きっかけをつかみこれからだ
2018年7月に113期生としてデビューし、2021年1月にS級に初昇級した。地道に脚を付けていたが、百戦錬磨の猛者たちとの力の違いを痛感し、昨年7月にA級に逆戻りした。「組み立てとかすべてにおいて空回りしていました。レースが見えていなかったし、ゴマかし、ゴマかしになっていた」
A級に降りた直後は11月に奈良で優勝するなど善戦していたが、急激にリズムを崩し今は80点台前半まで点数を下げてしまった。ここまで大きな落車やケガがあったわけでもなく「開催に行くと色んな人に『どうしたの?』って聞かれるんですが、原因は自分でもわからなくて…」と、かみ合わぬ現状に首を傾げるばかりだった。
藁をもつかむ思いで整体や治療院などをあちこち回り原因を探っていたところ、今年の11月にあるヒントをつかんだ。「ある治療院で体を診てもらったら、神経痛っぽい感じをずっと引きずっていると言われたんです。痛みとかも感じなかったし自分じゃまったく気付かなかった。目に見えない細胞レベルなのでしょうね」
治療の効果はてきめんだった。現在、樋口は同期の眞杉匠を頼り宇都宮へ出稽古に行っており「街道でここ数ヵ月、眞杉にブッ離れっぱなしだったのが、なぜか付いて行けたんです。眞杉にも『別人みたい。どうしたの?』って言われたほどで(笑)」と、変化に驚きつつも久しぶりの手応えに自信を取り戻し、胸は躍った。直後に走った奈良ミッドナイト競輪(11月16~18日)の準決では、競走得点90点を超え本線に推された地元の吉堂将規をまくりで破る好プレーが飛び出し、5月小松島以来となる決勝進出を果たした。
同期の結束力は固く、眞杉のところには樋口のほかにも蕗澤鴻太郎(群馬)、小林泰正(群馬)、黒沢征治(埼玉)、森田優弥(埼玉)らが訪れ、そこへ橋本瑠偉ら栃木勢も加わり若手同士で切磋琢磨が激しいと言う。樋口も「眞杉は2個下だけど、同期同部屋だったから何でも言ってくる。でもありがたいですよ。何よりも刺激になるし、いい練習環境。他の皆さんにも感謝です」と居心地が良さそうで、更に練習に身が入る。原因不明のモヤモヤも解決し、底からの脱出はすぐそこだ。
「やっと雲が晴れた感じがします。長いことラインの人たちにも迷惑をかけてきたし、感謝しかないです。ここからまたスタートのつもりで頑張ります!」。今期、S級点数をゲットするのは時期的にさすがに難しい話。まずは地道にA級1班の点数を確保し、来年以降に再び盛り返してみせる。