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第31回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)展望
レース展望 2022.09.28

第31回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(GI)展望

#グレードレース展望

第31回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントが2年ぶりに群馬県の前橋競輪場で開催される。今回は脇本雄太が不在で優勝争いは予断を許さないが、9月の共同通信社杯で完全優勝を達成した郡司浩平の勢いを駆って中心に押したい。グランプリ出場権をかけた賞金争いもいよいよ大詰めが迫っており、賞金の上乗せを狙う選手たちの奮闘ぶりも見どころだ。

勢いに乗る郡司浩平が強気の攻めで優勝を狙う

 開催初日のメインとなる日本競輪選手会理事長杯では5着までに入った5名が2日目のローズカップと3日目の準決へ無条件で進出できる。今年はS級S班9名が揃い踏みでラインの厚さでは3人揃った関東勢が優勢だが、北日本の2人が郡司浩平を目標にするならこちらも強力だ。もちろん捲り強烈な松浦悠士と古性優作の自在に動いての一発も侮れない。
 郡司浩平は今年のGI優出が6月の高松宮記念杯のみとやや低迷していて獲得賞金ランキングも9位と微妙な位置だったが、9月の共同通信社杯で完全優勝を達成して5位へとジャンプアップ、地元平塚でのグランプリ出場へ大きく近づいた。共同通信社杯決勝はグランプリ出場のためにも絶対に落とせない一戦だったが、そこで思い切りよく先行勝負に出た勇気と度胸は郡司ならではの走りだったと言ってよく、今回も攻めの走りで勝ち上がり、GIタイトルを取ってのグランプリ出場を目指してくる。
 関東は吉田拓矢-平原康多-宿口陽一の並びで結束だろう。共同通信社杯では平原が決勝で、宿口が二次予選Aで落車、吉田が準決で失格と不運が続いたが、3人揃ったラインはやはり強力で、高松宮記念杯の特別選抜予選では吉田の先行に乗って宿口が1着、平原が2着でワンツーを決めている。昨年弥彦で開催された寛仁親王牌の決勝では吉田拓矢-平原康多-諸橋愛の関東3車の結束から平原が4年8か月ぶりのGI制覇を達成しており、今回も関東の後輩たちとの連係から連覇に意欲を燃やしてくるだろう。
 松浦悠士は、今年はまだGIの優勝はないが、共同通信社杯終了時点での獲得賞金ランキングは2位と今年も高い位置で安定した成績を維持している。共同通信社杯の決勝は5着だったが、勝ち上がり戦は1、1、2着と得意の自在戦法での盤石の勝ち上がりだった。7月のサマーナイトフェスティバルで優勝、8月の富山記念と9月の岐阜記念を連覇と近況も好調だ。盟友の清水裕友が獲得賞金ランキングで8位と難しい位置にいるので、今回は清水のために松浦がひと肌脱ぐシーンがあるかもしれない。
 古性優作は共同通信社杯では準決で落車しているが、一次予選は東口善朋と宮越孝治を連れて5番手から捲りライン3人で上位を独占、二次予選Aは若手機動力型の多い混戦レースだったが、古性はいつもながらの上手いレースで4番手を確保して2着と相変わらずの好調ぶりだった。今回は単騎戦となるが、2月の全日本選抜と6月の高松宮記念杯を単騎戦で優勝しているだけにもちろん不安は微塵もない。ライバルたちの動きをしっかり見極めながら、最終的には好位置を確保して渾身の捲りを決めてくるだろう。
 佐藤慎太郎と守澤太志の北日本の2人は地区的な目標がいないので郡司浩平と連係するだろう。佐藤は共同通信社杯の決勝で落車したが、準決では最終ホーム9番手の展開ながら小松崎大地の捲りに乗り、小松崎が不発と見ると最終4角からは中割りを決め直線鋭く伸びて1着と相変わらず強さを発揮している。11月には46歳となる大ベテランの佐藤だが今もなお進化し続けており、年齢的にも共同通信社杯での落車の影響が気になるところだが、今回も持ち味の直線での鋭さを発揮して勝ち上がっていくだろう。

郡司浩平 神奈川 99期
平原康多 埼玉 87期
松浦悠士 広島 98期
古性優作 大阪 100期
佐藤慎太郎 福島 78期

新田祐大がグランドスラムに向かって突っ走る


 開催初日の特別選抜予選2個レースでは各レースで2着までに入った4名が無条件で2日目のローズカップと3日目の準決に進出できる。今年の特別選抜予選は新田祐大、眞杉匠、寺崎浩平、太田竜馬、山崎賢人などの強力な自力選手が揃って叩き合い必至だ。誰が最終的に主導権を握るのか、混戦を突いての追い込み選手の抜け出しがあるのか、など見どころの多いレースとなるだろう。
 新田祐大は5月の落車の影響が長引いているのか本調子とは言えない状態が続いており、9月の共同通信社杯でも準決は5番手で内に詰まったまま7着に敗れている。それでも一次予選は4番手から捲って1着で上がりタイムも11秒0をマークしており、ツボにはまったときのスピードはやはり素晴らしい。グランドスラム達成まで残すは寛仁親王牌だけと王手をかけているだけに、今回も勝ち上がり戦で苦しい場面があるかもしれないが、悲願達成を目指して新田ならではのスピードを発揮してくれるだろう。
 山田庸平は共同通信社杯の一次予選では話題の新鋭・中野慎詞の逃げを3番手から追い込んで1着と好スタートを切ったが、残念ながら二次予選Aは落車に見舞われてしまった。それでも賞金獲得ランキングではグランプリ出場のボーダーラインである9位にとどまっており、今回は賞金の上乗せを目指して奮闘してくれるだろう。6月の高松宮記念杯では準優勝、7月の佐世保記念では記念初優勝と山田は着実に力をつけてきており、20年に前橋で開催された寛仁親王牌では優出とバンクとの相性もいい。
 眞杉匠は共同通信社杯では準決で6着と敗れたが、一次予選は逃げて2着、二次予選Aも逃げて2着で平原康多とワンツー、4日目特別優秀も逃げて2着で諸橋愛とワンツーと期待どおりの走りを見せてくれた。今年は5月の日本選手権で2度目GI優出、3月の名古屋記念と6月の小松島記念を優勝と今や関東を代表する先行選手へと成長を遂げている。寛仁親王牌は20年の大会で3日目からの補充出走はあるものの本出走は今年が初めてとなるが、もちろん今回も関東勢を連れての徹底先行を貫いてくれるだろう。
 寺崎浩平はパリ五輪を目指してナショナルチームで奮闘しており、10月にパリで開催される2022トラック世界選手権の日本代表選手に選ばれている。同時に競輪でも着実に力をつけてきており、8月のオールスターでは準決を3着で突破してGI初優出を決めている。決勝は脇本雄太との連係がうまくいかず先行するも番手に松浦悠士に入られて9着に終わったが、一次予選1では7番手からの捲りで上がりタイム10秒8をマークしており、今回も世界レベルのスピードを見せつけてくれるだろう。
 太田竜馬は共同通信社杯では準決で8着と敗れたが、一次予選は8番手から捲って1着、二次予選Aは脇本雄太と郡司浩平相手に逃げて2着と調子は悪くない。今年は2月の全日本選抜と3月のウィナーズカップで優出、日本選手権、高松宮記念杯、オールスターでは準決進出とまちがいなく充実期を迎えている。ただ、ここぞというときに精神的なモロさが出て仕掛けきれずに凡走してしまうケースも少なくないのが欠点だが、スピードに関しては申し分ないし、自分の力を信じて強気に攻めていければ今回も勝ち上がりが期待できる。

新田祐大 福島 90期
山田庸平 佐賀 94期
眞杉 匠 栃木 113期
寺崎浩平 福井 117期
太田竜馬 徳島 109期



若手機動力型が積極的な走りでトップクラスに挑戦


 予選スタート組はやはり若手機動力型のまっすぐな走りが見どころだ。吉田有希は9月の共同通信社杯は二次予選Aで敗れたが、一次予選は3番手から捲って上がり11秒2の好タイムをマーク、3日目特選は逃げて木暮安由とワンツー、そして4日目特別優秀では脇本雄太を相手に逃げて番手追走の坂井洋が1着、脇本の捲りは2着まで、吉田が3着に粘っている。今回でGIは3回目の出場となるが、もちろん今回もトップクラスを相手にケレン味のない先行で関東勢を引っ張っていくだろう。
 山口拳矢は、共同通信社杯は一次予選で敗れたが、2日目特一般は8番手から捲って上がりタイムは11秒2、4日目選抜も8番手からの捲りで吉田敏洋とワンツーを決めて11秒2とGII覇者だけにさすがにスピードはいい。ただ近況はやや壁に当たっている印象で、上手く立ち回ろうとするも、それをトップクラスの対戦相手に見透かされて結局は後手に回されるという展開が多い。脚力的には申し分ないし、今回は短走路の高速バンクが舞台なだけに、より積極的な走りでのスランプ脱出を期待したい。

吉田有希 茨城 119期
山口拳矢 岐阜 117期


プレイバック 2017年 第26回大会 渡邉一成

  渡邉一成が新田祐大を目標に3度目のGI制覇


 新田祐大-渡邉一成-成田和也の福島トリオが前受け、単騎の岡村潤が続き、5番手に浅井康太-椎木尾拓哉、7番手に深谷知広-吉田敏洋-金子貴志で周回を重ねる。青板から深谷が上昇を開始すると岡村も合わせて踏んで前に出て、深谷が押さえにきたところで岡村は深谷の番手で粘る。すると浅井が青板の3コーナーで深谷を叩いて先頭に立ち、浅井を追った新田が3番手に入り、深谷が7番手となる。そのままの態勢で打鐘を迎えると浅井が先行策に出る。同時に深谷も踏み上げて番手競り勝った吉田が続くが、深谷の上昇に合わせて新田が最終ホームからスパートし、合わされた深谷は後退する。新田は難なく浅井を捲り切り、最終バックで福島3車が出切って金子と吉田の2人が必死に福島勢を追うが差を縮めることはできない。最後の直線では福島勢のマッチレースとなり、ゴール前で力強く踏み込んだ渡邉が新田を交わして優勝、新田が2着、成田が3着に入る。

バンクの特徴

 周長は335m、最大カントは36度、みなし直線距離は46.7m。前橋は日本一のカントを誇る小回り走路で、屋内バンクのために風の影響も皆無でスピードに乗りやすく、積極性の高い自力選手に向いており、基本的には先手ライン有利とされている。ただ輪界のトップクラスが集うGI戦では、やはり逃げよりも捲りのほうがやや優勢だ。
 20年に開催された寛仁親王牌の決まり手を見てみると、全48レースのうち1着は逃げが15回、捲りが19回、差しが14回、2着は逃げが6回、捲りが9回、差しが15回、マークが18回となっている。
 さすがに輪界のトップクラスが集うGI戦だけに小回り走路といえども捲りのほうがやや有利だが、19年の大会では逃げ切りが4回だけだったので、20年の大会では先行選手がかなり健闘していたことがわかる。現在ではビッグレースでも100期台の若手の活躍が目覚ましいだけに、今回も若手先行選手の力走に期待してみたい。
 先行は赤板過ぎから戦闘モードに入って打鐘で発進し、前団をうまく叩けるかどうかが勝敗の分かれ目となる。
 すんなり前団を叩いて主導権を取り切れればゴールまで粘れるが、前受けの選手に抵抗されて脚を使わされると末を欠くし、主導権争いでもがき合いになってしまうと捲りの餌食になってしまう。
 やはりカマシが一番有効だが、最近の若手はダッシュがいいので、後ろの追い込み選手が千切れて裸単騎の逃げになってしまい、別線の選手に番手に入られてアウトというパターンが前橋バンクでは多い。そのため若手選手は後ろの先輩に気を使いすぎて、自分のタイミングで仕掛けられずに不発というパターンも少なくない。
 ちなみに20年の大会の決勝は脇本雄太が上がりタイ9秒4で逃げ切って優勝、3番手から捲り上げた新田祐大が2着と力勝負の決着になっており、脇本にぴったりマークの東口善朋は3着とやはり追い込み選手にとってはやや厳しいバンクとなっている。

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