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直送!競輪場便りfrom 豊橋競輪場 山口富生(岐阜・68期)
インタビュー 2025.03.05

直送!競輪場便りfrom 豊橋競輪場 山口富生(岐阜・68期)

#競輪場便り

男は背中で語る

 脇本雄太の史上初「グランプリスラム」達成で幕を閉じた「全日本選抜競輪」。近畿勢同士の激しい真っ向勝負はファンの胸に深く刻まれたが、決勝を約4時間後に控えた最終日の2R一般で、もうひとつの大記録が生まれていた。

 今さら語るべくもないが、山口は1970年1月6日生まれの55歳。兄・幸二氏との兄弟レーサーとして鳴らし、2002年「高松宮記念杯」を制覇。2000年代の黄金時代の中核として、中部を支えてきた。初めて出場したGIは1997年の平塚「オールスター」。そこから30年近く一線で体を張り続け、同期や先輩が次々と自転車を降りる中、気が付けばS級1班最年長(S級で山口より年上なのも2班の川口満宏と小嶋敬二の2人だけ)になっていた。中でも昨年末のレジェンドの引退は衝撃だったようで「神山(雄一郎)さんは最後までやると思っていた。兄貴同様に慕っていたし、引退はさみしかった」と、しみじみ振り返るシーンも。

 昨年11月の小倉「競輪祭」最終日に5年ぶりのGI勝利を挙げた時も「最年長白星」と騒がれたが、今回の「全日本選抜」最終日は北津留翼を目標にできる番組が組まれた。前受けから別線を突っ張って駆けた北津留に乗り、ゴール前抜け出して1着。自らの記録を更新してみせたが、「競輪祭」の時はまだ54歳。年をひとつ重ねても、脚力の衰えはないことを証明してみせた。「初日からの3日間は、思ったよりみんなのレベルが高くて、何やっとるんか分からんかったけど、最終日は翼君が長い距離をもがいてくれた。お客さんの声援もすごかった。長くやってきて、今日のトミオコールはありがたかった」と感激した。

 山口自身も長い選手生活の中で、21年「日本選手権」から24年「高松宮記念杯」まで3年以上、GI舞台から遠ざかったこともあった。第一線に戻った今、ベテランらしく中部勢の現状を憂う。「黄金時代も経験しているが、今回の中部は参加6人。地元でも若手にハッパをかけているが、昔みたいにパワハラまがいのことをやっていたら、付いてこないでしょう。でも、もうちょっとしたら出てくると思う。3~5年のスパンで計画的にやっているけど、その時に自分がここにいるかは…ね(笑い)」と、新星の出現を心待ちにしている。

 年明けの和歌山記念でも決勝入りを果たし、古性優作の番手を回るサプライズもあった。狙っているのは内藤宣彦(秋田)の持つS級最年長V。「自分も気持ちが続く限りは頑張りたい。大きいことは言えないが、与えられたところで精いっぱいやるだけ」。走っている背中だけで何かを伝えられる選手が、どれだけ残っているだろうか。自分の限界にチャレンジしつづける山口。ビッグの舞台がまた待っている。

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