大記録への挑戦!
正念場を笑い飛ばせる。それがベテランの強み。超ポジティブでコミュニケーション力の天才は、現状を「まだまだ気持ちは切れてないよ」と多弁に話してくれた。
現役のS級最年長選手として走った23年後期(23年7月~12月)の競走得点は97・32で終えた。しかし、何と同郷の松田治之の97・33にわずか0・01差及ばない次点で24年後期のS級を決め切れなかった。24年後期がS級なら57歳でのS級在籍は、引退した萩原操さんの58歳に続く歴代2位の記録だっただけに悔しさがつのる。23年後期のS級での戦いは、らしさ満点のしぶとい走りを見せた。23年7月30日の名古屋記念の最終日はその真骨頂だった。先手ラインの3番手から中を割って、坂井洋の後方からの強烈なまくりを抑えての1着は、3連単64万円台の大波乱を演出した。坂井との上がりタイムのあまりの違いに驚くが、これも競輪。「俺も信じられないよ」と話したが、付いた目標にめったに離れない男の見せ場だった。
優勝は、23年1月の豊橋までさかのぼる。その時のA級優勝は55歳だった。「操(萩原)さんの56歳のA級優勝の記録を破るチャンスはありますね」と意気盛んだった。24年前後期のA級での戦いは、そのA級優勝記録を狙う戦いでもある。
「体力的にも年々厳しくなってるのは分かってますよ。特にほとんどのレースが7車立てになったのは辛くなりました。展開が単調で、自分の持ち味が出せない。僕がS級で大穴を出してる時は9車立ての記念レースが多かったんですよ」と嘆く。しかしそれだけでは終わらない。「だから7車立ての戦い用の組み立てや、調整方法を見直してるんですよ」と前を向く。調整方法も現在、S級で踏ん張る神山雄一郎や紫原政文ら世代の近い選手と情報交換をしている。
20代、30代と選手生命が脅かされるような大けがも経験した。「自分がこの年まで一線で走ってるなんて想像してなかった。共に戦ってきた兄貴(孝之)の存在が大きかったかなあ。互いに『あいつが頑張ってるから、俺もやれる』と思って今まで来られたから」。57歳でのA級優勝、58歳でのS級在籍。〝浪速のエイちゃん〟の挑戦に心からエールを送りたい