第40回読売新聞社杯全日本選抜競輪が5年ぶりに豊橋競輪場で開催される。脇本雄太の逃げに乗って2度目のグランプリ優勝を飾った古性優作率いる近畿勢が中心となるが、郡司浩平率いる南関東勢や眞杉匠率いる関東勢もライン的には強力で固い決意で巻き返しを狙ってくる。グランプリでは単騎戦ながら2着に突っ込んだ清水裕友や先行職人の新山響平もやはり侮れない存在で、今回も少数精鋭になってしまった地元中部勢の奮起にも注目したい。
グランプリ覇者の古性優作がシリーズをリードする
新しい年のGI戦線がいよいよスタートする。昨年前半は2月の全日本選抜で郡司浩平、4月の日本選手権では平原康多と復活優勝が続き、6月の高松宮記念杯では北井佑季が初タイトルを獲得と、相変わらずS級S班を始めとする上位陣の成績が安定せず混戦模様の流れが続いた。しかし、8月のオールスターで古性優作が優勝してから流れは近畿一強へと変わった。10月の寬仁親王牌も古性が優勝、11月の競輪祭は脇本雄太が優勝、そしてグランプリも脇本の逃げに乗った古性が優勝している。年が変わっても近畿一強が続いていくのか、それとも他地区の巻き返しがあるのか、今年のGI戦線の流れを占うためにも今大会は決して見逃せない4日間となるだろう。
古性優作は1月の和歌山記念では初日特選3着だったが、二次予選は7番手からの大捲りで2着、準決も二次予選と同様の7番手からのロングスパートで1着、決勝は6番手と後手を踏んだが捲りで優勝と今年も好スタートを切っている。しかし、次場所の松坂記念決勝では中団で山田庸平にハジかれて7番手となって6着に終わっており反省点の多いレースとなってしまった。それでもタテ脚のスピードはもちろん混戦を切り抜ける体幹の強さとハンドル捌きは唯一無二であり、今回も万人が認める優勝候補の筆頭だ。
脇本雄太は11月の競輪祭で約2年ぶりのGI優勝を飾り、グランプリでは結果は3着ながら別線の反撃を一切許さない豪快な先行で古性優作を優勝に導いた。もちろん今回も脇本と古性の近畿コンビがシリーズを引っ張っていくだろう。ただ1月の大宮記念では初日特選が森田優弥に寺崎浩平の番手を捌かれて9着、決勝も寺崎の番手で佐々木眞也に競られて7着とヨコに弱いのが弱点だ。さらに次場所の松阪記念は病気欠場と体調面もやや気がかりで、今回も近畿の後輩たちと連係したときにどう対処していくかに注目したい。
地元中部は今回も出場予定選手が7人のみとライン的には劣勢だが、個々の選手の能力は他地区には決して劣っていない。エースの浅井康太は昨年2月に岐阜で開催された全日本選抜と11月の競輪祭で優出と不惑の年を迎えたベテランはまだまだ健在だ。山口拳矢もS級S班から陥落したが、1月の立川記念では藤井侑吾の逃げに乗っての番手捲りで優勝と幸先のいいスタートを切っており、展開がうまく噛み合えばやはり強い。山口を優勝に導いた藤井侑吾は中部期待の新星で、今回も中部勢を引っ張っての活躍が期待できる。
充実の機動力を活かして郡司浩平が連覇を狙う
郡司浩平はグランプリでは仕掛けきれずに4着に終わったが、その悔しさから今年はすべてのレースで1着を狙って走ると力強く宣言、1月の立川記念では決勝は2着だったが、勝ち上がり戦は3連勝で突破している。次場所の松阪記念では深谷知広との連係から宿敵の古性優作を下して完全優勝、さらに追加出走の高松記念の決勝では犬伏湧也の捲りを追って2場所連続優勝を決めている。昨年の大会では2度目の全日本選抜制覇を達成しており、今回も充実の南関東の機動力との連係から連覇を狙う。
眞杉匠は昨年は7月のサマーナイトフェスティバルと9月の共同通信社杯を優勝しているが、GIでは思ったような結果が残せず優出は8月のオールスターのみだった。GIIの優勝があるので調子は悪くなかったはずだが、GIでは自分の思い描いている走りと実際のレース展開がうまく噛み合っていないようだった。グランプリでも好位置を取りにいったはずが押さえられたときに引くか突っ張るかで迷ったのが一番の敗因だろう。GIを2度制覇している自分の脚を信じて、今回こそは小細工無用の攻めの走りを期待してみたい。
平原康多は5月の日本選手権で復活優勝を遂げたが、後半戦は立て続けの落車に悩まされてグランプリも8着に終わった。それでも1月の立川記念では4日間勝ち星はなかったが、二次予選は菊池岳仁の捲りに乗って2着、準決も菊池の逃げに乗って3着で突破と善戦、長年競輪界を引っ張り続けてきたトップレーサーの底力を見せつけている。続く大宮記念では準決でまたもや落車に見舞われてしまったが、関東の後輩たちから慕われている人格者の平原だけに、今回も後輩たちの助けを借りて勝ち上がりを目指していく。
冬場が得意な清水裕友が復活の走りを目指す
清水裕友は昨年はGIの優勝はなかったものの前半は絶好調で、獲得賞金でグランプリ出場を決めた。後半に入ってからは失格や落車などでリズムを崩してしまったが、それでも清水は冬場の重いバンクを得意としているパワーの持ち主で、グランプリでは単騎戦ながら2着と健闘している。1月の立川記念では途中欠場、その後も2場所連続で病気欠場しているのが大きな不安材料だが、昨年の大会では5番手からの捲りで準優勝しており、今回もしっかりと立て直しを図ってパワフルな走りを見せてくれるだろう。
犬伏湧也は昨年は7月の小松島で地元記念初優勝を達成するなど年間を通して好調を維持しているが、GIとなると準決敗退が続いていた。しかし、10月の京王閣記念で古性優作、眞杉匠、新山響平らを相手に9番手からの大捲りで優勝して勢いに乗り、11月の競輪祭の準決では打鐘の8番手からスパートして北井佑季、眞杉匠らを叩き切って松浦悠士とワンツーを決め、決勝も脇本雄太の捲りを追って準優勝と健闘している。今年1月の高松記念でも準決を逃げ切りで突破しており、今回も先行・捲りでの活躍が期待できるだろう。
新山響平は昨年の優勝は11月の四日市記念の1回のみだったが、2月の全日本選抜、6月の高松宮記念杯、8月のオールスター、10月寬仁親王牌で優出と持ち味の突っ張り先行で活躍し3年連続のグランプリ出場を果たした。グランプリは5着に終わり、1月の和歌山記念ではまさかの二次予選敗退、次場所の高松記念も準決敗退となっているが、二次予選は突っ張り先行で逃げ切りと調子は悪くない。今回も競走スタイルを変えることなく連日レースを支配してくるだろうし、北日本の追い込み勢の奮起にも注目したい。
山崎賢人は10月の世界選手権のケイリンで優勝と脚力的にはまちがいなく世界レベルなのだが、本業の競輪ではそれが活かされていないのがもどかしい。11月の競輪祭では二次予選Bで敗れているが捲って2着と強いところを見せている。しかし、その他の4走は打鐘とともに暴走気味に仕掛けて主導権を取りにいき、ことごとく末脚を欠いているのが残念だ。それが山崎らしいと言えばそれまでだし、九州の追い込み勢にとっては頼れる仲間だが、もう少しタイミングを計って仕掛けられれば先行での勝ち上がりが望めるだろう。
プレイバック 2020年 第35回大会
松浦悠士の逃げに乗って清水裕友がGI初優勝
三谷竜生-村上博幸の近畿コンビが前受け、3番手に松浦悠士-清水裕友の中国コンビ、5番手に平原康多-佐藤慎太郎の即席コンビ、7番手に郡司浩平-和田健太郎の南関東コンビ、最後尾に山田英明の並びで周回を重ねる。青板3コーナーから上昇してきた郡司が赤板ホームで三谷を押さえるが、郡司を追ってきた平原がさらに押さえて先頭に立つ。すると5番手に引いていた三谷が再び上昇して平原を切ったところで打鐘を迎える。さらに三谷の仕掛けに合わせて動いてきた松浦が一気にスパートして主導権を奪い、三谷は3番手に入り、5番手に山田、6番手に平原、8番手に郡司の並びで通過していく。三谷は動けず、バックから山田が捲っていくが、合わせて清水が3コーナーから番手捲りを打つ。山田はスピードよく迫るが、4コーナーで三谷と接触して失速、続いて山田の仕掛けに乗ってきた平原が最後の直線で鋭く伸びてきてゴール前では清水とのハンドル投げの勝負となるが、清水が4分の3車輪差で優勝、平原が2着、山田が3着に入る。
バンクの特徴
冬場から春先にかけては風が強くてタイムが出にくい
周長は400m、最大カントは33度50分22秒、見なし直線は60.3m。400バンクの中では直線が長めでカントもややきついが、基本的にはどんな脚質の選手でも十分に力を発揮できるクセのないバンクとなっている。
ただし冬場から春先にかけては風の強い日が多く、強烈なバック向かい風に選手たちは苦しめられることになる。
2020年2月に開催された全日本選抜では4日間晴天に恵まれたが、連日風速3m前後の強い風が吹いていた。そのためか大会のベストタイムは初日2Rの一次予選で小松崎大地が8番手から捲ってマークした11秒3だ。初日5Rにも11秒4の上がりタイムが出ているが、全48レースのうち11秒台前半のタイムはこの2回だけで、残りは11秒台後半が22回、12秒台が24回となっている。
2020年の大会の決まり手を見てみると、全48レース(1回の2着同着を含む)のうち1着は逃げが4回、捲りが29回、差しが15回、2着は逃げが5回、捲りが8回、差しが16回、マークが20回となっている。
捲りが圧倒的に優勢で、差しの1着が捲りの1着の半数しかないのはかなり珍しい。強風のために自力型のタイムが上がらず直線が長いので追い込み型が有利のように思えるが、あまりにも風が強いので前を追走するのがキツくて差し切るまではいかないのである。もちろん先行選手も苦しく、逃げ切りは4回出ているが先手ラインの選手が1着になった回数は13回しかない。
捲りも400バンクの定石どおりに最終2角から仕掛けるとスピードに乗れずに捲れない。ほとんどが3角からの捲り追い込みで、直線が長いので大外のイエローラインあたりを伸びて捲り切ることができるし、番手の選手も追走一杯になっているので差される心配も少ない。
ちなみに2020年の大会の決勝は松浦悠士の逃げに乗った清水裕友がやはり3角から番手捲りを打ち、平原康多の追撃を振り切ってGI初優勝を飾っている。