やるべきことがある、幸せ
ガールズグランプリへのラストチャンスとなるG1、第2回「競輪祭女子王座戦」が終了、頂点を決める舞台に立つ7人が決まった。奥井は大会前、賞金ランク8位。勝てばもちろん、決勝の成績上位でもグランプリ出場権を得られるポジションにいた。「2024年は5月くらいに優勝もできない時期があって…。それを思うと、この位置にいられるのはありがたい。トレーナーさんや、他の人たちのおかげですね」と、感謝の心を持って最終バトルに臨んだ。
2023年の第1回大会にも出場したが、賞金的にはグランプリが見えない位置だった。「昨年の競輪祭女子王座戦を終えて、正直もうグランプリを目指せる選手じゃないのかなと。のんびりやろうかなと思った」。女子3期生としてデビューした2014年から、トップを走り続けてきたが、毎年現れる若い力が、奥井の地位を脅かしてきた。それでも、昨年ようやく設けられたガールズG1は「皆勤」。第一人者としてのプライドは保ってきた。
2024年6月の岸和田「パールカップ」でG1初決勝に進出。最終ホーム6番手からかまし気味に反撃し、4コーナーを先頭で回ってきた。あと一歩、あとペダル1回転というところで、追走してきた石井貴子(千葉)にVをさらわれた。惜しい準Vにも「出切ってから余裕がなかった。ファンの声援が大きくて、それに応えられなかったのが残念」と悔しがった。ただ、これで賞金を大きく加算し、後半のグランプリ争いにつながった。この決勝も含めて、2024年は98走してバック76本。奥井らしさは健在だった。
風を切るスタイルにこだわる美学が、時としてチャンスを失うこともある。ラインのないガールズでは、先行は決して有効な戦法とはいえないかもしれない。だが奥井は小倉での決戦を前に「グランプリ争いを気にしないように。自分のレースをして、結果として出場できたら。まず迷いが出ないように。力があれば結果は残せるし、グランプリでも通用するはずだから」と言い切った。
「競輪祭女子王座戦」は5、4、3着に終わり、2年ぶりのグランプリ出場はならなかった。「この年でまだやれること、やりたいことが見つかっている。2025年はもうちょっとやれそう。その気持ちが大きい」と、戦い抜いた一年を振り返りつつ、2025年に目を向ける。その表情は、自分の可能性を信じてプロへの道を踏み出した時と同じく、ワクワク感に満ちていた。
そして2025年、自分のスタイル=逃げ切りでタイトルを取っても、奥井は求道者らしく、自分に向かって言うだろう。「まだ満足するな」と。