渋いマーカーとして長らくS級1班で戦ってきた北村貴幸。群馬勢で言えば、GⅠ覇者の稲村成浩(69期・引退)や清水敏一(67期・引退)と同級生で、まだ群馬にS級の層が厚く、血気盛んな時代を生きてきた一人だ。だが北村自身は温厚な人柄で、走りは別として“ガツガツ感”とは無縁のタイプだった。
そんな北村を突然、病魔が襲った。
「落車して病院に運ばれたとき、検査で大腸癌が見つかったんです。もしあの落車がなければ、今どうなっていたか分からない。診断はステージ1で、すぐにダビンチ(ロボット支援手術)で20センチほど切除しました。完治したと思って走り始めたんですが、すぐに肝臓への転移が判明して……。医師も“ステージ1からの転移はレア”と言っていたほどです。その後は抗がん剤の副作用もなく、1年かけて復帰しました」
今は「走れるだけで幸せ」と笑う北村だが、この開催2日目は単騎戦から4番手中割りで鋭く伸び、2着に強襲。
「たまたまかもしれないけど、嬉しい2着でした。みんな心配してくれるけど、思った以上に走れています」
弟子に篠田幸希(123期)を持ち、長男も現在、養成所で鍛錬中だ。
「息子の成績はよく分からないけど、何勝かはしているみたい。女房は整骨院をやっていて、本当に感謝しています。もう5歳の孫がいる“おじいちゃん”ですけど、お小遣いもあげなきゃいけないし、稼がないと(笑)」
ギターとカートを愛する趣味人でもある北村貴幸。家族に支えられ、再び走る喜びを胸に、競輪道をひたむきに歩み続けている。