目覚め
石塚に勢いが戻ってきた。玉野FⅠ初日予選は最終ホームから仕掛け2着。2日目準決は打鐘先行で2着。1着こそないが、先行選手らしい内容で決勝に駒を進めた。
決勝は、伊藤颯馬が相手。後ろは信頼できる稲垣裕之。赤板でいったんは抑えに動いたが、伊藤に牽制され6番手。しかし、打鐘からすかさず巻き返すと一気に先制。伊藤は車間が空いた3番手。スピードの乗りも上々で、稲垣とのワンツーが見えた。最終4コーナーを先頭で通過したが、末の粘りを欠き7着でシリーズを終えた。
「調子は良かったです。最後は大きな着を取ってしまいましたが、手応えは掴んでいます」と答えた。
石塚と言えばデビュー当時から徹底先行が売り。ビッグレースでも活躍し、近畿の未来を背負う逸材と呼ばれた。しかしここ数年は勢いが感じられなかった。
その原因を聞くと「点数も105点から110点くらいで、この位置を守ろうとしていたんだと思います。守る気持ちが強すぎて攻めることをしていなかったんです」。
転機は6月のGⅠ高松宮記念杯だった。
「近畿の先輩から色々アドバイスを頂いて目が覚めました。守る気落ちが強すぎたから出し惜しみをしていたんですね」。
以前なら躊躇して前の動きを見てしまい「まだ行かなくていいか」の気持ちもあったが、ここぞと決めて行くことができるようになった。ニュアンスは違うかもしれないが、無欲で先行する、デビュー当時を思い出して走れるようになってきた。
その結果がこの玉野開催で出た。優勝こそできなかったが、自分でも納得できる競走ができたのだ。
普段の練習は以前とあまり変わりないが、昨年秋からウエートトレーニングの重要性を再認識したと言う。
「脇本さんと合宿する機会があったんですが、そこでウエートトレーニングがいかに大事かということを教えられました。今は計画的にジムで鍛えています」。
最初の頃は脇本にメニューを作ってもらい、その後は自ら試行錯誤しながら続けてきた結果、12月の広島記念では決勝5着という成績も残すことができ、肉体的には成長できた。
精神面も高松宮記念杯がきっかけになり、今は精神的にも肉体的にも充実している。
次のGⅠはオールスターだ。
「GⅠに出るだけでなく勝たなくてはダメですね。勝ちたいからそのレベルまでもっと努力をしないと」と力強い言葉が返ってきた。
同期にはタイトルホルダーの清水裕友がいる。「GⅠでも活躍しているし刺激になります。雄太(渡邉)もGⅠの準決には顔を出す力がありますから、自分も負けてはいられません」。
脇本の次の近畿を背負う先行型として、石塚が再び名乗りを挙げた。