競輪界で「一番いい人」と評されることも多い三宅達也。レース後に声を荒らげる姿を見たことは一度もなく、失敗した先行選手を叱責する場面にも遭遇したことがない。
「終わったことは、しゃーない。みんな頑張っているから、その気持ちだけで十分ですよ」
常に周囲への感謝を口にする人格者である。
先日の地元・玉野GⅢでは決勝に進出。野口裕史、同い年の海老根恵太の後ろを固める3番手を回り、バックでは先手ラインの絶好位を確保した。しかし、中団から安彦統賀がまくり上げ、最後は志村龍己が優勝。三宅は4着に終わった。
この協賛GⅢは、決勝で3着以内に入れば小倉競輪祭の出場権を獲得できる重要な一戦だったが、その切符にはあと一歩届かなかった。それでも悔しさを表に出すことなく、レース後は晴れやかな表情を見せた。
「野口君と海老根君が、あれだけのレースをやってくれた。気持ちは十分に伝わってきたし、本当にうれしかった」
そんな言葉が自然と出てくるのが三宅達也という男である。
かつては徹底先行で鳴らし、GⅠ戦線でも活躍。GⅡの東西王座戦や共同通信社杯では決勝進出を果たした。特別競輪の決勝にはあと一歩届かなかったものの、記念競輪優勝の実績を持つ実力者だ。
今回の決勝では、野口裕史―海老根恵太の千葉勢の後ろを回るか、それとも野中龍之介―岡村潤の南関ラインを選ぶかで熟考していた。
「結論は海老根君が同級生だから千葉勢の後ろ。ただ、昔、彼の地元で粘ったことがあってね(笑)」
そう語った三宅の言葉を受けて調べてみると、それは平成24年の千葉記念決勝だった。
南関ラインは小埜正義―海老根恵太―石毛克幸―大木雅也―勝瀬卓也の5車結束。二分戦のレースで三宅はシビアに地元ラインを分断し、海老根を飛ばす競走を敢行。そのまま直線で差し切り、記念優勝を飾っている。
当時、普段の温厚な人柄を知る者ほど、このレース内容には驚かされたものだ。
さらに前橋FⅠでは、同期の小林大介を相手にイン粘りから競り勝ったこともある。普段は紳士そのものだが、ひとたびレースになれば勝負師のスイッチが入る。そのギャップこそが三宅達也の大きな魅力でもある。
7月7日で49歳を迎えるが、現在の脚勢を見る限り衰えは感じられない。むしろFⅠなら、まだ優勝を積み重ねても何ら不思議ではない。円熟味を増したベテランの走りは、これからも多くのファンを魅了してくれるだろう。