競輪選手にとって100、200、300、400、500と節目の勝利は嬉しいものだ。逆に100勝できずに引退する選手もいるし、プロの世界は生存競争が激しく厳しいのだ。陸上のハンマー投げで日本チャンピオンに輝いたこともある野口裕史が、GⅢ「開設76周年記念京王閣競輪ゴールドカップレース」3日目の選抜戦で記念すべき300勝を達成した。
「嬉しいことは嬉しいです。もっと早く達成できるんじゃないかと思っていましたが、左膝のケガとかで時間がかかりました」。記念すべきレースは、本来の自力ではなく南関ラインの後輩・日高裕太(静岡)の2番手となった。野口の番手戦に一抹の不安もよぎったのだが、若手の意志を尊重してのことだった。
レースは幸田望夢(栃木)と高田修汰(福井)の先行争いになり、日高は8番手からの仕掛け。行こうと思った矢先に、前で落車のアクシデント。日高は大きく外に避けたが、野口は内に逃げて難を逃れた。そのままの勢いで1コーナー6番手から踏み出し後続を千切ってゴールした。当人はアクシデントもあり喜びを表面にはあまりださなかったが、300勝は300勝である。
「勝ち上がりで決めていれば格好よかったんですけど。それでもよくここまで頑張ってこられたと思います」。2017年7月にデビューしてから8年3か月での達成であった。現状は競走得点が97点台。「選手仲間から『体が小さくなったよね』と言われて。このままじゃだめだと思い、しっかりトレーニングします」と前向きだった。左膝の状態も徐々に良くなってきていたが、最終日は落車の憂き目にあった。たらればは禁句だが、ケガさえなければと思ってしまう。パワーレーサーであるがゆえに肉体への負担は想像以上に大きいが、350、400勝に向かって一歩一歩、進んでいってほしい。