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第76回日本選手権競輪(GI)展望
レース展望 2022.04.06

第76回日本選手権競輪(GI)展望

#グレードレース展望

第76回日本選手権競輪が福島県のいわき平競輪場で開催される。3月のウィナーズカップでラインの力を見せつけた中四国勢が優勢だが、圧倒的なスピードを誇る脇本雄太率いる近畿勢も互角だ。ウィナーズカップで優出を逃した平原康多と郡司浩平に地元のエース・新田祐大の巻き返しも見どころで、GⅠ最高峰の大会にふさわしい熱戦が繰り広げられるだろう。

機動力充実の中四国勢がラインの力でリード

3月のウィナーズカップ決勝は太田竜馬ー松浦悠士ー清水裕友で結束した中四国勢の勝利で幕を閉じた。勝ち上がり戦で圧倒的なスピード見せつけていた脇本雄太や深谷知広は、中四国ラインの結束力を前にして為す術もなく敗れてしまった。とりわけ清水にとっては2月の全日本選抜で優出を逃すなど低迷状態が続いていただけに、ウィナーズカップ連覇は復活へとつながる大きな勝利だったと言えるだろう。昨年もウィナーズカップを優勝した清水が日本選手権決勝で松浦と連係して松浦に優勝をもたらしており、今回も中四国勢がシリーズをリードしていくだろう。

ウィナーズカップ決勝での清水裕友と松浦悠士のワンツー決着の立役者となったのが太田竜馬、町田太我、取鳥雄吾の中四国の機動力型だ。太田竜馬は2月の全日本選抜に続いての優出で、ビッグレースで決勝では欠くことのできない存在へと成長を遂げたと言っていいだろう。決勝での気風のいい逃げはもちろん500バンクの準決で3着に粘り込んだ脚も素晴らしく、今回も優出が期待できる。町田太我は準決で7着に敗れたが、清水裕友の1着に貢献、2日目毘沙門天賞では松浦悠士の1着貢献している。どこからでも仕掛けられるスケールの大きな走りは将来性が高く、もちろん今回も大暴れ必至だ。

脇本雄太はウィナーズカップが長期欠場後の初のビッグレース参戦となったが、3連勝の勝ち上がりで優出を果たした。ところが決勝は、2月の奈良記念決勝と同様に中四国ラインの2段駆けに屈して6着に終わっている。段違いのスピードを有していても決して勝ちきれない競輪競走の面白さを改めて思い知らされたレースだった。しかし、次場所の玉野記念決勝ではまたもや2段駆けの中四国ラインとの対決となったが、脇本は打鐘3角の7番手から一気に巻き返すと番手捲りの松浦悠士を飲み込んで圧勝しており、今回も脇本と中四国勢の対決が一番の見どころになるだろう。

古性優作はウィナーズカップの決勝では脇本雄太と共倒れで7着に終わったが、準決では脇本の7番手捲りをしっかり追走して2着と状態は変わらずにいい。4日間を通して勝ち星はなかったが、初日特別選抜予選は中西大の逃げに乗って2着、2日目毘沙門天賞は町田太我と吉田拓矢のもがき合いを8番手から捲り、番手捲りの松浦悠士に合わせられたものの2着と自力脚も健在だ。脇本雄太が不在の中でも年末のグランプリと2月の全日本選抜を優勝と強さを発揮しており、今回もGⅠ連続優勝の可能性が十分に高い。

清水裕友
(山口 105期)
太田竜馬
(徳島 109期)
脇本雄太
(福井 94期)
古性優作
(大阪 100期)

新田祐大がホームバンクで復活を目指す

新田祐大は2月の全日本選抜は決勝3着と好調だったが、3月の名古屋記念を病気欠場し、ウィナーズカップはまさかの二次予選敗退に終わった。3日目特選で1着、4日目特別優秀で佐藤慎太郎とワンツーしているが、明らかに本来の調子からは遠かった。そこから1か月余りでの復活は厳しいかもしれないが、舞台がホームバンクのいわき平なのが唯一の救いだ。昨年8月にいわき平で開催されたオールスターでは五輪直後の参戦ながらしっかり優出しており、バンクとの相性が悪いわけはない。今回もホームでの復活を目指して懸命の走りを見せてくれるだろう。

新田祐大をしっかり援護しつつ自身の優出をも狙うのが佐藤慎太郎、守澤太志、成田和也の3人だ。昨年8月のオールスターでは新田とともに4人揃って優出を果たしている。佐藤はウィナーズカッブの準決で敗れたが、4日目特別優秀で新田とワンツー、2月の全日本選抜では新田とともに優出と45歳の大ベテランとなっても安定感は高い。守澤は全日本選抜の二次予選で失格、ウィナーズカップは準決敗退と流れはよくないが、二次予選は新田が不発の展開から3着に突っ込んでおり相変わらず鋭い。成田もウィナーズの準決では目標の郡司浩平が不発の展開からコースを選んで2着と巧さを見せつけている。

平原康多は全日本選抜で優出しているが、ウィナーズカップは準決で4着と敗れてしまった。準決では5番手確保から捲るも最後の直線で伸びを欠いてしまった。さすがにビッグレースの準決ともなると、ほんのわずかなタイミングのズレや脚力の消耗が敗因につながることがよくわかるレースだった。それでも平原はウィナーズカップで2勝を挙げ、直前の大垣記念では今年2度目の完全優勝を飾っており調子は決して悪くない。競輪競走と真摯に向かい合っている平原だけに、ウィナーズカップで見つかった問題点を今回までしっかりと修正してくるだろう。

2月・取手の全日本選抜では優出者が平原康多ひとり、3月・宇都宮のウィナーズカップも優出者は神山拓弥ひとりと関東地区の選手たちにとっては寂しい結果になった。それでも神山の優出は自身の好調さもあるし、準決でコースを探して2着に突っ込んできた走りも見事だったが、やはり勝ち上がり戦で眞杉匠や平原康多と連係できことが大きい。眞杉匠と坂井洋の栃木の2人は地元戦で気負いすぎた印象だったが、S級S班の吉田拓矢もいるのだからうまく噛み合えば中四国勢に負けない充実のラインになるはずで、今回は関東勢の巻き返しに期待したい。

新田祐大
(福島 90期)
佐藤慎太郎
(福島 78期)
平原康多
(埼玉 87期)
神山拓哉
(栃木 91期)

郡司浩平がグランプリ出場を目指して巻き返す

郡司浩平は2月の全日本選抜に続き3月のウィナーズカップでも準決で敗れて優出とはならなかった。直前の大垣記念では決勝こそは7着だったが、二次予選と準決は得意の捲りで連勝しており調子は決して悪くはないはずだ。ウィナーズカップの勝ち上がり戦では連日中四国勢の2段駆けに苦しまされていた印象だった。もちろん郡司はタイトルホルダーの意地があるだけに、今回はしっかりと対策を練ってきてくれるはずだ。今年は地元地区の平塚でグランプリが開催されるだけに、もはや一戦たりとも取りこぼせないという強い気持ちで優勝を目指してくるだろう。

深谷知広は全日本選抜に続いてウィナーズカップでも優出を果たしたが、全日本選抜決勝は単騎、ウィナーズカップ決勝は成田和也との即席ラインで南関東の選手からの援護を受けられなかったのはやはり寂しい。それでもウィナーズカップ決勝では中四国ラインの2段駆けに苦しめられながらも5番手からの捲り追い込みで3着、準決も8番手の絶体絶命の展開から3着と底力を見せつけている。昨年8月にいわき平で開催されたオールスターでも決勝は単騎となったが、連日の先行策で優出とバンクとの相性もよく、南関東の選手たちの奮起に期待したい。

浅井康太も全日本選抜とウィナーズカップで連続優出と好調だ。ウィナーズカップの一次予選は5番手からの捲り追い込みで2着だったが、二次予選は寺崎浩平の番手、準決は脇本雄太ー古性優作の3番手と近畿勢と連係できたのが大きかった。それでも準決の脇本は車間の大きく空いた7番手からの捲りとなり、浅井は追走の難しい3番手でやや離れながらも最後まで食らいついていけたのだから成績以上に調子は良いと見ていいだろう。今回も中部勢はライン的にやや手薄だが、孤軍奮闘の走りで勝ち上がっていくだろう。

九州勢は昨年11月の競輪祭以降は再浮上のきっかけがなかなか掴めないが、今回は高速バンクのいわき平が舞台だけにやはり中川誠一郎のスピードに期待したい。昨年8月のオールスターの準決は雨中の対決となったが、脇本雄太との捲り合戦で2着に入り優出とバンクとの相性いい。今年2月の全日本選抜では一次予選で9着とあっさり敗れたが、その後の3日間は3連勝と調子は悪くない。7車立てのFⅠ戦だが、3月の松山で今年2度目の優勝を飾っており、今回も得意バンクで再び輝きを取り戻してくれるだろう。

郡司浩平
(神奈川 99期)
深谷知広
(静岡 96期)
浅井康太
(三重 90期)
中川誠一郎
(熊本 85期)

バンクの特徴

直線が長めの高速バンク

周長は400m、見なし直線距離は62.7m、最大カントは32度54分45秒。06年10月にリニューアルオープンしたいわき平はクセのない標準的な400バンクだが、リニューアルに伴い見なし直線距離が旧バンクより10m長くなり、全国の400バンクの中では3番目に長い直線となったため追い込み選手有利が基本となっている。

それでも、時代に合わせた高速バンクを目指して設計されているためカントもそこそこあってスピードに乗りやすく、捲りはもちろん先行も掛かってしまえばゴール前まで粘り込めるので、直線が長くても先手ラインは決して不利とは言えない。

昨年8月に開催されたオールスター競輪では全63レース(ガールズ2個レースを除く)のうち先手ラインの選手が1着を取ったのが32回と半数を超えている。大会最大の難関である5日目の準決3個レースを見ても、9Rは地元勢を連れた深谷知広が逃げ、成田和也が1着、佐藤慎太郎が2着、深谷が3着で上位を独占している。10Rも新田祐大が逃げて守澤太志が1着、新田が2着でワンツー決着。11Rは捲った脇本雄太と中川誠一郎がそれぞれ1着、2着だったが、眞杉匠の逃げに乗った平原康多が3着に粘り込んでいる。
ちなみに昨年のオールスターの決まり手は次のとおりだ。全63レースのうち1着は逃げが9回、捲りが18回、差しが36回、2着は逃げが8回、捲りが9回、差しが24回、マークが22回となっている。

やはり差しが断然優勢だが、注目したいのは2着の決まり手で差しがマークよりも多いところだ。いわき平は直線が長く、イエローラインの内寄りと外寄りに伸びるコースがあるので、先手ラインで決まるかと思われた瞬間に外を伸びてきた選手で逆転というケースがよく見られる。

捲りも400バンクのセオリーどおりに最終2角から仕掛けると最後の直線で逆転される恐れが高くなので、バック過ぎからの遅めの捲り追い込みのほうが決まりやすい。

いわき平バンク

思い出のレース

2016年 第70回大会 中川誠一郎

熊本の中川誠一郎がGⅠ初制覇で被災地にエール

平成28年(2016年)4月14日及び16日の2度にわたり震度7の地震が発生し、熊本県は甚大な被害を受けたが、「平成28年熊本地震被災地支援競輪」として行われた第70回日本選手権競輪では熊本の中川誠一郎がGⅠ初制覇を遂げて被災地にエールを送った。決勝戦は新田祐大ー渡邉晴智ー松坂英司の混成ラインが前受け、単騎の中川誠一郎、牛山貴広、稲川翔の3人が中団、深谷知広ー吉田敏洋ー近藤龍徳の中部ラインが後方で周回を重ねる。青板3コーナーから上昇した深谷が4コーナーで誘導員を下ろして先頭に立つが、新田は引かずに吉田の内で粘り、赤板1コーナーで深谷をすくって前に出る。浮いた深谷を吉田が4番手に迎え入れたところで打鐘となり、3コーナー過ぎから再び深谷が仕掛けるが、新田も合わせて踏んで最終ホームでは両者のもがき合いとなる。新田が突っ張りきり、深谷は外に浮いて万事休す、吉田は新田ラインの3番手に切り替えるが、そのとき最後方にいた中川が一気に仕掛け、最終3コーナーで新田を抜き去ると後続を突き放して先頭でゴールイン、2着に吉田、3着に渡邉が入る。

表彰
ゴール

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