9車立ての競走は2回目の中川。1月の大宮記念で経験済みだが、この時は「昨年末から調子が悪かったままS級に上がって」と、⑨③⑨⑦とグレードレースの洗礼を受けていた。だが、そこから徐々に調子を上げて迎えた平塚記念。一次予選の相手は坂本貴史、橋本優己。競走得点も96点台の中川に対し坂本、橋本は102点台。追い込みでは笠松信幸が109点台、竹内智彦が107点台。
その中で中川が魅せた。インをすくって中団をキープすると、ホームから一気に踏み上げ果敢に先行。マークした西岡拓朗が離れるほどの大逃げだった。「行けるところから行こうと思っていたから。1着に粘れないのは力不足です」と、2着にも逃げ切れなかったことを反省した。しかし、実績上位の坂本より先着したのだから、上々の滑り出しだった。何より、中川聖大という名を平塚のファンに強烈に焼き付けたことは間違いないだろう。
二次予選はSS班の岩本俊介や南修二、上野雅彦といったそうそうたる顔ぶれの中、単騎で臨んだ。抑えた中井俊亮・南を追う形から、またもやホームから大逃げを敢行した。「悔しいけど勉強にもなりました。中井さんなんか、いつもより長い距離を踏んでいるし、そこが上位との差ですね。それでも見せ場は作ったと思います」
3日目は田中陽平・大野悟郎と九州ラインが初めてできた。2日間より早く、打鐘をめがけて仕掛けると、3番手の大野が離れるほどのスピードで出切った。落車があり5着にはなったが、3日間最終バックを取る積極性はファンを湧かせた。
そうなると最終日も中川の先行を期待してしまう。メンバーも緒方将樹、北津留翼が付くとなれば、なおさらだ。「勿論、思い切り行くつもりだったのですが、緒方が『着度外視の競走をする選手じゃないから』って。中団からの組み立てに」
だが4番手を確保したのも束の間、飯野佑太に内をしゃくられ万事休す。ホームからむりやり仕掛けたが9着で終えた。
「色々と勉強になった開催でした。9車だとスピードが全然違います。それでも7車より9車の方が楽しかったし、走りやすかった」
最終日だけが悔やまれる走りにはなったが、「負けるなら最終バックを取って負けたい。何もしないで終わるのだけは嫌です」と負けん気の強いところを見せた。来期はA級に陥落するが今開催の走りを見る限り、すぐS級に戻ってくるだろう。1番目立った選手と言っても過言ではない開催だった。