準優の壁は厚かった。それでも野口は確かな手応えをつかみ、明るい表情を浮かべた。
吉田拓矢が優勝した静岡記念。一次予選は打鐘から一気に仕掛け、ライン3車が出切って主導権を握った。橋本凌汰のまくりを自らけん制。結果的に長島大介にはまくられはしたが、3着に逃げ残った。
「自分が持つ感じで仕掛けることができた」
二次予選進出を決め、納得の表情を浮かべた。
二次予選は、新田祐大・佐藤慎太郎というビッグネームとの対戦。ここでも野口は打鐘過ぎから渡辺雄太を連れて先行。3番手に福島勢が入る最悪の展開も、スピードは衰えなかった。
「結果的に踏み出すのが少し遅れたから3着に残れたと思う。雄太から『打鐘で相当踏んでいました』って言われたけど、自分ではそんなに踏んでなかった。そういうふうに見られるのは、自分が思っている以上に状態がいいんだろうなと思いました」
勝負がかかった準優。自分のタイミングである打鐘から仕掛けたが、杉浦侑吾―吉田に突っ張られ万事休す。
「突っ張ってくるだろうとは思っていた。出切れないのは自分に力がない証拠です」
潔い言葉だった。最終日は4着で開催を終えたが、野口らしいパワフルな走りは見られた。
昨年は左膝を痛め、長いスランプに陥っていた。もがけばもがくほど左膝は悲鳴を上げ続けた。そんなどん底を救ったのは、桐山敬太郎のアドバイスだった。
「左膝をかばいすぎるから、その分、腕に力が入りすぎていた」
それを桐山に話したところ、もっと腕に力を入れた方がいいとのことだった。
「逆の発想とでも言うのかな。もっと腕に力を入れたら、脚にもきて、それがいい感じで踏めるようになった。言葉で言うのは難しいけど」
それからは不思議と腕と脚のバランスが良くなり、自分が思い描いた競走が戻ってきた。
「記念の準優が壁になっているけど、純粋な力勝負ができれば戦えると思っている。」
と自信をのぞかせた。
現在の競走得点は101点台だが、ライバルたちはそうは思っていない。
「いやいや、そんなことはないです」
と謙遜したが、戦う方にとっては嫌な存在であることは間違いないだろう。左膝の心配がなくなった今、競走得点もさらに上昇していくことだろう。