年上の活躍に感化され完全復活
「意外と一度も記念を獲っていない選手」という話題になると、必ず菊地圭尚の名前が挙がる。
ヤンググランプリ制覇やG1優出7回など輝かしい実績を誇る実力者だが、どうしても記念のタイトルとは縁がない。特に地元の函館記念では、何度か絶好のチャンスがあったが、あと一歩のところで涙をのんだ。
いつか獲れるだろう、と言われ続けるうちに無情にも月日が経ち、菊地の存在感は少しずつ低下していった。19年8月のオールスター後は、1年半ビッグレースからも遠ざかった。
「このまま終わっていくのかな…」
モガいてもモガいても結果の出ない日々に自信も失った。
菊地が成績と気持ちを落としている間、佐藤慎太郎や小倉竜二といった自身よりも年上の選手たちが第一線で輝きを放っていた。佐藤も小倉も、苦しい時期を乗り越えて復権を果たした超一流のマーカーだ。そんな姿を見せられて、菊地の闘争心はふつふつと湧き上がっていった。
「慎太郎さんやオグさん、ザキさん(山崎芳仁)なんかもそうだけど、実績のある〝オジサン〟たちがあんなに頑張ってるのに、俺は何をやってるんだって。(年上選手の)活躍と存在はめちゃくちゃデカかったですね」
スイッチの入った菊地は再び存在感を高めていき、今年に入ってからは1月の立川、3月の大垣と、記念決勝の舞台にカムバック。5月いわき平ダービーは一次予選で豪脚を繰り出し1着発進。2走目以降は「展開的にも厳しかったし仕方ない」と着には絡めなかったが、「まさかここまで復活できるとは思っていませんでした」と、GⅠで勝ち負けができるまで戻ってきた。
〝獲るつもりで〟臨んだ地元の函館記念は準決勝で無念の敗退。「一番大事なところ(準決)でミスをしまくった」と悔いたが「今後同じ失敗をしないように。(今年の)後半戦はもっと気を引き締めていきます」と鋭い眼光で決意を語った。
脚力も気力も戻った菊地に不安はない。あとはいろいろかみ合ってくれば、自ずと結果もついてくるはずだ。
早ければ今年中に〝菊地圭尚ついに記念V〟という見出しが躍る日が来るかもしれない。