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直送!競輪場便りfrom熊本競輪場 再開した熊本競輪場。
インタビュー 2024.07.31

直送!競輪場便りfrom熊本競輪場 再開した熊本競輪場。

#競輪場便り

地元戦士たちが過ごした濃厚な3日間

熊本競輪場の「令和6年能登半島地震復興支援競輪 熊本競輪再建記念」(FⅠ)が7月20~22日の日程で開催された。8年4ヵ月ぶりの本場開催とあってスタンドは連日、活気に沸いた。地元・熊本勢は上野優太、兼本将太の2人が失格を喫したものの、最終日に補充参戦した野口大誠を含め11人が新生・400バンクを疾走し歓声を浴びた。ここでは最終日を終えた地元戦士の声をお届けしたい。

 「本場を走ってこそ、本当の復興」と訴え続け、熊本競輪のシンボルとして再開へ向けて奔走していた中川誠一郎は大一番に挑んだが、レースでは見せ場をつくれず一度も確定板に乗ることなく終わった。「脚が全体的に落ちていました。準決で(嘉永)泰斗に口が空いたし、最終日も先まくりで押し切るはずだったけどタレた」と険しい表情だったが、「まだレース後に悔しさやピリつく感じがあったのはよかった。そういう気持ちが無くなったらもう引退ですけど、まだ抗えるのかなって思った」と気力はまだまだ萎えておらず、燃え尽き症候群と化すことは無さそうだ。

 A級は半田誠を目標とした松本秀之慎、S級は緒方将樹に任せた嘉永泰斗が制し、地元勢のW優勝となった。熊本再建にふさわしい結果に松本は「連日、緊張感が半端なかったけど声援が力になったし気持ち一本で走れた。泰斗さんと(W優勝でき)決められたのでよかった」と喜び、嘉永も「吐きそうなぐらい緊張したけど、いい雰囲気のなか走れました。これが、地元なのかって。決勝は将樹に感謝です。地元Vだけではなく今度は記念優勝を目指します」と喝采に酔いしれた。

 両者のVに貢献したメンバーの声も。半田は「友人たちがたくさん応援に来てくれたんです!」と声を弾ませたように、声援を力に変える激走で3日間、魅せ場たっぷりだった。決勝後には目に涙を浮かべ、松本と激闘をたたえ合っていた姿が印象的だった。そんな彼らを3番手で見守った中村雅仁は「地元のありがたさを改めて感じました。失格した2人は残念だったけど、いい所を見せたいって気持ちの表れだったと思うし、他の後輩たちにとっても大きなプラスになった開催だったと思う」と残念ながら退場した2人をおもんばかりつつ、意義のある開催だった強調した。

嘉永優勝の立役者、緒方将樹は初日11Rで中本匠栄を振り切り、待望の地元勢初勝利を挙げるなど晴れ舞台で大暴れした。「出し切りました!3日間ともに周回ごとに応援がすごかったし、聞いたら泣きそうになりましたよ。泰斗さんが優勝したし自分ももっといいレースをして次は勝ちたいです」と晴れやかな表情だった。名前の挙がった中本は目標だった決勝進出を逃し「せっかく第一弾に呼んでもらったのに期待に応えられなかったし情けない…」と唇を噛みしめたが「声援がすごかったしまた走りたい。もし次に呼ばれた際はそこへ向けて仕上げていきます」とリベンジを誓った。

 野口大誠は初日に場内の選手会ブースでファンサービスに務めていたが、最終日に欠員が出たため急きょ補充で参加した。「補充は普段、走らないのですが、今回は特別ですね。次に正あっせんで呼ばれた際は、もっとしっかり走りたい」と気持ちを込めた。

 

最後は地元最年長の倉岡慎太郎のコメントを。選手生活38年目に突入した熊本競輪を知り尽くす生き字引は、これまで引き継いできた伝統を後輩たちにつないでいく使命がある。「地元を走ったことのない後輩たちが『吐きそう』とか『緊張した』って言っていたけど〝これが地元なんだぞ〟と感じてもらえて良かった。この先、厳しいヤジやゲキもあるでしょう。でも地元では期待を込めた叱咤激励のようなもので、ヨソで浴びるものとは違うんですよ。地元ファンあっての熊本競輪だと改めて思いましたよ。8年の間には、地元を走りたくても走れず引退した仲間も多く見てきたし、いつの間にか自分が地元最年長になってしまってね、そういう人たちの分もまだまだ頑張っていかないと。またよろしくお願いします」

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