる


 郡司浩平は5月の日本選手権では残念ながら準決で落車して全治40日と診断されており、今回出場なったとしてもかなりのダメージが残っているだろう。それでも2月の静岡記念は深谷知広の捲りに乗って優勝、4月の小田原記念も深谷の逃げに乗って優勝と南関東には心強い仲間がいるのでやはり侮れない。昨年も全日本選抜、日本選手権と優出を逃しているが、高松宮記念杯は渡邉雄太の逃げに乗って準決を1着で突破している。そのほか松井宏佑も日本選手権は二次予選で敗れたが、全4走で主導権取りと好調だ。
 中部は今回も出場選手が5人のみと寂しい状況だが、日本選手権で山口拳矢がGI初優出で初優勝の快挙を成し遂げており勢いでは他地区に負けてはいない。昨年の大会も正選手は4人だけだったが浅井康太と谷口遼平の2人が準決進出、落車の影響で決勝進出はならなかったが今年も勝ち上がりが期待できるだろう。ダービー王となった山口拳矢は警戒網が厳しくなるだけに今後の走りには課題が山積みだが、持ち味のレース勘のよさをフルに発揮して今回も中部を大いに盛り上げていくにちがいない。
 脇本雄太は日本選手権の準決では打鐘から犬伏湧也を叩いて主導権を握り、古性優作が追走困難なほどの驚異のスピードで逃げ切り上がりタイム10秒7を叩き出した。しかし、決勝では中四国勢を連れた犬伏の捨て身の先行で8番手に置かれて不発に終わっており、腰痛のせいもあって強いときと脆いときの落差が激しい。もちろん今回も地元の古性優作とのタッグで優勝候補の筆頭に挙げられるだろうが、犬伏のような結果を恐れぬ若手選手たちの逃げをいかに攻略していくかが課題となるだろう。
 古性優作は昨年の大会では脇本雄太が不参加で決勝は単騎戦だったが、前団のもつれを尻目に6番手から捲ってうれしい地元優勝を飾っており、今年も狙うは地元連覇だ。2月の全日本選抜では脇本の先行に乗って優勝とすでにグランプリの出場権を獲得しているが、もちろん今回は地元戦だけに攻撃の手を緩めることはない。日本選手権の決勝は脇本と共倒れで5着に終わったが、二次予選では吉田有希の逃げを5番手から捲って稲川翔とワンツーを決めており、今回も地元のファンの期待に応える走りを見せてくれるだろう。

郡司浩平 神奈川 99期
山口拳矢 岐阜 117期
脇本雄太 福井 94期
古性優作 大阪 100期

復活なった清水裕友が得意の捲りで勝ち上がる

 中国は松浦悠士が5月の日本選手でまさかの二次予選敗退と低調だが、代わりに清水裕友が復活してきた。日本選手権の決勝は犬伏湧也の先行で番手絶好の展開ながら2着と無念の結果に終わったが、初日特別選抜予選は脇本雄太-古性優作のゴールデンコンビを相手に4番手から捲って2着、準決も5番手から捲って1着で突破している。これまでとは違い松浦悠士らの仲間の助けを借りずに勝ち上がれたのが大きな自信となっており、今回も犬伏湧也らの四国勢と別線勝負となっても得意の捲りで切り抜けていく。
 犬伏湧也は日本選手権の準決では脇本雄太に叩かれての3着での突破だったがGI初優出を達成、決勝では中四国勢を連れて迷うことなく主導権を取り切り、新山響平や脇本雄太を不発に終わらせる素晴らしい先行力を見せつけた。次場所の函館記念の決勝では嵯峨昇喜郎-新田祐大の北日本コンビを一気に叩いて主導権を取り切り、後ろが離れてしまったために裸逃げとなってしまったが、それでもしっかりと3着に粘り込んでおり、今回も四国勢を連れての徹底先行で勝ち上がっていくだろう。
 四国では香川雄介も好調だ。全日本選抜の準決では中四国ラインの3番手が攻められて5番手に引かざるを得なかったが、そこからしぶとく3着に突っ込んで優出、日本選手権の準決も清水裕友の番手を山口拳矢に割り込まれてしまったが3着で入線してGI連続優出を決めている。一次予選では犬伏湧也の逃げをきっちり差し切って1着、二次予選では目標の太田竜馬が不発で最終4角で5番手の展開となったが、脇本雄太、三谷竜生に続いて3着に入っており、今回もしぶとい走りでGI連続優出が期待できる。
 九州の注目選手は嘉永泰斗だ。嘉永は3月のウィナーズカップでは準決を捲りの1着で突破してビッグレース初優出を達成、日本選手権は二次予選で敗れたが、次場所の函館記念で2年ぶり2度目の記念優勝を飾っている。初日特別選抜は犬伏湧也の逃げを捲って2着、二次予選は捲りの1着で小倉竜二とワンツー、準決も捲りの1着で中本匠栄とワンツー、そして決勝では犬伏の逃げを大きく離れた4番手から捲って先頭でゴールイン、上がりタイムは10秒7とバンクレコードを更新しており、今回も抜群のスピードを披露する。

清水裕友 山口 105期
犬伏湧也 徳島 119期
香川雄介 香川 76期
嘉永泰斗 熊本 113期

プレイバック 2017年 第68回大会 優勝・新田祐大


新田祐大が得意の捲りで大会連覇
 新田祐大-成田和也の福島コンビが前受け、3番手に稲垣裕之-村上義弘の京都コンビ、5番手に山田英明-井上昌己の九州コンビ、7番手に吉田拓矢-平原康多-武田豊樹の関東トリオの並びで周回を重ねる。青板周回の2センターから吉田がゆっくり動きはじめると、それを見た山田が先に上昇し、稲垣がその後ろに続く。山田は赤板で北日本コンビを交わして先頭に立つが、近畿コンビの後ろに続いていた吉田がすかさず叩いて関東トリオが出切り、4番手に九州コンビ、6番手が内に北日本コンビ、外に京都コンビで並走となる。そのままの並びで打鐘を迎えると吉田がメイチの先行策に出て、同時に稲垣が6番手外並走から強引に巻き返していくが、車の伸びは鈍く、関東コンビの3番手まで上がってきたところで武田の牽制を受けて失速する。すると、武田の牽制で空いた内に山田が突っ込み、山田は2番手まで上がって平原を捌きにいき隊列が大きく乱れる。その一瞬を逃さずに新田が捲り発進、新田は抜群のスピードで前団を抜き去り、最終3コーナーで先頭に立つ。成田も必死に追いかけて福島コンビで完全に出切り、平原を捌いた山田が2車身ほど離れて追いかける。4コーナーを回って最後の直線に入っても新田のスピードは衰えることなく、上がりタイム11秒0の好タイムでゴールインして大会連覇を達成、1車身半差で成田が2着に入り、さらに2車身離れて山田が3着に入る。

バンクの特徴 高速バンクで捲りのラインが圧倒的に有利


 周長は400m、最大カントは30度56分00秒、見なし直線距離は56.7m。岸和田競輪場は2年近くに渡る大規模改修工事を経て一昨年5月にリニューアルオープンしたが、新しく生まれ変わったバンクは以前に増しての高速バンクとなっている。
 昨年6月に開催された高松宮記念杯の決まり手を見てみると、全48レースのうち1着は逃げが4回、捲りが19回、差しが25回、2着は逃げが9回、捲りが7回、差しが17回、マーク15回となっている。
 高速バンクでスピードに乗りやすいので捲りが圧倒的に有利で、中団の4、5番手からだけではなく後方の7、8番手からでも面白いように決まっているので先手ラインは苦しい。それでも一昨年の大会では先手ラインの選手が1着になったレースは13 回しかなかったが、昨年の大会では19回と先行選手がかなり頑張っていた。
 ほとんどのレースが11秒台前半の上がりタイムで決まっており、昨年の大会のベストタイムは10秒8で2回出ている。4日目8Rの特選では清水裕友が最終2角の7番手から捲って小倉竜二とワンツー、4日目9Rの特別優秀では太田竜馬が最終バック5番手から捲って原田研太朗とワンツーを決めている。
 逃げ切りは4回あるが、3日目6Rの特選では町田太我が最終ホームから仕掛けて押し切り上がりタイムは11秒6、3日目7Rの特選では眞杉匠が打鐘とともに前を叩いて一本棒の状態に持ち込み、そのまま押し切って上がりタイム11秒4と、やはりスピードのある選手でないと逃げ切りは難しい。
 最後の直線ではとくに伸びるコースはないとされているが、後方から巻き返してきた選手がイエローライン上を伸びて逆転というケースがよく見られる。初日5Rの一次予選では渡邉一成の先行で番手の和田圭に絶好の展開かと思われたが、長島大介の捲りに乗ってきた隅田洋介がイエローライン上を鋭く伸びて1着でゴールイン、上がりも11秒3と好タイムをマークしている。

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