7月3日に終わった小松島記念は真杉匠の優勝で幕を閉じた。大会前の注目は、本格デビュー丸1年で地元記念初参戦を果たした犬伏。この1年間の快進撃については今さら触れるまでもないが、過去2度のGⅢでは結果を出せていないだけに、どこまでやってくれるか期待が高まった。
初日・一次予選は師匠の阿竹智史と今野大輔を連れて、最終ホームから一気の巻き返し。ライン3車でしっかり主導権を握ると、上がりタイム10秒7のハイラップで押し切り勝ち。3度目の連係で、初めて師弟ワンツーを決めた。「直前の高松FIで試した新車がしっくり来て、戦える状態。後ろが師匠だったし、中途半端なことはできないと思ったのが裏目に出て、踏み出しは悪かった。でも後ろを確認する余裕もあったし、最後も踏み直せた」と堂々としたもの。それでも「組み立てはもう少しうまくやりたい」と反省も口にした。
まさか、が起こったのは2日目。二次予選は松浦悠士―柏野智典―峰重祐之介が付いて4車の大本線。他ラインが警戒してくるのは当然だったが、小林稜武に押さえ込まれて仕掛けのタイミングが狂った。最終ホーム手前からいつものように猛スパートをかけると、柏野以下が離れて、出切った時は松浦と2車に。松浦も懸命にかばったが、末を欠いて5着に沈み、勝ち上がりの権利を失った。「人気になっていたし、自分が勝ち上がらなければいけないレースだった。単純に力不足。甘かった」と肩を落とした。
だが、ここでへこんでしまわないのが犬伏らしい。3日目は打鐘2コーナーから豪快なかまし先行で圧勝。「出切るまでに脚を使ってキツかったが、出切ればバックの追い風があるし、そこでもうひと加速できればと思って。しっかり踏み直しもできた。直前に師匠と練習してきたことが出せたと思う」と、明るい表情を取り戻した。同県選手によれば、犬伏のダッシュは一歩目でグンとかかるのではなく、グン、グン、グンと三歩でスピードを乗せる感じだという。それがこの日は、グンとワンタイミングで行ってしまった。普段はラインで決めることを身上にしている犬伏だが、ここぞのダッシュ力はやはり破壊力抜群。マーク選手が追走に手を焼くのもやむを得ない。
最終日も前受けから突っ張り先行に出てほぼ2周の押し切り。終わってみれば3勝と、あらためて強さをアピールできた。悔やまれるのは2日目の直線失速だが「二次予選がどうとかってことじゃない。調整の仕方、ペース配分…自分の甘さが、そこで出てしまったってこと。甘さがあれば、どこかで出てしまう。そこさえちゃんとできれば問題ないと思う。もちろん悔しい気持ちはある。それを忘れたら伸びしろはない。でも今回は、師匠や大師匠(阿竹の師匠=小倉竜二)と一緒だし、S班の松浦さんもいてたくさんアドバイスももらった。今後につながると思うし、3日目と最終日は魅せる競走もできた」と、さらなる成長を誓う。
本格デビューを直前に控えた1年前の犬伏は「来年、地元記念を走れたらいいとは思っていたが、それはまだ夢の段階だった」と、自分の将来は見えていなかった。だが着実に実績を重ね、さらに大きな経験となった今大会を経て、今後は玉野「サマーナイトフェスティバル」、西武園「オールスター」と、初のGII、GIが控える。「目標はしっかり力を出し切ることだけ。そこに向けてしっかりやっていくつもり。でも、まだまだ課題は山積み。落ち込んでいる暇はないんです」。大胆に、冷静に、タイトル目指してはばたいていく。