弟のデビューが刺激に
3日間、バックは取れなかった。それでも中嶋が戦う気持ちを前面に押し出したシリーズだった。
予選は優勝候補の1人、佐藤譲士郎との対戦だった。2分戦で佐藤も前受から突っ張る気マンマンだったが、中嶋の気持ちがそれを上回った。「気持ちが弱くならない限りは押さえるのは得意。最近は押さえてから、足がないことにびびってしまうことが多かった。それに師匠(酒井拳蔵)にはブーメランを禁止されているので」。
前に出る気で踏んで突っ張られるのは仕方ないが、中途半端に上昇して後方に戻るのはダメ。中嶋のメンタル面の弱さを考慮した酒井のアイディアと思われる。突っ張れなかった佐藤は「赤板が全てだった…」とライン決着といかなかったポイントを悔しそうに振り返っていた。
中学時代に腰椎分離症になったことが影響してか、今でも急な腰痛に襲われることがある。そのたびに練習量が落ちて、レースでも自信がなくなる。これまでは、その繰り返しだった。「今年1月の症状が人生で一番ひどかった。点数も67点ぐらいまで落ちて、本当にまずいなと思いました。今は練習ができるようになったし、メンタルも回復した。カマシ、まくりの方が得意な気がするけど、強い相手には逃げた方がいい。それは競輪のセオリーなんで。せっかく練習をしているなら、主導権を取って負けた方がいい」。
強気な姿勢を取り戻せたのは5月に125回生としてデビューした弟、響の存在も大きい。「正直、かなり刺激になっています。まさか弟が選手になるとは思わなかったし、弟がデビューしても、僕がまだチャレンジにいるのは屈辱でしかない。脚質は正反対だけど一緒に練習していて強くなっているなと思う。負けられないですね」。
適性組としてデビューしてから3年。まだA級2班に昇格したこともなければ、優勝経験もない。「決勝2着は結構あるけど、あと1歩届かないのは自信のなさ。1回できれば自信になると思う」。初優勝で次のステップに進みたい。