月刊競輪WEB

検索
第75回 高松宮記念杯競輪(GI)展望
レース展望 2024.05.29

第75回 高松宮記念杯競輪(GI)展望

 第75回 高松宮記念杯が岸和田競輪場で開催される。昨年の大会から25年ぶりに6日制へと変更され、前半3日間はガールズケイリンのGI・第2回パールカップと同時開催となる。勝ち上がり戦は従来どおりの東西対抗戦だが、一次予選はポイント制で特別選抜予選は廃止されており、全員が一次予選を2走しての合計ポイントで二次予選進出者が決定される。そして東西の合計ポイントの上位者はそれぞれ4日目の青龍賞(東日本)と白虎賞(西日本)へ進出でき、全員が失格しないかぎり5日目の準決へフリーパスとなる。準決は東西2個レースずつの4個レースで、それぞれのレースで2着までに入った8名と3着の1名が晴れて決勝へ進出できる。

古性優作が地元GIの3連覇に挑む


 岸和田競輪場は3年前の大改修を経て日本有数の高速バンクに生まれ変わったために自力型に有利だ。昨年の準決では4個レースのうち3個レースで捲りの選手が1着になっており、4個レースすべてが11秒台前半の上がりタイムで決まっている。そのため決勝メンバー9名のうち7名が自力選手で追い込み選手は今年も苦しい戦いを免れないだろう。もちろん一次予選は2走してのポイント制なので6日間で5走しなければならないのは厳しいし叩き合いも避けられないだろうが、スピード自慢の自力選手の火花散る叩き合いは見る者を圧倒してくれるだろう。

    

古性優作(大阪100期)


 優勝候補の筆頭には地元の古性優作を推したい。昨年の大会では脇本雄太の先行に乗って高松宮記念杯連覇を達成しており、今年も地元ファンの熱い声援に応えるために3連覇の偉業を狙ってくる。5月の日本選手権を見るかぎりでは本調子を欠いている様子だったが、それでも決勝では3着に突っ込んできたのはさすがとしか言いようがない。脇本雄太が欠場続きで体調面が大いに不安だが、輪界を代表するオールラウンダーの古性はもちろん自力でも勝てる力があり、地元戦に向けてきっちり仕上げてくるだろう。

  

寺崎浩平(福井117期)


 寺崎浩平は4月の川崎記念の二次予選で2着でゴールイン後に落車して3日目以降は欠場しており、その影響が少なからずあったのか日本選手権の準決では眞杉匠に主導権を奪われ仕掛けきれずに8着に敗れている。それでも一次予選は7番手から捲っての1着で上がりタイムは10秒6をマーク、二次予選は北井佑季の逃げを捲っての2着で浅井康太とワンツーを決めており、ナショナルチームで鍛え抜いた脚はやはりダテじゃない。今回も脇本雄太や窓場千加頼とともに近畿ラインを引っ張っていく。

  

清水裕友(山口105期)


 清水裕友は今年はまだビッグレースでの優勝はないが、2月の全日本選抜が決勝2着、3月のウィナーズカップが決勝3着、日本選手権が決勝6着と引き続き好調だ。とりわけ日本選手権の準決で新山響平の逃げを6番手から捲り切った走りは豪快そのものだった。ただ盟友の松浦悠士が離れてしまったのは大誤算で、決勝で清水が苦しい戦いを強いられたのは残念だった。それでもグランプリ覇者の松浦がしっかり立て直してくれれば清水にとっては頼もしい援護となるし、中国コンビが一躍優勝候補に躍り出る可能性も十分だ。

  

平原康多の復活優勝で関東ラインが勢いづく

平原康多(埼玉87期)


関東勢がついに失地回復に成功した。2月の全日本選抜では関東勢からの優出がゼロ、3月のウィナーズカップでは坂井洋ただひとりが優出と寂しい状況だったが、5月の日本選手権では関東勢が一挙に5人も優出した。関東勢は二手に分かれたが、小林泰正の逃げを叩いた吉田拓矢の番手から抜け出した平原康多が3年ぶりGI制覇を達成した。関東の後輩たちが平原さんをもう一度S級S班に送りたいという熱い思いが溢れたレースだったと言ってもよく、今回も平原を中心に結束する関東勢の進撃が続いていくだろう。

  

吉田拓矢(茨城107期)


 日本選手権ではGI初優出を決めた小林泰正も素晴らしかったが、優出を逃したものの平原康多や吉田拓矢の勝ち上がりに貢献した眞杉匠や坂井洋も与えられた役目をきっちりこなしていた。そして誰よりも平原の復活優勝の立役者となったのは吉田拓矢だろう。吉田はスピード的には眞杉や坂井にやや引けを取るかもしれないが、なんといってもレースが上手い。日本選手権では自力での勝ち上がりはなかったが、苦しい展開を巧みな捌きでしのいで優出、決勝での仕掛けのタイミングも絶妙だっただけに今回も活躍が期待できる。

  

深谷知広(静岡96期)


 深谷知広は日本選手権の準決では岩本俊介を連れて逃げて7着と敗れたが、二次予選では2着に9車身の差をつける圧勝劇で逃げ切っており、全盛期を彷彿とさせる怪物パワーが完全に戻っている。次場所の武雄記念では初日特選は7着だったが、二次予選と準決は逃げ切り、決勝は初手は根田空史の番手で山田英明にインからすくわれる苦しい展開もあったが、最後は自力に転じて清水裕友の逃げを捲って今年初優勝を飾っている。安定感はまだいまいちの印象もあるが、今回も怪物パワーを存分に発揮してくれるだろう。

  

北井佑季(神奈川119期)


 北井佑季は南関東の次代のエース候補と目されている逸材だが、ビッグレースに出場しはじめてからまだ1年余りと経験不足なのは明らかで、一度つまずいたあとの修正能力に難があるのは否めない。日本選手権の特選予選では一度は先頭に立つも山口拳矢にイン切りされると突っ張る気配も見せずに後退して7着、二次予選も特選予選の失敗で意地になったのか打鐘から大逃げを敢行するも力尽きて7着だった。それでも敗者戦では1着1回、2着1回と決して調子は悪くないだけに今度こその奮起を期待したい。


山口拳矢と浅井康太の自在コンビが侮れない

山口拳矢(岐阜117期)



 山口拳矢は昨年5月の日本選手権でGI初優出で初優勝の快挙を成し遂げたが、その後は7月のサマーナイトフェスティバルでの優出はあるもののGIでの優出は途絶えて波に乗り切れなかった。今年の日本選手権の二次予選では松井宏祐の逃げを後番手から捲って2着、準決では眞杉匠の逃げを6番手から捲り番手から抜け出した平原康多の上を乗り越えて1着と切れ味が戻っていた。ムラっけな山口だけに絶対とは言えないが、今年こそは日本選手権での勢いをキープしてGI連続優出を狙ってくるだろう。

  

浅井康太(三重90期)


 浅井康太は地元地区の全日本選抜の準決では最終バック8番手の苦しい展開から直線での中割り強襲で優出を決めている。日本選手権では準決で8着と敗れて優出はならなかったが、二次予選では寺崎浩平の捲りを差し切って1着と好調をキープ、次場所の武雄記念では決勝は4着だったが、準決では逃げる深谷知広の番手を捌いて志田龍星とともに深谷の番手に収まり、志田が2着、浅井が3着で優出とファインプレーを演じている。中部は今回もライン的に劣勢だが、山口拳矢と浅井康太の自在コンビの一発がやはり侮れない。

  

新山響平(青森107期)


 日本選手権では残念ながら地元の北日本勢の優出がゼロに終わってしまった。新山響平は相変わらず徹底先行を貫いて調子も悪くなく、準決でも北日本ラインを連れて逃げているが、追い込み勢の援護がなく清水裕友と小林泰正に捲られて6着だった。次場所の函館記念も新山は過去に2回優勝している好相性のバンクだが、北日本勢からの優出は佐藤慎太郎だけだった。やはり新山ひとりで北日本勢を引っ張り続けるのは大変で、今回は新田祐大が斡旋停止から復帰してきてかつての勢いを取り戻せるかどうかに注目したい。

  

伊藤颯馬(沖縄105期)


 九州も北津留翼、山田庸平、嘉永泰斗とスピードのある選手はいるが、捲り主体の戦法なので安定感がなく、日本選手権では九州勢の優出はゼロに終わった。そこで期待されているのが徹底先行で売出し中の伊藤颯馬だ。伊藤は3月のウィナーズカップでビッグレース初優出を決めているが、日本選手権では一次予選敗退と脚力的にはまだまだ物足りないが、次場所の武雄記念では一次予選と二次予選は逃げて九州ワンツー、準決は8着ながら山田英明の勝利に貢献しており、今回も九州の頼れる先導役となるだろう。



プレイバック 2018年 第69回大会 三谷竜生
脇本雄太の逃げに乗って三谷竜生がGI連覇

 

 脇本雄太―三谷竜生―村上博幸の近畿トリオが前受け、4番手に原田研太朗―山田英明の四国と九州のコンビ、6番手に単騎の菅田壱道が続き脚を溜めての一発狙い、7番手に吉澤純平―武田豊樹―木暮安由の関東3車だが、譲れない木暮は戦前から吉澤の番手狙いを宣言していた。青板周回のホームから木暮が宣言どおりに武田の外に追い上げると武田は車を下げるが、吉澤がバックから上昇し、先頭に立って誘導員を下げると武田が内をすくって木暮との競り合いがはじまる。関東勢の上昇に合わせて原田が続き、菅田が6番手となり、押さえられた脇本は7番手まで引いていたが、打鐘前の2コーナーから一気に踏み込んで反撃を開始する。脇本のスピードはよく、吉澤は外にいた木暮のせいで脇本の姿が見えずあっさりと叩き返されてしまう。打鐘の4コーナーで近畿3車が出切り、1車身離れて吉澤、さらに1車身離れて木暮と武田の縦長の展開となって最終ホームを通過し、後方の選手たちは為す術がなくなってしまう。さらに3番手の村上も徐々に遅れだし最終バックでは4車身ほどの差がついてしまい、完全に前2人のマッチレースとなってしまう。三谷は最後までしっかり脇本を追走し、ゴール前で脇本を2分の1車輪交わして5月の日本選手権に続いてのGI連覇を達成する。前を必死に追いかけてきた吉澤は4コーナーで村上に追いつくがその上を捲り追い込んできた原田が3着に入る。


  

日本有数の高速バンクで捲りが絶対的に有利


 周長は400m、最大カントは30度56分00秒、見なし直線距離は56.7m。岸和田競輪場は2年近くに渡る大規模改修工事を経て2021年5月にリニューアルオープンしたが、スピードに乗りやすい高速バンクとなっている。
 昨年6月に開催された高松宮記念杯のベストタイムは一次予選1で脇本雄太が7番手から捲って叩き出した10秒6だが、そのほかにも6日間の開催で合計7回の10台の上がりタイムが飛び出している。
 とにかく日本有数の高速バンクなので捲りが圧倒的に有利で、自力型も追い込み型もスピードのある選手でないと勝ち上がりは難しい。昨年の大会の最難関である5日目の準決の結果を見てみると、9Rは古性優作が6番手から捲っての1着で上がりタイムは11秒3、10Rは4番手から捲った松井宏祐が1着で11秒3、11Rは7番手から捲った脇本雄太が1着で11秒0、12Rは深谷知広の逃げに乗った郡司浩平が1着で11秒3で、結果決勝に乗った9人のうち純然たる追い込み型は佐藤慎太郎と稲川翔の2人だけだった。
 昨年の大会の決まり手を見てみると、全60レース(同時開催のガールズを除く)のうち1着は逃げが7回、捲りが23回、差しが30回、2着は逃げが11回、捲りが8回、差しが17回、マークが24回となっている。先手ラインの選手が1着取った回数は3分の1弱の19回で、数字だけを見ると先行選手もかなり健闘しているように思えるが、そのほとんどは時間帯の早いレースか敗者戦で、レースのグレードが上がるとやはり先行は苦しい。ただ新山響平は4日目8Rの二次予選で逃げ切り、5日目10Rの準決では逃げ粘りの2着で決勝進出とさすがの先行力を見せつけている。
 ちなみに同時開催の第1回のパールカップを見てみると、ベストタイムは2日目11Rの準決で児玉碧衣が3番手から捲って叩き出した11秒7だ。児玉は初日9Rの予選は11秒9で逃げ切り、決勝も12秒1で逃げ切って完全優勝を達成している。






この記事をシェア

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE

related articles